「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のノルバ・シノ役、「健全ロボ ダイミダラー」のマイケル役などを演じる村田太志さん

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編集部が注目する声優に、声優を目指したきっかけや、初めてのお仕事、そしてプライベートなことまで、気になるあれこれについてインタビューを行い、さらに撮り下ろしのグラビアも交えて紹介する人気企画「声優図鑑」。

第132回となる今回は、「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のノルバ・シノ役、「健全ロボ ダイミダラー」のマイケル役などを演じる村田太志さんです。

――声優を始めてから丸8年ということですが、そもそも目指したきっかけは?

村田:中学生の頃は野球漬けの毎日で。でも体を壊して野球ができなくなった時に、陸上部に移ったんですよ。その時に出会った、長距離も短距離も幅跳びもすべていちばんで長身イケメンの尊敬できる人が、めちゃくちゃアニメオタクで(笑)。仲良くしているうちにアニメを観るようになって、どのキャラクターをどの声優が演じているっていうのを調べているうちに、憧れていったんだと思います。

――キャラクターとか絵よりも、声だったんですね。

村田:そうですね、僕の場合は。本当に人が出しているのかっていう声に驚くこともあったし、声の芝居だけで人を魅了するのがすごいなと。野球部の時は本当に娯楽を知らなかったのに、陸上部に移って心が解き放たれた時にブワーッと入ってきちゃって。

――陸上部のイケメンからすすめられた作品はあったんですか?

村田:その時は、あかほりさとるさん原作の「MAZE☆爆熱時空」がはやっていて、「関智一さん、いいよね!」って聞いて。声だけだと、もっとカブいた感じの人が演じているイメージだったのに、実際に関さんの写真を見た時にギャップがあって、そこもいいじゃん!と(笑)。それからは、自分でも漫画のキャラに声をあててみたりして。

――高校を卒業してから大阪アニメーター学院に?

村田:じつは、高校は中退したんですよ。進路相談の時、声優の道に進みたいことを親に告白したら、大反対されて。高3の夏、部活が終わった頃に学校を辞めて、バイトでお金を貯めました。

――中学生からと考えると、憧れていた期間は長いですよね。

村田:そうですね、足掛け3年。陸上部でがんばっている時も、家ではちょこちょこ練習していたので(笑)。

――バイトではどんな経験を?

村田:最初は、郵便局の補助といいますか…ほぼ雑務のような感じで、仕事は多岐に渡ってました。書類を整理したり、力仕事をしたり、簡単なバイクの整備もしたんじゃないかな(笑)。その後は配送センターで仕分けをして。1日中働いてましたね。

――早いうちから社会経験を積んで専門学校へ。事務所に入ったのはいつ?

村田:僕、芽が出るのがホントに遅くて。事務所に入ったのは20代半ばくらいなんですよ。ハタチで専門学校を出た後に、大阪で4年くらい舞台の出演やお手伝いをしていたので。じつは、なかなか声の芝居の要領がつかめなくて、半ばあきらめていたんですよ。でもふと思い立って、リスタートするなら東京だなと。もう一度お金を貯めて、東京で声優の養成所に入り直しました。

――養成所で声の芝居の要領はつかめましたか?

村田:それが結局、養成所で学んだことも、舞台のお芝居と一緒でしたね。どちらにしろ、体全体を使ったお芝居がキホンだと教わったので。養成所を出て仕事を始めてからも、芝居は現場で学ぶしかないんだって思っていました。

――初めて出演したアニメ作品は?

村田:これはもう忘れないです。アニメだったら「夢色パティシエール」。役つきのゲスト出演だったんですが、養成所で学んだはずなのに、震えが止まらないし、声がつっかえて出ないし、こんなにも自分の体が思い通りにならないのかと。ホント、100の練習より1の現場だって痛感しました。

――リテイクになったんですか?

村田:はい。しかも覚えが悪いのか。それから2〜3年後の「トータル・イクリプス」では30回くらいリテイクしたことがあって。その時は、僕の声優人生終わったと思いました(笑)。10回でも相当なので、さすがに30回は…。物語のキーとなる役でセリフもそれなりに多くて、収録に慣れてきたと思っていたのに、そこでまた思い通りにならない感覚がよみがえったんですよね。

――ゲスト出演とメインキャストの差はそれだけ大きい、ということですか。

村田:大きいと思います。でも、なんで自分はできないんだって卑下していたけど、そうじゃない、自分は何度も練習が必要なタイプなんだって思い込むようにしました。その大きなステップを簡単に飛び越えられる人もいると思いますけど、僕はそうじゃない人間なんだと。

――逆に、すごくスムーズに演じられた役はありますか?

村田:最近だと、「(機動戦士ガンダム)鉄血のオルフェンズ」のノルバ・シノ役。とにかくキャラクター自身の幅が広いこともあって、自分の中で道筋を細かく立てることなく、こうしてみたいという意欲がどんどん湧いてくる役でしたね。

――シンクロ率が高い役というのはあるんでしょうね。

村田:そういう意味では、自分の芝居のたがを外してくれたのは、「(健全ロボ)ダイミダラー」のマイケル役です。演じる上で、ストライクゾーンを狙うのではなく、ボールを投げてもいいんだっていうことに気付かせてくれた作品ですね。この作品があったから、ノルバ・シノ役で、全力ではっちゃけられたのかもしれません。

――台本には、セリフの言い方など、細かく書き込みをするほうですか?

村田:ここ数年で変わりました。最初の頃は台本にメモを書き込まないと不安でしたけど、逆に今は、メモをすると、必ずそこを通らないといけないので演技がブレるというか。だから、そのキャラクターのバックボーンを落とし込んだ上で、どうにでも動ける意識を持って収録にのぞんでます。いい意味で、台本を見過ぎないように。でも、その時々で柔軟に対応していきたいので、その方法もその時によって変わっていくかもしれません。

――ここ数年でレギュラー作品が増えて、この流れに乗っていけるっていう実感はありますか?

村田:流れにのる事も念頭に置きつつ、急激な波がきても飛び越える事なく、一歩ずつ地に足をつけて進んでいきたいと思ってます。

――お仕事の変化にあわせて、プライベートで変わったこともありますか?

村田:ここ1年ほど、郊外から都心に引っ越してからは、東京8年目、9年目にして東京の生活を楽しんでいます(笑)。クロスバイクを手に入れたので、スタジオ間の移動をするのが楽しくて。これがみなさんが言っていた山手通りですね! みたいな(笑)。郊外に住んでいると、どうしても都心の雰囲気を感じられないし、飲んでいても早く帰らないといけない。今は、先輩がすすめてくれたお店にも気軽にいけちゃいますし、本当に自由ですね。フットワークが軽いです。

――終電ギリギリまで飲めるようになったと(笑)。お酒は何をお飲みになるんですか?

村田:最近は、ウイスキーとか。知らないお酒のことを聞いて、試しに飲んでみることもありますね。ひとりでバーに入ることも。とにかくいろいろ吸収したい時期なんだと思います。

――仕事がない日は何をしていますか?

村田:最近は、朝からジムに行って3〜4時間みっちり鍛えて、直後に低脂肪牛乳を飲んで、カフェでゆったり本を読むっていうのがルーティンです。休日にひとりの時間をたっぷり味わって、次の日の仕事に向かいます。

――最近読んでいる本は?

村田:最近は心理学の本を。

――心理学ですか。小説やエッセイではなく。

村田:たぶん、小説を読むんだったら、漫画を読んでます(笑)。せっかく読むなら、人の気持ちがわかるようなことを学びたくて。今読んでいるのは、アドラー心理学の本。名だたる心理学者の中でもマイナーらしいんですけど、なぜマイナーになったのかに興味があって(笑)。

――読みながらわかってきましたか?

村田:納得できるポイントはありました。けっこう人に自分の考えを押し付けない考え方なんですよ。“人は人”っていう。その考え方は、もしかしたら自分に合ってるかも、と共感しながら読んでます。

――たしかに、これまで独自の道を進んできている感じを受けます。女性の好きな仕草はありますか?

村田:これは僕だけかもしれませんけど、何度かお話している人と何気なく目があって、(ドヤッ)ってなる時。で、あっちも(ドヤッ)って顔で返してくれる(笑)。お互いの照れなのか、わかってるわかってるっていう意思疎通が生まれた瞬間が、なんかいいですね。これ、文字で伝わるかな…(笑)。

――その表情のおもしろさを伝えられないのが残念です(笑)。自分のキャラクターをひとことで言うと?

村田:“ひとり好きの寂しんぼう”ですかね。ワガママなんだと思います(笑)。

――声優として、新たにチャレンジしたいことは?

村田:3枚目とかヘタレとか、飛び道具的なキャラクターを演じることが多かったので、2枚目も演じてみたい気持ちはあります!

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

村田:キャリアとしてはまだまだ若手の部類に入る僕ですが、34歳になって、これまでの力技の村田太志だけでなく、一歩引いた大人の姿をみなさんにお見せできたらと思っております。と言いながらも、今日のロケでは静止画なのになぜか走り回ったりしてるんですけど(笑)。最高のパフォーマンスをお届けできるよう、これからもがんばっていきますので、よろしくお願いします!

――ありがとうございました!

次回の「声優図鑑」をお楽しみに!

◆撮影協力

magic tone studio(マジックトーンスタジオ)

取材・文=麻布たぬ、撮影=山本哲也、制作・キャスティング=吉村尚紀「オブジェクト」