市立船橋の最終ラインを統率する原。J来春のプロ入りが予想される有望株だ。写真:安藤隆人

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 いよいよ夏の高校王者を決めるインターハイ(高校総体)が7月27日に開幕。今大会の優勝候補の一角、千葉第2代表・市立船橋の最終ラインを牽引するのが原輝綺だ。Jスカウト陣も注目する彼に、プロ入りやともに守備陣を支える仲間との関係、さらには前回決勝について語ってもらった。
 
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――大会を前にJスカウトから注目される存在になっています。市立船橋に入って、自分がJクラブからオファーが来るような選手になると思いましたか?
 
 正直思わなかったですね。プロになりたい気持ちはありましたが、市立船橋に入ってレベルの高さに驚いて、僕はどっちかというと目立たない存在なので、厳しいかなと思っていました。高2で試合に出ていても、僕は別に何かをするわけではなくて、どちらかというと『陰で支える』タイプなので。
 
――原選手は本当にいい意味で『地味』ですよね。でもそうした部分が最大の魅力であり、玄人好みすると思います。
 
 結構そういう風に言われます(笑)。なので、僕は大学進学を考えていたのですが、伊藤竜一コーチといろいろ話をした時に、「プロを目指そう」と思って今年に臨みました。そこでしっかりとプロを意識できたことで、お話を頂けたのだと思います。
 
――現在はCBをやっていますが、原選手のこれまでのポジション変遷はどういうものですか?
 
 小学校でサッカーを始めた時はFWで、すぐに右サイドバックになって、中学校ではボランチをやりながらトップ下、左サイドをやっていました。市立船橋では、最初はB2チームからのスタートだったのですが、佐藤陽彦コーチがずっと僕を気に掛けてくれて、FW、ボランチ、3バックの真ん中とポジションを落として行ってくれました。それでディフェンスで育てようとしてくれました。
 
――高2の時は椎橋慧也選手(現仙台)とボランチを組んで、インターハイ準優勝に貢献しました。
 
 3-4-3の右CBでやりながら、4バックになったらボランチになっていたので、「僕はどっちで行くんだろう?」とは思っていました。去年はプレミアリーグが始まってからはずっとボランチをやらせてもらっていたので、インターハイはいいイメージでプレーできました。
 
――昨年度の選手権では右サイドバックをやっていましたね。
 
 最初は驚きましたけど、来年のことを考えると、右サイドバックには真瀬がいるので、「じゃあ来年、僕はCBをやるんだな」と思っていました。今は守備の時だけ4バックで、ボールを持ったら3バックなので、あまり風景は変わりませんね。
 
――杉岡大暉選手とのコンビはどうですか?
 
 最初は合わない部分もあったのですが、ふたりで話をして修正しました。お互い受けるタイミングを見合ってしまったり、簡単に相手が前を向いたりしていたので、「ここは俺が行くから、カバーしてくれ」とか、「お前が行けばカバーするから」とか、いろいろ話し合えたことは大きいです。杉岡が出るか出ないかで迷っている時があるので、自分が指示することも多いんです。
 
――杉岡選手のインタビューをした時に、原選手には「いろんなことを聞く」と言っていましたが、原選手が杉岡選手に聞くことはどんなことですか?
 
 杉岡は前に強い選手なので、どういうタイミングで前に行けばボールを奪えるのか、といったことなどを聞きますね。
 
――お互いそういうことを聞き合えるのは素晴らしいことですね。
 
 そうですね、ライバルですが、自分のためになることが多いんです。
 
――プロになるために、あるいはプロとなって活躍するために今必要なことは何だと考えていますか?
 
 まずはがむしゃらに、必死にやること。単純なミスをなくすとか、1対1では絶対に負けないとか、そういう基礎的な部分を見直しています。僕の武器は目立たないけど、しっかりと状況が見えていること。それから、縦パスも入れられるようになりました。カバーリングは僕のひとつの強みだとも思っているので、そこはもっと高めて行きたいです。
 
――昔から冷静なタイプだった?
 
 あんまり熱くはならないですね。
 
――もうすぐインターハイが開幕します。昨年は準優勝に貢献はしましたが、決勝で負けてしまいました。改めて昨年の決勝を振り返って下さい。
 
 あの時はこっちがボールを持つ時間が多かったのですが、あの中盤のふたり(中村健人/明治大と藤川虎太朗)が強烈だったので、マイボールの時もあのふたりを必ず視野に入れながら、奪われたらすぐにふたりに行けるようにしようと、椎橋さんと話していました。特に自分は降りる方なので、僕が縦パスを入れたり、杉岡から縦パスが入った時に、ボランチラインを越えた瞬間に、自分がふたりを捕まえに行かないといけないので、それはすごく意識をしました。
 
――CBとボランチのこまめなアップダウンが、『堅守』市船の重要なポイントになっていくと思われます。
 
 昨年の東福岡との決勝戦のおかげで、「ディフェンスはこうしてやるべきなんだ」と掴むことができました。「こうなったらラインを上げないといけない」とか、「自分のポジションだとここは絶対に抑えないといけない」とか、決勝はすごく勉強になりました。あの試合は相当頭を使いましたから。
 
――昨年の決勝は、1-1で延長戦でも決着がつかず、PK戦に突入。嫌な思い出かもしれませんが、6人目の原選手が最後に外して、試合は幕を閉じました。
 
 正直に言うと、ボールを置いて助走に入った時は外す気がしなかったんです。決められると思っていました。でも、蹴った瞬間に「やばい」と思いました。練習の時と若干感覚が違って、案の定、枠の外に行ってしまいました。PKを外してしまったことはもちろんすごく悔しかったのですが、一番悔しかったのは、PKになる前に試合を決められなかったことですね。
 
――今回のインターハイに向けてはどうですか?
 
 あまり先を見ずに、一戦一戦きちんと戦う。これがベースです。そのなかで、去年は準優勝で、ましてや自分がPKを外して負けたので、今大会で優勝することが先輩への恩返しになると思っています。
 
――去年のインターハイをきっかけに原選手は飛躍的に伸びたと思います。
 
 インターハイは試合を重ねるごとに、自信やベースとなるものが見えてきますし、チームとしても同じことが言えます。本当に得るものが大きくて、自分たちの全国的な立ち位置も分かります。成長できる大会なので、しっかりと勝ち上がって、自分も周りに評価されるプレーをして、インターハイが終わって去年のようにより一層成長して、いい形でプロの世界に入っていきたいですね。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)