人より麺を選ぶ方が楽しい(写真:アフロ)

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 都知事選がヒートアップするなか、大人力コラムニスト・石原壮一郎氏はネットでももうひとつの「総選挙」に夢中である。それはなにか。

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 お互いに足の引っ張り合いをしながら、都知事選がアツく黒く盛り上がっています。ただ、しょせんは東京都のボスを決める選挙で、都民以外にとっては、べつに投票できるわけじゃないし、誰になっても直接の関係はありません。投票権がある都民も、まあ選挙は行ったほうがいいんだろうけど、さて誰がマシなのか……と、呆れ気味に眺めている人が多いのではないでしょうか。

 そんないまいちテンションが上がらない選挙と同時に、大人としてはアツく盛り上がらざるを得ない楽しい選挙が行なわれています。その名も「ご当地麺総選挙2016」。ネット通販のAmazonがプライム会員向けサービスのAmazonパントリーで開催しているもので、全国の地域限定のレアな袋麺やカップ麺が大量にエントリーされています。

 期間は8月12日まで。注文数がそのまま票数となる仕組みで、総選挙終了後には、上位10アイテムを集めたテーマBOX「選抜ご当地麺セット」が発売される予定だとか。まあ、ぶっちゃけた話、Amazonがプライム会員の増加や「パントリー」という細々した商品をまとめて発送するサービスの宣伝を狙ってやっているわけですが、向こうも商売ですからそれはそれでかまいません。楽しそうな企画には素直に乗っかりつつ、全力で盛り上がるのが大人の姿勢と言えるでしょう。

 7月24日現在、エントリーされているインスタントラーメンは152種類。今後、追加される予定もあるようです。はばかりながら、幼いころから袋麺やカップ麺にはさんざんお世話になってきました。今もしょっちゅう食べています。少なく見積もって年平均100食として、トータルで食べた数はそろそろ5000食を越えるでしょう。

 さっそく152種類から、縁起のいい数ということで7種類を選んでみました。まずは、子どものころからおなじみなのに関東ではほとんど見かけない「金ちゃんヌードル」(徳島製粉)。おっ、同じ会社の「NEO金ちゃん焼そば復刻版」も面白そうです。ああ、やっぱり東海地方で生まれ育ったものとしては「即席SUGAKIYAラーメン」(寿がきや)も外せません。もし故郷三重の名物である「伊勢うどん」のカップ麺があったら迷わず大量投票するところですが、まだ開発されていないのが残念です。

 見たことがないのも選んでみましょう。悩みに悩んだ末、「マルちゃん北海道限定やきそば弁当たらこ味バター風味」(東洋水産)、「イトメンこだわりのソース焼そば5食パック」(三菱食品)、「阪神甲子園球場監修甲子園カレーラーメン」(エースコック)にしました。おそらく来週の都知事選での投票では、この何十分の一しか悩まないでしょう。

 ここで、私たち中年にとっての心の友と言ってもいいインスタントラーメンの歴史を振り返ってみましょう。諸説ありますが、一般的に世界初のインスタントラーメンとされているのは、1958(昭和33)年に誕生した「チキンラーメン」(日清食品)。カップ麺の元祖も、1971(昭和46)年に誕生した同じく日清食品の「カップヌードル」です。

 現在、日本全体で作られているインスタントラーメンは、カップ麺が約38億食、袋麺が約17億食、生タイプが約1億5000万食(2015年、日本即席食品工業協会調べ)。国民ひとりあたりで見ると、カップ麺は年間32食ぐらい、袋麺は14食ぐらい食べている計算になります。ちなみに、後発のカップ麺が袋麺の生産量を抜いたのは1989(平成元)年のこと。時代の節目に合わせて、インスタントラーメンの世界でも主役が入れ替わりました。

 あなたも「ご当地麺総選挙」に参加して、懐かしい顔ぶれや馴染みのない顔ぶれ、あるいは生まれ育った地域の味やたまたま縁があった地域の味などを眺めつつ、どのインスタントラーメンを買おうか頭を悩ませてみましょう。それは、今までの自分の人生を振り返る行為といっても過言ではありません。しっかり向かい合うことによって、人生をより深く味わうことができるでしょう。インスタントラーメンを食べるときと同じですね。

 注文した、じゃなくて投票した7個のインスタントラーメンは、2、3日中には届くはず。どれから先に食べるか、ふたたび真剣に悩みそうです。そして、都知事選で誰に投票するかも、麺をすすりながら考えてみようかと。「縮れた麺」と「知事」。よしっ、関係なさそうな話がどうにかつながりました。