アリババが世界に広がる可能性はあるか?

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 ネット通販によって、私たちの生活は大きく変わった。そのeコマース市場で急成長し、大きな存在感と影響力を示している企業の一つが中国の「アリババグループ」だ。経営コンサルタントの大前研一氏が、eコマースの可能性とアリババの未来について考察する。

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 中国のeコマース市場の急拡大が世界を激変させようとしている。その中核となっているのは、中国のネット通販最大手「アリババグループ(阿里巴巴集団)」だ。

 同社は6月、中国の家電量販最大手「蘇寧雲商集団(旧・蘇寧電器)」との協業の具体策を発表した。「王者連盟」とも報じられたが、アリババが蘇寧を救済したという見方もある。

 蘇寧は中国国内で2700の店舗を展開し、実店舗の小売企業としては売上高トップで、サッカー日本代表DFの長友佑都選手が所属するイタリア・セリエA「インテル・ミラノ」の買収でも話題になった中国を代表する巨大企業だ。しかし、近年はアリババをはじめとするネット通販の台頭で営業赤字に陥っている。

 中国では今、日本やアメリカと同じように、実店舗を全国展開している量販店が伸び悩み、スマホ一つで何でも買えるeコマースが急成長している。その代表格が、中国国内のネット通販で6割のシェアを占め、物流と決済機能(アリペイ)を押さえているアリババだ。

 なにしろ、昨年11月11日の「光棍節」(独身の日)セールの総取引額が1日で約1兆7600億円に達したのである。日本の小売業1位のイオンの年商が約8兆2000億円(2016年2月期)、2位のセブン&アイ・ホールディングスの年商が約6兆円(同)だから、アリババの売り上げがケタ違いであることがわかる。

 アリババは蘇寧との提携によって「OtoO(O2O)」(Online to Offline)、少し古い言葉だと「クリック&モルタル」──すなわちネットとモルタル(実店舗)を組み合わせて相乗効果を生み出すことで、さらなる成長を目指しているのだろう。

 だが、そのアリババが国境を越えて世界に広がるかといえば、答えは「NO」だ。資金力の点ではどんな会社でも買えるだろうが、eコマースの場合、実は国境を越えて成功した企業は少ない。その国の言語に非常に依存するし、国ごとに消費者の嗜好や購買行動が大きく異なるからだ。

 たとえば、日本の楽天も海外では大苦戦し、次々と撤退している。私は楽天が約920億円で買った無料通話アプリのバイバー(Viber)という会社をベラルーシで見学した際に「楽天の役割は何ですか?」と質問したら、楽天は買収しただけで経営らしいことはできていないらしく、「何も指示されていないので、わかりません」という答えが返ってきた。

 ことほどさようにネット企業が国境を越えるのは難しいのである。アメリカ企業でありながら日本で成功しているアマゾンなどは極めて例外的なのだ。したがってアリババ+蘇寧の「王者連盟」も、基本的には中国国内に限定されると思う。

※週刊ポスト2016年8月5日号