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特定危険指定暴力団「工藤会」系幹部の裁判をめぐり、元暴力団員らが、審理に参加した裁判員に声をかけた事件を受けて、福岡地裁小倉支部は7月中旬、裁判員裁判の対象から除外する決定を出した。

問題になったのは、工藤会系幹部が殺人未遂の罪に問われた裁判員裁判だ。報道によると、今年5月の公判のあと、幹部の知り合いの元暴力団員ら2人が、複数の裁判員に「同級生だから、よろしくね」「あんたらの顔は覚えとるけんね」などと声をかけたという。

判決の期日は取り消されて、裁判員4人が審理を辞退した。その後、元暴力団員らは裁判員法違反で、逮捕・起訴された。裁判員裁判の対象から除外されることで、裁判官のみで審理されることになった。

今回の「声かけ」事件は、裁判員裁判の制度の根幹をゆるがしかねないとして、大きな注目を集めた。今回のような事件を防ぐためには、今後、どう対応すべきなのだろうか。刑事事件にくわしい神尾尊礼弁護士に聞いた。

●安心して参加できる土台があってこそ

「裁判員法は、(1)裁判員(候補者を含む)の生命などに危害が加えられるおそれがあるか、生活の平穏が著しく害されるおそれがあり、(2)裁判員が畏怖し、出頭確保が困難になった場合などには、裁判員を除外して、裁判官だけで裁判をおこなう決定を出すとしています(同法3条)。

今回のケースでは、その働きかけの態様や背景事情などを考慮すると、(1)生活の平穏が害されるおそれがありますし、(2)裁判員が畏怖することも当然です。

裁判員裁判の対象から除外する決定を出した裁判所の判断は、妥当だと考えます」

今回のように、裁判員が接触を受けるようなことが頻発するような状況は、なんとしても避けなければならないだろう。

「私もこれまで、数十件の裁判員裁判を担当してきましたが、裁判員に不当な働きかけがあったケースはありません。全国的にみても、同じようなケースは見当たりません。

つまり、きわめて例外的なケースだといえます。裁判員(候補者)の方たちは、過度な心配をしなくてもよいと思います」

今回のような事件が起きないように、どうすればいいのか。

「もっとも、例外的なケースだからこそ、裁判員の不安をなくすべく、十分な対応を取るべきです。

たとえば、裁判員裁判は、裁判がはじまるまでに、裁判官と裁判員が打合せを重ねることがほとんどですので、そういった場で率直に意見交換したり、必要に応じて適切に除外決定が出せるようにすべきです。

実務的には、除外決定が出されること自体、極めてまれなことですが、私個人としては、もう少し柔軟に運用してもよいと思います。

裁判員裁判によって、司法に対する国民の理解がすすみ、信頼が増すとされています(裁判員法1条)。そのような理解や信頼も、安心して参加できる土台があってこそのものです。裁判員の安心を作るうえでの手段として、除外決定の柔軟な運用などが求められると思います」

神尾弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
神尾 尊礼(かみお・たかひろ)弁護士
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。刑事事件から家事事件、一般民事事件や企業法務まで幅広く担当し、「何かあったら何でもとりあえず相談できる」事務所を目指している。
事務所名:彩の街法律事務所
事務所URL:http://www.sainomachi-lo.com