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『SUUMOジャーナル』が誕生して今年で5周年。この5年間に世の中ではさまざまなことが起こり、住宅を買うときの環境も大きく変化した。駆け足で振り返ってみよう。

2011〜2012年は自粛ムードで住宅価格が低迷

まず住宅価格の変動を見ていこう。SUUMOジャーナルが開設されたのは東日本大震災直後の2011年5月11日。「とても家を買うどころではない」というムードが広がっていた。そのため2011年から2012年にかけては住宅価格がほとんど変動せず、首都圏の新築マンション平均価格は4500万円台でほぼ横ばいだ。わずかに価格が上がっているのは、デベロッパーが特にマンションが売れにくくなると判断して、価格帯の低い郊外エリアで販売を見合わせる動きが強まったことが影響しているとみられる。

一方、中古マンションは世の中のムードをそのまま反映して、価格が下落気味で推移した。その傾向は2013年ごろまで続き、価格が上昇に転じるのはようやく2014年になってからだ。

【図表1】首都圏マンション平均価格(東京カンテイ調べ) ※新築・中古マンションともに30m2未満の住戸、事務所店舗用途は除く。中古マンションは売りに出された物件の平均価格

【図表1】首都圏マンション平均価格(東京カンテイ調べ)
※新築・中古マンションともに30m2未満の住戸、事務所店舗用途は除く。中古マンションは売りに出された物件の平均価格

アベノミクスと異次元緩和でマンション価格が上昇

2012年の年末には衆院選で自民党が圧勝し、第二次安倍内閣が発足。翌2013年からアベノミクスがスタートする。そうした上昇ムードを反映し、新築マンション価格も上昇のスピードを速めていく。黒田日銀による異次元の金融緩和で株高が進んだことでマンション需要が回復し、円安で輸入資材が高騰したことも大きく影響した。

さらにマンション価格の上昇に拍車をかけたのが、2013年9月に決まった2020年東京五輪の開催だ。折しも大震災後の復興需要で建設業界では人手不足が顕著になっていたが、五輪需要を当て込んで東京都心部を中心にオフィス・マンションの建築需要が一気に強まった。2014年4月には消費税が8%に引き上げられたが、住宅ローン控除の拡充などの影響もあり、マンション市場ではさほど大きな需要の変動は見られなかった。

こうした流れを受けて、2014年には5000万円を突破した首都圏の新築マンション平均価格が、翌2015年には5800万円台となり、2016年1〜5月では6200万円台に達した。連動して中古マンション価格も上昇の度合いを強めている。「70m²に換算した価格では、2016年1〜5月に前年比で新築マンション価格が8.3%上昇し、中古マンション価格は10.3%上昇しています」と、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員の井出武氏は指摘する。

度重なる金融緩和で住宅ローン金利は低下基調に

住宅価格とは対称的に低下が続いているのが住宅ローン金利だ。代表的なフラット35の金利をみると、2011年7月には2.3%台だったが、1年後には2%を切っている。当時の日銀トップは前任者の白川総裁だが、大震災後の景気てこ入れの意味もあり、数度にわたり金融緩和の強化を打ち出していた。

2013年にアベノミクスと異次元緩和がスタートすると、金利が一時的に上昇する局面が見られた。これは黒田日銀が放った“バズーカ砲”の影響の大きさゆえに、長期金利を決める国債市場が不安定になったためといわれている。マーケットの動揺が収まると、金融緩和の定石どおりに長期金利が低下し、住宅ローン金利も低下基調に戻ることになる。

【図表2】フラット35金利の推移(オイコス調べ)

【図表2】フラット35金利の推移(オイコス調べ)

2016年2月のマイナス金利政策でさらに金利が下落

金融緩和は本来、デフレ解消を目的とした金融政策だ。日銀が国債を買い入れることで市場に資金を大量に供給し、金利を下げて企業や個人がお金を借りやすくする。それによって経済が活性化し、景気が良くなって物価が上昇するというシナリオだ。

目論見どおり、2014年以降は金利が下がった。だが、原油安や消費増税による景気の低迷などもあり、物価は思うように上がらない。黒田日銀はたびたび追加の金融緩和を試み、金利は下がり続けた。そしてついに、マイナス金利政策に踏み込んだのが2016年2月だ。その後は住宅ローン金利も下げ足を早め、フラット35金利は7月に1%を割り込んでいる。

価格が上がっても金利低下で返済負担はダウン

住宅価格が上がると、これから家を買う人にとっては負担が増えることになる。一方で住宅ローン金利が下がれば、支払う返済額は軽くなる。では実際の負担は増えているのか減っているのか、試算してみよう。

図表は各年の平均価格の新築マンションを、その時点の金利の住宅ローンで買った場合の毎月返済額を試算したものだ。価格の上昇にともなって2013年から返済額も増え、2015年には16万円台にアップ。だが2016年は価格が6000万円台に上がったにもかかわらず、金利の大幅な低下で返済額は15万円台にダウンしている。なにかと物議をかもしているマイナス金利政策だが、こと住宅購入に関しては確実に負担軽減の効果が出ているようだ。

【図表3】新築マンションを購入した場合の住宅ローン返済額の推移(オイコス調べ)

【図表3】新築マンションを購入した場合の住宅ローン返済額の推移(オイコス調べ)

マンションの売れ行きが鈍れば価格上昇にブレーキも!?

だが、喜んでばかりもいられない。このところの株安・円高傾向で日銀が追加緩和を実施するとの見方が強まっているとはいえ、住宅ローンの金利が下がる余地は限られる。このまま住宅価格の上昇が続けば、再び返済負担が増えることも十分にあり得るだろう。

今後の住宅価格の見通しについて、井出氏は次のように予測する。「マンション価格の上昇で資産価値が向上した半面、都心部などでは価格が高騰して買いにくくなったエリアも散見されます」。つまり、今後の売れ行き次第では、マンション価格の上昇にブレーキがかかる可能性もあるというわけだ。

実際、東京カンテイのデータによると、中古マンション市場ではこのところ価格上昇の勢いが鈍り、売り出し後に値下げするケースが増えているという。都心を中心に価格上昇が続く新築マンション市場に、潮目の変化が現われる日もそう遠くないかもしれない。

●取材協力
東京カンテイ