『英語版で読む 日本人の知らない日本国憲法』(KADOKAWA)

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 参議院選挙が与党の勝利に終わり、それまで息を潜めていた“改憲”論議が、再燃してきました。というのも、今回の参院選によって、憲法改正に前向きな自民、公明、おおさか維新、日本のこころの4党で議席数の3分の2を超えたため、改正法案の可決が現実的なものとなってきました。

 そこで、前回の記事「自衛戦争は合憲!? 英語版でわかった『日本人の知らない日本国憲法」』よりさらに踏み込み、禁断の「第9条1項の誤訳」部分を、『英語版で読む 日本人の知らない日本国憲法』(KADOKAWA)から紹介します。

 前回の記事を読んでいない方にあらためて紹介いたしますが、そもそも現在の憲法は、連合国軍最高司令官総本部(GHQ)の要求を受けた形で、1947年5月3日に、大日本帝国憲法の改正という形で施行されました。

よく知られているように、下敷きとして「マッカーサー草案」による草案を提示され、それを大幅に改訂してできあがったのが、現在の憲法。本書で切り込んでいる「英語版憲法」とは、このときに「GHQが読み、日本にOKを出したもの」、つまり、憲法を承認した人たちが読んだものです。

つまり、ここでいう英語版憲法とは、普通の翻訳版ではなく、「現行憲法のもう1つの姿」なのです。

 

それでは、憲法で最も大きな争点となっている「第9条第一項」を、GHQはどのように解釈していたのでしょうか。言語学的見地から、徹底解説します!(条文は難しいので、飛ばして解説を読んでください!)

ARTICLE 9. (1) Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order, the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of the nation and the threat or use of force as means of settling international disputes.

第九条 第一条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

 

現行憲法の問題点は、この太字部分にあります。

そう、日本国憲法の最も重要な箇所である、「戦争放棄」の文面に、英語と日本語でニュアンスが変わっているという、非常に恐ろしい事実が隠されているのです。

 まずは、この箇所の日本語版を整理してみましょう。

【日本語版】

 日本国民は、「国際紛争を沈静化するための手段として」、次の2つを用いることを放棄する。

1 「国権の発動たる戦争」

2 「武力による威嚇または武力の行使」

 ここまでは、皆さんが日本語版を読んで、普通に解釈する構造です。

さて、英語版ですが、これを文法構造に忠実に読むと、以下のようになります。

【英語版】

日本国民は、次の2つを放棄する。

1 「自ら進んで主体的に行う戦争(侵略戦争)」

2 「国際紛争を沈静化するための、武力による威嚇または武力の行使」

 

 日本語版と英語版を比較してみてください。あれ?と思った方、それは正解です。

 前回の記事では「war as a sovereign right of the nation = 侵略戦争」という解釈の違いを説明しましたが、もう1つ、大きな誤訳が隠されているのです。

 それは、「国際紛争を沈静化するための手段として(as means of settling international disputes)」の部分。

 日本語版では、「国権の発動たる戦争」と「武力による威嚇または武力の行使」の2つにかかっています。

 しかし英語版では、「武力による威嚇または武力の行使」に、「国際紛争を沈静化するため」がかかっており、「自ら進んで主体的に行う戦争」についてはかかっていません。さらに狭義では、「international dispute(国際紛争)」とは、国家間の戦争に至らない利害の不一致のことを指します。

 以上の流れから、やはり「外国人解釈」の場合は、自衛戦争は認められる、と解釈をされる可能性が高いと言えるのです。

 付け加えると、9条の基礎となったといわれるマッカーサー・ノートでは、

War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renouces it as an instrumentality for settling its disputes and even for preserving its own security.

(日本が自発的に行う戦争は、これを禁ずる。日本は、紛争解決の手段として戦争をすることが許されないばかりか、自国の安全のためにする戦争も許されない。)

 と、明確に自衛戦争を認めていませんでした。しかし、実際に施行された条文を読むことで、文脈的に、自衛戦争を認める方向で承諾した、とも解釈できます。

 

 日本国憲法は、GHQ(国際社会の代表)からの承認を得て施行された歴史がありますが、英文を読み解いていくことで、日本人が知らなかった「真の姿」が明らかになります。

 憲法改正の議論の前に、まず「現行憲法が本来どういうものか」について、英語版と共に考える必要があるのです。