吉野家も使う「熟成肉」。業者次第で“腐る”キケンも…

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 なくてはならない飲食店。大半の店が誠実にやっている一方で、産地偽装、食品横流し、ブラックバイトなどネガティブなニュースも絶えない。そんな飲食業界の裏側を取材した。

◆日本の「熟成肉」は、言ったもん勝ち

 塩麹が流行れば右へならい、立ち食いが流行れば左へならう。ブームとなったキーワードにとりあえず乗っかるのが、我が国の飲食業界の特徴である。昨今の飲食シーンで広く定着している「熟成肉」もそのひとつ。

 牛肉業界のリーディングカンパニーである吉野家は、’14年4月から牛肉メニューの肉を熟成肉にチェンジした。吉野家HPに掲載されている解説コーナー「吉野家の考える『熟成』とは」には、「牛肉をじっくり熟成させながら解凍を行っています」「たんぱく質がうまみ成分であるアミノ酸に変化します」と書いてある。

 それって本当なのだろうか? 食肉の品質管理・流通事情に詳しい新保吉伸さんに、日本の「熟成肉」商戦の裏側を聞いた。

「商品を『熟成肉』と謳うために必要な規定を、当局や業界団体が決めているわけではないので、吉野家さんのように解凍する過程を熟成と呼ぶのも間違いではありません。ですが、ブームの中で『熟成』という言葉だけが独り歩きしている感がありますね」

◆NY流、ほんとうの熟成法とは

 かれこれ10年以上前から新保さんが手がけている熟成法は、赤身肉の本場ニューヨーク式のドライエイジング。大手飲食チェーンの熟成肉とは違い、手間もコストもかかる手法である。

「摂氏0度、湿度75%に保った特別な冷蔵庫内に肉を保管し、24時間態勢の送風でゆっくりと肉の水分を飛ばしていくんです。30〜60日を経た頃には、表面にびっしりカビが生えますが、これをトリミングすると独特の甘い香りとともに、うっとりするような美しい赤身肉が現れるわけです」

◆手抜き業者が”腐った肉”を出さないか不安

 こうして仕上げた肉は、各地の高級レストランから賞賛される逸品だ。ここに至るまでの苦労を振り返るように、新保さんは昨今の熟成肉ブームに苦言を呈す。

「恐れているのは、間違ったやり方で『熟成』させようとした業者が、『腐敗』した肉をお客さんに出して食中毒を起こすことです。その結果として『熟成肉=危険』のレッテルが貼られてしまえば、これまでのドライエイジング普及の努力が無駄になりかねません」

 さらに怖いのは、真空パック肉の熟成を試みるパターンだ。我が国の食肉の大半は、真空パックしたブロック肉の状態で流通している。いったんパックを開封すれば、いくら寝かせても熟成は起こらず、腐敗が進む一方だという。

「私がドライエイジングしている肉は、骨がついたまま。なぜかというと、肉は骨を外した瞬間から腐敗し始めるものだからです。肉の熟成は、骨付きの状態でなければ絶対にダメです。

 骨を外した肉を冷蔵庫で保管して熟成させようとしても、おいしく食べられる期間は短く、あとは腐っていくだけで、いずれユッケ事件の二の舞いになりかねない。熟成肉を手がけるお店は、見よう見まねではやってほしくないですね」

―こんな店で食べたくない![飲食業界]の裏側【1】―