教育現場の深刻な問題のひとつに学級崩壊がありますが、中学校よりも小学校で起こる事例が多いといいます。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』ではスクールソーシャルワーカーの村崎京子さんが、なぜ学級崩壊は起こるのかについて解説、そしてその防止策について専門家の立場からの提言を記しています。

学級崩壊が起きるわけ

今回は、スクールソーシャルワーカーの視点から述べてみたいと思います。

まず、中学校では学級崩壊は起きにくいものです。なぜなら教科によって教員が変わるからです。もし学級担任が気付くのが遅れても、学級が荒れ始めれば、教科担任の誰かが気づきますので、迅速に組織的な介入が可能です。

一般的に、授業の質がよいと学級は荒れにくくなります。授業が下手な教師もおりますが、全員ハズレということはありません。生徒達の集中力を切らさず、興味深い上手い授業をする先生は必ずいらっしゃいます。この点においても、中学で学級崩壊が起きにくい一因となっています。

小学校の特徴は、学級担任がほぼ、1人で全教科をみるところにあります。よい面としては、児童ひとりひとりに深く関われるという点があげられますが、反面、他の担任のクラスのことに口をだすことはタブー視されていて、他の教師によるチェック機能が働きにくいといえます。そのためか、教室が荒れ始めても、担任が1人だけで問題解決にあたるケースが大半を占めます。その他の要因もありますが、小学校ではチームの力が十分に発揮されにくく、中学校にくらべると学級崩壊が起きやすいのです。

小中学校どちらにも言えることですが、他の教師に手助けを求めたり、相談しない教師は、学級崩壊への対応が遅れる傾向があります。

「自分のやり方は間違っていない」

「たまたま悪い子ども達に当たっただけなのに」

「何とか年度末まで耐えれば良い」

と考えるような先生たちの元では解決は期待できません。また、逆に責任感が強すぎる先生も危険です。問題を「自分だけの責任」として捉え、1人で抱え込むタイプです。この場合、他の教師が気付いた時には、既に手に負えないような状況にまで進んでいることがよくあります。

問題が多発する学級を受け持っていると、毎日、気が休まることがありません。ストレスが連続し、しだいに視野狭窄に陥ってしまいます。問題を起こす生徒児童しか目に入らなくなるのです。彼らの行動を抑制するために、授業を中断しても叱責する。しかし彼らは収まらず、問題行動を繰り返す。それゆえにまた叱責する。この繰り返しです。そして、ついには授業そのものが成り立たなくなります。

学級崩壊、それは先生にとっては最も苦しいことなのです。子ども達にも大きな負担を強いることになります。このストレスに耐え切れなくなった子供たちは、真面目だった生徒であっても、紙を切り、床に撒き散らす、同級生の筆箱をわざと落とす、などの問題行動をとるようになります。優しい女の子の中には、リストカットを始めてしまう子もいます。

学級崩壊が起きると、いじめも多発し、やったりやられたりが繰り返される毎日になります。もはや、客観的にいじめを把握するなどの基本的対応でさえ、先生に期待できません。「いじめ被害者側が学校に何度要望しても、まったく誠意ある対応が得られない」、ということをよく聞きますが、機能不全に陥った場合には、いじめ解決など、もはや不可能です。

学級崩壊が起きる原因は、荒れた生徒をコントロールできないところにあります。学級崩壊を起こさせないポイントは、教師にあります。しっかりした先生がいるかどうか、あるいは教員の組織力があるかどうかが決め手です。

多数決が決める善悪!?

もうひとつ、学級崩壊を起こしやすい原因として、「善悪の判断から逃げる」という学校が持っている傾向性が挙げられます。「ムラ社会の掟」、または「長いものには巻かれろ」という言葉がありますが、善悪に関係なく「意見の多い方が正しい」という考え方が教育界に蔓延しています。この考え方が、悪を増殖させる方向で働くのです。

「いじめられている。助けて」という生徒の訴えに対して「これはいじめかどうか」ということを多数決で決める教師がいます。その結果、ほとんどのケースで「これは、いじめではない」という意見が多数意見としてまかり通ってしまうのです。

また時々ですが、保護者から依頼された弁護士が、「問題行動や非行の児童、生徒にも『教育を受ける権利』があるから、教室に入れろ」と学校に理不尽な要求をしてくることもあります。しかし、加害者の権利と被害者の権利が相克する場合、教室という同じ空間で、加害者の権利が、被害者の権利に勝ってよいのでしょうか? 護られるべきは、被害者の「教育を受ける権利」です。

真っ当な正義感をもち、空気に流されず、自分の意見を言うことができる子どもはたいへん少なくなっています。今、教師に求められているのは、そのような子の権利擁護やエンパワーメント(激励)です。勇気を持って正論を言う子ども達を教室に取り戻さなければ、クラスはよくなりません。そのためには、「ならぬものはならぬものです」といった善悪の指導は必要不可欠です。

教育という世界に身をおいている1人として、子供たちに善悪をきちんと示し続けてまいりたいと考えております。

スクールソーシャルワーカー 村崎京子

image by: Shutterstock

 

『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』

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出典元:まぐまぐニュース!