■連載/高橋晋平のビジネスのヒントは「ボツネタ」にあり!

この連載では、自分が過去に考えてボツになった企画、すなわち「ボツネタ」を振り返ることで見えてくるビジネスアイデアのつくり方をご紹介します。

企画に携わる方は、仕事の現場で、ブレインストーミング、いわゆる「ブレスト」をすることがあると思います。例えばチームリーダーが、「いいアイデアを考えるためにブレストしよう!」と言ってメンバーを集め、自由に話し合う。しかし、このブレスト、意外と難しく、失敗に終わることも多いものです。2時間しゃべったけど、結局何だったんだろう? とモヤモヤし、ブレストって意味ないんじゃない? と感じたことのある人も多いはずです。

僕も過去には何度も失敗してきましたが、現在は効果的なブレストをさせるプロとして日々アイデア会議をコーディネートしています。今回は、過去に自分がブレストで発言し失敗したボツネタを振り返りながら、正しいブレストの仕方をお教えします。

<今回のボツネタ>

アイデア出しのプロが教える、失敗しない「ブレスト」のやり方と裏ワザ

【商品名】マイホーム貯金箱

【当時考えた商品概要】

マイホームを買うためにコツコツ貯金する「マイホーム貯金」という言葉があります。その言葉通り、マイホームを買える額が貯められる、家と同様の大きさの貯金箱があったらどうでしょう? 屋根にのぼってコツコツお金を貯めていく。この中身が一杯になったとき、念願のマイホームを手に入れられる額が貯まります。マイホーム貯金箱を、建てましょう!

【ボツになったポイント】

家を建てろ

これは、停滞した議論を突破できるかなと思って言ってみたネタです。家の大きさの貯金箱にお金を一杯貯めたら、家が買えるのでは? という。貯金箱商品のアイデアは、ジャンルとしてはいろいろな商品が出尽くしているので、ブレストしても、「それ、昔あったよ」「誰かが提案してたけど、ボツになってたよ」というような誰かの一言で、一瞬にしてアイデアを殺されることになります。昔から僕はそんな時、ぶっ飛んだアイデアを言えば、流れが変わるかな、と思っていたのですが、この時は、他のメンバーの発言をさらに停滞させてしまいました。ブレストで自由な発言をする中にも、ブレストを活性化させるテクニックがあります。まずはそのテクニックをご説明していきます。

■ブレストの嵐を巻き起こすために心がけること

一般的に言われているブレストの3原則は、

1.「質より量」……アイデアの質を問わず、とにかく量を出す。
2.「否定禁止」……人のアイデアを否定しない。
3.「人に乗っかる」……人のアイデアに「いいね!」と乗り、さらにアイデアをかぶせていく。

というようなものですが、このようなブレストを実施できても、「結局、現実に使えそうな案が残らなかったね。意味なかったかも……。」という思いが残って終わることもあるでしょう。かといって、現実的に検討できることばかり言おうとすると、面白いアイデアが出てこなくなったり、議論が停滞して全員が黙ってしまう状況に陥ったりします。

上に挙げた3原則はその通りで、突破口を開くアイデアを出すために、くだらないことでも思いついたら自由に発言するのが良いのですが、発言するときに意識してほしいことがあります。それは、全員からアイデアの嵐を起こすために、まずは周囲へのパスの嵐を作る、ということです。

ブレインストーミングとは、Storm、つまり嵐を起こすことです。チーム全員の嵐が起きない時は、最初の竜巻を自分が起こせば良いわけです。

先ほどの『マイホーム貯金箱』のネタを過去に発言したときは、その一案だけを言いっぱなしにしたことで、他のメンバー全員が「???」となり、後に続けなくなり、流れを断ち切ってしまいました。今の僕なら、ブレストの時、例えば以下のようなアイデアのしゃべり方をします。

「本当にマイホームを買える額を貯められる家の大きさの貯金箱とか(笑)。でも、家自体を貯金箱にすると言ったら、例えば床にお金を入れる穴があって、床下を開けると埋蔵金になってるとか。どうですかねー。(ちょっと間を作る)」

「でも住宅販売と一緒に売れる貯金箱っていいかもですね。だったらデザインがインテリアに溶け込む金庫ってどうですか?厳かな金庫は置きたくないけど、オシャレな金庫だったら売れるかも。どうでしょ。(ちょっと間を作る)」

「じゃあ、例えば家中の何か所にも設置できる、紙製の貯金箱20個セットなんてどうですかね。薄型で壁にウォールステッカーみたいに貼れて、いつでも思い出した時に貯金できるとか。どうかなー。(ちょっと間を作る)」

「話は変わりますが、いっそ、銀行を貯金箱感覚で使うっているアイデアはないですかね。貯金箱にお金が貯まったら、銀行にそのまま持っていけば、お金をATMに入れやすい形になってるとか。方法ないですかねー。(ちょっと間を作る)」

……というように、自分でアイデアをどんどん展開していくのです。途中で、誰かが何かを思いついた時に口を挟める「間」を作りながら発言します。誰かの発想の触媒にするために、たくさんのパスを出すのです。そのうち、いろいろなアイデアを聞いたメンバーが、しゃべりたくなって、次々に口火を切れば成功です。ブレストの「自由な発言」をするときは、議論の渦を作れるように自由なパスを連発するという意識で発言できるように、練習してみましょう。

あとは、最も重要な、嵐の後に散らかったアイデアのまとめ方です。

アイデア出しのプロが教える、失敗しない「ブレスト」のやり方と裏ワザ

■知られざるブレストの裏ワザ。1人に「静観させる」

ブレストの後で、「いろいろなアイデアがあったけど、結局どうしよう?」という、嵐の後の静けさのような状況になることは多いと思います。要するに、大量のアイデアが集まった後の、正しい「まとめ方」が重要なのですが、これを上手く行うために、メンバーの中に1人、ブレストを静観する人を入れる、というテクニックがあります。これはぜひ実施してみていただきたいオススメの方法です。

この「静観する人」は、いわばディレクターです。基本的には、他のメンバーが巻き起こすアイデアの嵐をメモしつつ、どのアイデアをピックアップして掘り下げていくべきかを議論中に1人、冷静に考え続けます。そして、最終的にこの役割の人が、出てきた意見の中から何をそぎ落とし、何を選び取るのかを決めます。このような役割の人を1人入れ、まとめを任せてしまうことで、他のメンバーは先の心配をすることなく、無責任に頭に浮かんだことを発言することができます。ブレストの嵐の威力を最大化して面白いことを出すためには、最初から片付け屋を同席させることが最も効果的なのです。ぜひ皆様の会議でも、このようなブレストを試してみてください。

アイデア出しのプロが教える、失敗しない「ブレスト」のやり方と裏ワザ

■今回のまとめ

・ブレストの自由な発言とは、「嵐」が起きる場づくりをするために、他のメンバーに連想のパスをたくさん出すことである。
・メンバーの中に、静観してアイデアのまとめ方を考えるディレクターを1人入れることで、その他全員が無責任に嵐を巻き起こせる状態を作る。

文・イラスト/高橋晋平

たかはし・しんぺい。株式会社ウサギ代表取締役。おもちゃ開発者。大手玩具メーカーに10年間勤務し、「∞プチプチ」など、数多くのヒットアイデア玩具の企画開発に携わる。現在は様々なチームとアイデア商品を共創する「アイデア・コークリエイター」として、新商品・ビジネス開発を行なっている。http://ameblo.jp/simpeiidea/

■連載/高橋晋平のビジネスのヒントは「ボツネタ」にあり!