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東京高裁は7月5日、一審の東京地裁で無罪判決を受けた中国籍の男性被告人について、職権で再勾留を決めた。控訴した東京地検の求めに応じた形で、無罪判決を受けた被告人の勾留が認められるのは珍しいという。

時事通信によると、男性は振り込め詐欺に絡み、空き家に侵入したとして起訴された。6月29日、東京地裁で無罪判決を言い渡されたが、東京地検が7月4日に控訴。地検が東京高裁に再勾留するよう、職権の発動を求めていた。

男性は入管施設に送られ、強制送還される見通しだったという。控訴に当たって、逃亡を避ける目的があると見られるが、こうした措置は人権的に問題ないのだろうか。本多貞雅弁護士に聞いた。

●在留資格の有無が判断に影響を与えるべきではない

無罪判決が出れば、勾留中の被告人は直ちに身体拘束から解放されます。他方で、刑事訴訟法上の要件が満たされれば、裁判所は無罪判決後であっても再勾留できるとされていて、過去にも同様の例があります。

しかしながら、勾留要件の判断にあたっては、無罪判決の前後で同様に考えるべきではありません。たとえば、要件の一つである「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(犯罪の嫌疑)については、無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重に判断されなければなりません。また、「勾留の必要性」についても、控訴審では被告人に出頭義務はありませんから、それでもなお、実体的真実発見のために被告人質問をする必要があるなどの場合に限られると考えるべきです。

今回、検察官は強制送還前に職権再勾留を求めたのだと思われます。無罪判決の際、被告人が在留資格のない外国人であった場合は、刑事手続上、解放となっても、直ちに入国管理局によって収容され、退去強制手続を経て本国に強制送還されることになります。そうすると、控訴審における被告人質問や、控訴審で有罪となった場合の刑の執行確保が困難になるからです。

しかし、無罪判決が出ているにもかかわらず、在留資格のない外国人であるからといって、引き続き勾留を求める検察官の姿勢は、外国人の「身体の自由」という重要な人権を軽視していると言わざるを得ません。無罪判決を受けた被告人が、在留資格のない外国人か否かという事情によって、勾留の要件判断に影響を与えるべきではないのです。

一審の無罪判決後に再勾留が認められた例では、東電OL殺人事件(1997年)が挙げられます。この元被告人も外国人でした。最終的に再審で無罪が確定していますが、2012年までかかっています。同じような過ちを繰り返さないためにも、慎重な判断が求められます。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
本多 貞雅(ほんだ・さだまさ)弁護士
東京弁護士会所属。刑事事件、少年事件、外国人の入管事件に精力的に取り組み、法科大学院等では後進の指導にもあたっている。また、保険会社勤務や不動産会社経営の経験を生かし、企業法務にも力を入れている。
事務所名:本多総合法律事務所
事務所URL:http://honda-partners.jp/