小中学生の子どもを持つ親が、夏になると直面する問題とは…(※イメージ)

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 小中学生の子どもを持つ親が、夏になると直面する問題。それが、「プール授業での日焼け止め禁止」だ。皮膚科医からは対策を求める声も上がるが、「禁止」が続く。

「小学3年生の息子はアトピー性皮膚炎で、紫外線を浴びるとすぐに肌がガサガサになってしまいます。そこで、プールの授業で日焼け止めを使わせてくれないかと学校にお願いしたのですが、副校長先生に『水が汚れるからダメ』と言われてしまいました。ウォータープルーフでもダメなんですって……」

 2人の子どもを東京都渋谷区の公立小学校に通わせる女性(39)はこう話す。

「紫外線の害がこれだけ知られているのに、日焼け止めを禁止するなんて、おかしいですよね」(女性)

●対策で皮膚がんが減少

「夏は日に焼けて真っ黒」が健康な子どもの証しだった時代はとうに終わった。日本臨床皮膚科医会学校保健委員会委員長の島田辰彦医師は、対策の必要性をこう説く。

「過剰な紫外線に暴露されることは日焼けや免疫力低下を招き、長期的には光老化(シミやシワ)、皮膚がん、翼状片(鼻側の白目が黒目に入り込んでくる病気)、白内障などの誘因になる」

 島田医師によれば、フロンガスによるオゾン層破壊で紫外線が増えたことを受け、海外では1980年代から対策に取り組む国が増えてきた。

「オーストラリアは国をあげて子どもへの紫外線対策教育に取り組んだ結果、皮膚がんの発生が減少している」(島田医師)

 日本臨床皮膚科医会と日本小児皮膚科学会は昨年、「学校生活における紫外線対策に関する具体的指針」を共通統一見解として発表した。いくつかの実証実験結果を踏まえて、「耐水性」「ウォータープルーフ」表示のある日焼け止めは「プールの水質を汚濁しない」とし、必要に応じて子どもに使用を許可するよう求めた。

 そもそも、使用を許可しない学校があるのはなぜか。

●相談されたことはない

 多くの場合、日焼け止めの扱いは、設備や児童・生徒数などに応じて学校長が最終判断することになっている。制限される場合の主な理由は、「プールの水が汚れる」ということのようだ。日本学校保健会発行の「学校における水泳プールの保健衛生管理」に「一般的な日焼け止め剤を、無条件に全員が使用することを容認すると、プール水の汚れの要因になる」という記述があり、これを根拠とする関係者もいる。

 12歳の女児を持つ杉並区の女性(41)は一定の理解を示す。

「日焼け止めは塗ったほうがいいと思うけれど、子どもは過って水を飲んでしまうことも多い。安全のために使用を認めていないという学校の説明を聞いて、一理あるなと思いました」

 一方で、制限を緩める学校は増えつつある。

 川崎市教育委員会は今年4月、各学校に「耐水性であれば日焼け止めの使用を認めるように」と通知。48歳の男性教諭が勤務する市内の小学校でも、

「市教委の通達を受け、保護者の申請があれば使用を許可することになりました」

 意外だったのは、この男性教諭がこんな話をしたことだ。

「私自身や周囲の教員仲間が、保護者から日焼け止めの相談を受けたことはないんです。保護者は、考えていることをなかなか伝えてくれないんですよ」

 実際、さいたま市で2人の子どもを育てる女性(47)は、

「日焼け止めを塗っていいかと先生に質問したらダメと言われそうだから、プールのある日はこっそり家で塗っていた」

 と話した。

 保護者は学校とのコミュニケーションをあきらめているということだろうか。

 冒頭の女性は相談を重ねることで、「ラッシュガードに関しては個別に相談すればOK」の回答を引き出した。その後、担任が「こっそり塗ってきてもいいですよ」と耳打ちしてくれて、水泳の授業のある日の朝はウォータープルーフの日焼け止めを塗って送り出している。

 日焼け止め問題の陰に、コミュニケーション問題あり。双方、子どもの健康を考えてのことなのだから、話し合えばきっとわかる。(ライター・松田慶子)

AERA 2016年8月1日号