「今、求められる産後ケアの必要性」セミナー報告 ――誰もが抱える潜在的な「産後うつ」に言及

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2016年7月14日、文京学院大学にて「今、求められる産後ケアの必要性」をテーマとする報道関係者向けのセミナーが開催された。登壇したのは、同大保健医療技術学部准教授の市川香織氏。当日の会場は、大手新聞各社の記者や業界有名誌の編集スタッフが出席し、この問題におけるマスコミの関心度の高さがうかがえた。


■産前産後の女性には安心できる環境を


市川先生はまず、毎日新聞による妊産婦自殺に関するショッキングな報道を受けて、妊産婦の自殺率が、健康問題からの妊産婦死亡率より高いことを指摘。産前産後の時期はホルモンの変化が大きく不安定な時期であるため、正常なホルモンバランスを保つためには、専門家による継続したケアや、家族や周囲に認められ大事にされる安心感が必要であることについて解説した。

また、周産期うつは潜在的に誰もが抱えており、約半数の産後女性は、産後1年くらいの間に、「自分が“産後うつ”だったかも」と感じた経験があるといった統計を挙げ、とくにピークである産後3ヵ月までは、母親自身が頑張りすぎないことについて喚起した。

■産後3ヵ月までは家庭や地域でのサポートが重要


そして、産後は医療施設よりも、家庭・地域でのサポートが必要となってくるため、医療と地域の連携が課題であることを指摘。医療施設においては年々入院期間が短縮され、十分な育児技術指導を受けないままで退院する傾向が見られるため、産後の母親が最も不安に感じる退院直後3ヵ月頃までの支援が重要であると示した。

また、産後の具体的なニーズとして、「産んだ“わたし”も優しくされたい」といった女性の本音についても挙げており、かつての「床上げ」の風習や世界各地の産後ケア事情等を例に挙げ、産後を大事にすることは、心身の癒しだけでなく、健全な親子関係の構築にも必要であると述べた。

■出産直後の母子への支援充実に関する提言


さらに市川先生は、厚生労働省の母子保健ビジョン、『健やか親子21』の指標より、「妊娠・出産について満足している者の割合」は93.5%(平成25年度)で、改善状況であることは評価。しかし、詳細な項目別に見ると、「産後退院してから1ヵ月程度の助産師や保健師等からの指導・ケア」について満足している割合は56.9%であり、産後ケアがまだまだ行き渡ってないことについて着目。

そこで、フィンランドにおける産前産後の切れ目ない支援と相談の場である「ネウボラ」にちなんで、現状さまざまな機関が個々に行っている、妊娠期から子育て期までの支援をワンストップで行える拠点「子育て世代包括支援センター」を、「日本版ネウボラ」として全国展開することが目標に掲げられている状況について説明した。


現在実際に推進されている自治体として、千葉県浦安市や埼玉県和光市の事例、また山梨県の産前産後ケアセンターについて紹介。誰もが望めば「産後ケア」を受けられる行政サービスや、家族はもちろん、職場が長時間労働を是正して、母子をサポートできる環境づくりを推進することによって、妊婦や母子が社会から受け入れられているという実感を持てるようにすることの大切さを強調した。

【関連アーカイブ】
育児スタートセットももらえる!日本人夫婦が経験したフィンランド出産事情
(※「ネウボラ(=ネウヴォラ)」についての紹介も)
http://mamapicks.jp/archives/51877966.html