後援も協賛もなし!無人ソーラーボートが大西洋を横断中!

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自動ソーラーボート・Solar Voyager

ソーラー・パネルが設置されたボート、その名もSolar Voyager(ソーラーボヤージャー)が今年の6月1日、アメリカのマサチューセッツをあとにして大西洋を横断しつつ、ポルトガルまで約4000キロの海路を行く旅に出帆したという。 「ソーラーボート?今さら、珍しくもないでしょ?」とおっしゃるなかれ。このボートは、スタンダードなソーラーパワーボートとは少々違う条件の元で航海に出発したのだ。

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Source:cbc.ca

では、いったい何が違うのだろう? 実はこのSolar Voyagerは、有志が案を持ち寄って製作した無人の自動ソーラーボートなのである。もし、この初航海で大西洋横断を成功させたとすれば、世界でもまれにみる快挙になることは間違いない。ちなみにこのボートの考案者は、アメリカ人のIsaac Pennyと モーリシャス諸島生まれのChristopher Sam Soonの2人で、彼らは4年ほど前から余暇を利用して友人や家族の助けを借りつつ、こつこつとこのボートを製作して完成させたのだそうだ。

現在、出帆から約1カ月が経過しており、最終地点のポルトガルには10月に到着する予定だという。この先、まだまだ長い海路が続くことになるが、自動ソーラーボートの初チャレンジとして到着に成功すれば、世界中からの歓迎を受け、嬉しいニュースが報道されるに違いない。

有志たちの手によって

興味深いのは、全長約4メートル、幅は1メートルあるこのボートが完全なるハンドメイドだ、ということだ。考案者のふたりとPenny氏の父親、そして隣組に住むエンジニア、Randy氏たちが協力しあい、お互いが持つ知識や経験をフルに生かしつつ、ボートをこつこつと手づくりしたのである。製作過程において彼らが唯一購入したのは、ボート用のモーターとソーラーパネルのみだったというから、これぞDIYの最たるものといえるだろう。

製作開始時点でのボートは、プラスチック製のカヤックだったそうだ。しかし、波に乗せたときの安定性を考慮に入れた結果、現在のようなアルミニウム合金製のボートへと作りかえられたという。ボートには、推進モーター(電気推進)が内蔵されており、デッキ上部と屋根の全面には、独立型太陽光発電に最適といわれる240ワットのソーラーパネルが設置されている。

寄港ナシの完全単独航海

今回、初の大西洋横断にチャレンジしたSolar Voyagerだが、出発点のアメリカからポルトガルまでの航海中、どこかへ寄港する予定はないという。したがって、点検や整備が行われることがないわけだ。もしもエンジントラブルなどが起きた場合は、残念ながらそれでおしまいなのである。また、サメによる体当たりや、他のボートや船との衝突への対処法もないといい、製作者たちは、レーダーに映しだされるSolar Voyagerの様子を随時チェックしながら、手に汗を握りつつその航海を見守り続けている状態だ。点検や整備ナシ、という厳しい状況に対し、考案者の4人はまず完璧に耐えうるボートを製作することを考慮にいれたというが、残念なことにこの問題を100%解決させる良策は見つからなかったという。

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Source:The Reneweconomy

厳密にいえば、Solar Voyagerが大西洋横断にのぞんだ初の無人自動ボートだったわけではない。アメリカ・カリフォルニア州に本社を置くLiquid Robotics社が世に送り出した、名称The Wave Gliderボートは、今から4年前に見事、大西洋横断に成功しているという。しかしこちらは、大企業の協賛によって進められたソーラーシステム促進プロジェクトの一環として進水しており、Solar Voyagerのそれとは少々状況が異なる。後者は、ソーラーボートの可能性と限界に駆けた者同士が、一生懸命手づくりして世に送り出した、といういわばチャレンジ精神旺盛でユニークなバックグラウンドを持っているからだ。

最終地点到着は10月

7月現在、Solar Voyagerは順調に航海を進めているようだ。首尾よくポルトガルのリスボン港に到着したあかつきには、メイン考案者のIssac Penny氏と Christopher Sam Soon氏が、引き上げにやってくる予定だ。しかし、その到着に世界中の人びとが首を長くして待ち、成功をおさめた時点で大大的にニュース報道されることはないだろう、と彼らはあくまでも控え目である。だが、エンジニアや科学技術の方面に明るい有志が4人集まり、協賛や後援もない中で、彼らが持てる知識と時間を最大限に利用して作り上げたボートが見事、大西洋を堂々横断できた!となれば、それはそれでインパクトが強く、ニュース性は高いと思われる。

この一連プロジェクト本来の目的は、ソーラーパワーの存在を知ってもらうためだ、と考案者の4人は口を揃える。「太陽エネルギーを、再生可能エネルギーの代表とするならば、その実力を、私たちが証明しなければなりません。その意味でSolar Voyagerの出帆は、将来に向け、船舶技術の新開発に献上することになるかもしれないのです」

Solar Voyagerは現在、アメリカとヨーロッパ大陸を結ぶGPS上の大海原をゆっくりと航海中である。もしかしたら、製作者たちの予想をくつがえし、各国からたくさんの報道陣がその雄姿をひと目見るため、たくさん詰めかけてくるかもしれないし、筆者もそれに期待している。

【参考・画像】

※ ‘Solar Voyager’ autonomous boat looks to make history in sun-powered journey across the Atlantic - TechCrunch

※ Autonomous solar boat begins voyage across the Atlantic - TreeHugger

※ Autonomous boat crossing the Atlantic - Solar Voyager