自宅派vs施設派 「最期まで自宅で」親の希望に応えるには

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■「待ち」の姿勢では在宅介護は難しい

「最期まで自宅で暮らし続けたい」。そう考える高齢者は少なくない。現在の介護保険制度でも、別居の老親を在宅のまま介護し、看取ることはできる。ただし情報収集が重要だ。

たとえば2006年から始まった「小規模多機能型居宅介護」。従来の「訪問」「通い(デイサービス)」「泊まり(ショートステイ)」を同じ事業所で組み合わせて利用できる。要介護度が最も重い「5」では自己負担額(1割)は月額3万円程度。月額の利用料は固定なので、サービスの量が増えても負担は一定だ。

3年前に始まった「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」では、ヘルパーや看護師の定期的な訪問に加え、自宅への緊急呼び出しにも対応している。これも要介護5で月額3万円程度の定額で利用できる。

これら新しいサービスはケアを受ける曜日や時間などの自由度が高く、それまでの在宅サービスより相当に使い勝手がよくなっている。

また医療も在宅で受けられる。08年までに制度ができた「在宅療養支援診療所・病院」では、24時間体制で訪問診療や訪問看護ができる態勢が確保されている。医師や看護師による在宅の看取りも増えている。

ところが、こうした介護・医療サービスは全国すべての自治体で受けられるわけではない。介護費用の負担増を恐れて、新しい取り組みには消極的な自治体も少なくない。

在宅医療に対応する診療所や病院、訪問看護ステーションの数もまだまだ少ない。積極的な宣伝をしていないため、探すのも一苦労。だが、地域包括支援センターやケアマネジャー、自治体などに問い合わせれば、必ず利用できる。在宅介護には情報を取りにいく積極的な姿勢が必要だ。

■認知症ケアの要点は「普通の暮らし」

国が在宅医療・介護を推進する一方で、「介護疲れ」を訴える人も少なくない。問題の大半に関わるのが認知症である。認知機能の程度で、在宅介護の難易度は大きく変わる。認知症が進行している場合には、介護者の負担を減らすためにも施設の利用を考えてみてほしい。

高齢者向けの施設や住宅には様々な種類がある。介護保険が利用できる施設のうち入居者の平均要介護度が最も高いのが「特別養護老人ホーム(特養)」である。入居一時金などの初期費用は必要なく、24時間の介護が受けられる。毎月の負担額は介護サービス費と食費などで月額9万〜15万円程度だ。特養は全国に約7800カ所、約52万人が入居しているが、慢性的に不足していて地域によっては入居に数年がかかる。

このため軽度や中度の認知症の人は「認知症高齢者グループホーム」に入居するケースが増えている。入居一時金は無料から100万円程度で、月額15万〜30万円程度の負担がかかるが、住まいは個室で、ほぼ9人のユニット単位で職員の介助を受けながら暮らす。大きめの家族のような雰囲気だ。日中の職員数は入居者3人に対して一人と手厚い。また毎年、外部団体による「第三者評価」が義務づけられており、認知症に特化した体制がある。全国に約1万2000カ所あるが、あまりの急増ぶりに開設を抑制している自治体も出てきている。

介護施設で最も費用が高額なのは「介護付き有料老人ホーム」だろう。高ければ数千万円という入居一時金と15万〜40万円程度の月額費用が必要だが、認知症ケアという観点においては金額に見合うか疑問だ。一流ホテル並みのサービスが謳われていても、認知症ケアの理解度は施設によってまちまちだからだ。

認知症ケアで最も重要なのは、「普通の暮らし」への支援である。グループホームでは買い物や調理を入居者と一緒に行う事業所が多いが、有料老人ホームではこうした家事への参加は見られない。

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福祉ジャーナリスト 浅川澄一
1948年生まれ。71年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞社入社。月刊誌「日経トレンディ」初代編集長、流通経済部長、マルチメディア局編成部長、編集委員などを歴任。2011年より公益社団法人・長寿社会文化協会(WAC)常務理事。

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(福祉ジャーナリスト 浅川澄一 星野貴彦(プレジデント編集部)=文)