4年前、パラリンピックの団体競技として日本初の金メダルを獲得した競技がある。視覚障害(弱視、全盲)の選手がアイシェードで目隠しをし、鈴の入ったボールの音や相手選手の足音、気配を頼りにプレーする「ゴールボール」だ。前後半各12 分、合計24分の試合は3人対3人で行なわれ、互いにボールを高さ1.3m×幅9mのゴール目がけて投げ合って得点を競う。

 日本は、センターの浦田理恵を中心として守備が強い。ロンドンパラリンピックでも堅守を武器に決勝まで勝ち上がると、決勝では優勝候補の筆頭・中国を完封し、1−0で勝利。歴史的な金メダルを獲得し、選手や関係者は歓喜に沸いた。

 その後、キャプテンだった小宮正江が引退。エースの安達阿記子らロンドンを経験した4選手が残り、新たなチームをスタートさせた。リオ大会では、浦田がキャプテンとなり、2大会連続の金メダルを狙っている。

「日本の武器はやはりディフェンス。3人でひとつの壁を作り、まずはパーフェクトに抑える。3人がお互いの距離感のズレをなくし、壁がちぎれないよう精度を高めてリオに向かいたい。しっかりと準備をすれば、結果は必ずついてくると思います」と浦田は話している。

 リオを目前に控えたゴールボール女子日本代表チームは、7月22日から24日まで、東京・足立区総合スポーツセンターで行なわれた国際強化試合「2016ジャパンパラゴールボール競技大会」に出場した。リオの初戦で対戦するイスラエルも来日。データ収集を最優先事項として挑んだ日本A(今大会は若手を中心とする日本Bも出場)は、決勝こそ2−3で敗れたものの、総当たり2回の予選ラウンドでは5−0、2−1で2連勝。

「今の時期に、パワーのあるバウンドボールを受けられてよかった」と選手たちは声をそろえた。

 引退していた小宮も今大会から国際大会にカムバック。安達、浦田、小宮のロンドンパラ決勝メンバー3人が先発に顔をそろえると、余裕の表情を見せる女王たちの風格が会場内に漂う。

 ベテラン選手たちのたくましさを感じさせた日本チーム。だが、金メダルチームのここまでの道は決して平坦なものではなかった。

 ロンドン後、ゴールボールの国際大会で使用される球が、従来のものからバウンドしやすいヨーロッパ製のボールに変わり、さらに世界各国の競技力も向上。パワーのある海外勢は、コート上に強く叩きつけて弾ませる、バウンドボールを多用してくるようになった。ゴールボールのディフェンスは、体を寝かせた状態で全身を使ってボールを止めるが、日本人のコンパクトな体型で跳ねるボールを止めるのは至難の技。守備の要で情報分析を得意とする浦田も「50cmの高さなのか、70cmまで来るのかを音で見極め、足の高さを決めているけれど、まだ100パーセントの完成度ではない」とその苦労を口にする。

 2014年の仁川アジアパラ競技大会(韓国)で銅メダルに終わった日本は、リオの出場権がかかった2015年5月のIBSA世界選手権(韓国)で中国に敗れ、準々決勝敗退。上位2か国に与えられるリオ切符を獲得することができず、リオの出場権決定は11月のアジアパシフィック選手権(中国)まで持ち越されることになった。ところが、昨年7月のジャパンパラ競技大会では、浦田がケガ、安達が体調不良で出場できず。4カ国中4位に沈んでしまう。パラリンピック連覇どころか、もはやリオに出場することさえ困難かと思われた。

 だが、ロンドンパラリンピックで控えメンバーだった若杉遥の成長、そして主力2人の復活もあり、日本はアジアパシフィック選手権で見事に優勝。決勝ではライバル中国相手に1−0の完封勝ちという勝負強さを見せ、ラスト1枚のリオ切符をもぎ取ったのだ。

 その最終予選で、値千金の1点を決めた安達は言う。

「出場権を獲ることが難しかったけれど、それをしっかり獲って、リオというステージに上がることができた。だからこそ、リオでは結果にこだわった戦いをしたい」

 ロンドンの金メダルゲームで決勝点を挙げたのも彼女だった。粘り強い守備で守り抜き、少ないチャンスをものにする。これが日本の必勝パターンなのだ。

 そんな日本にとって、サッカーのペナルティキックと同様に、反則を犯した相手と1対1で勝負できるペナルティスローはとくに得点のチャンスだ。普段から狙い通りのコースに強い球を投げる意識で練習している安達は、合宿で行なう試合でペナルティスローの機会には必ず自分が投げるといい、今回のジャパンパラでも、その決定率の高さを証明してみせた。

「得点のイメージさえ作れれば、自信を持って投げられる。(相手に投げるコースを研究されていて)ゴールボールは点を取るのが難しいスポーツだとつくづく感じるけれど、勝負時にしっかり決められるよう、残りの期間は自分の投球をそのイメージにいかに近づけられるかトライしていきたいです」

 最後の公式戦を終え、市川喬一ヘッドコーチは、「ゼロで抑えることを全体合宿でやってきたので、失点は腹立たしさがある。けれど、これは本番ではない。大会を通し、データを多く取ることができたので、しっかり対策してリオに臨みたい」と力を込めた。

 ロンドンの金メダルはすでに過去のもの。この4年間、いばらの道を歩んできた彼女たちだからこそ、新たなメダルへの思いは強い。ゴールボール女子日本代表は、リオの舞台で再び、強く、美しい輝きを見せてくれるはずだ。

瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka