『日本人と英米人 身ぶり・行動パターンの比較』(ジェイムズ・カーカップ、中野道雄/大修館書店)

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 私達は、ボディランゲージをよく使う。ボディランゲージと改めて表現されると「?」となる人も居るかもしれないが、何の事はない。それは「あれ」とか「ごめん」など、簡単な言語を表現する動作の事だ。どこそこを示したい時にその場所に向かって指を差したり、また謝意を示したい時や謝罪をしたい時に顔の前で手を合わせお辞儀したりする人は多いのではないだろうか。そういったボディランゲージは、言葉でなくとも自分の意思を伝えられる事から、世界共通言語のように思われ、外国へ旅行に行った時なども重宝される……ように思える。だが、本当に私達が日常の中で使うボディランゲージは、文化を異にする外国人にも正しく伝わるのだろうか? そんな疑問に答えるのが『日本人と英米人 身ぶり・行動パターンの比較』(ジェイムズ・カーカップ、中野道雄/大修館書店)である。

 まずは、指のサインを例に取って見てみよう。恋人などを示したい時、親指や小指を立てる人はいないだろうか。一般に、この仕草は親指を立てた場合は“男性”を、小指を立てた場合は“女性”を意味する。友人などが見慣れぬ異性と歩いていたら、からかう気持ちで「これか?」と指を立てる人も居るかもしれない。さて、この“指を使って相手との関係を質す”というボディランゲージだが……実は、英米人には通じない。冗談半分の気持ちで英米人にこれをやったとしても、せいぜい首を傾げられるくらいだろう。また、拳を握った状態で親指だけを立てる動作は、日本では「good」や「OK」の意味になる。しかし、このボディランゲージは、元はイギリスの軍隊で使われていたもので、当初の意味は「勝利」「自信」といったものだ。これは、今日本で認識される意味とは若干ニュアンスが異なるだろう。なお、これらが通じない代わりにというわけではないが、人差し指を口の前に持ってきて「静かに」という意志を伝えるボディランゲージは、日米共通である。ちなみに人差し指繋がりの話だが、日本人は「私の事?」と自分を示したい時に人差し指を使うが、英米人は親指または手を使って自分の胸を示す。更に、英米人の場合は、自分の背後などを示したい時にも親指を使うとの事だ。何かを示す時に親指を使う人をもし見かけたら「英米人か?」とツッコミを入れてみてもおもしろいかもしれない。

 次に“微笑”を例に挙げてみよう。私達はどんな時に微笑をするのか。多くは、愉快な時や満足な時などだろう。また、微笑は相手に好印象を与えるという面でも有効だ。会話の相手が微笑を浮かべて、嫌な気分になった事がある人は少ないと思う。では、微笑というボディランゲージが持つ“好印象効果”は、文化を超えて有効なものなのだろうか? 答えはNOである。微笑をする事は、ある都市では適切なふるまいになるが、またある都市では「何がおかしい?」と詰問される事になる。しかし、とある地域では微笑まない人をして「何か怒っているのか?」と思われる。これらの事から解るのは、微笑が生み出す好印象効果はあくまで文化の一環であり、必ずしも万国共通ではないという事だ。笑顔はどんなシチュエーションでも使えるコミュニケーションツールだというが、それも時と場合と場所によりけりという事だろう。

 ギャグマンガなどでよく見かける動作“ずっこけ”も、日米で若干の違いがある。主に「あらら」と言いたくなるような場面でこの動作が出る事は共通しているが、倒れる方向が違うのだ。日本では、主には前につんのめるような形になる。つまり、前に倒れるのだ。これに対し、英国の場合はパンチをもらった時のように後ろによろけるような動作である。先述の通り、このような動作が出るシチュエーションは互いに似通っているのだが、それでもやはり倒れる方向などで差異が出る。こういった差異について考える事は、同じような動作でも、そこに込められた意味、また受け取られる意味は決して同じではないという事を再考する良い機会になるかもしれない。

文=柚兎