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職場の歓送迎会に参加した後、残業のため会社に戻る途中に交通事故で死亡した男性(当時34)の妻が、国に労災認定を求めた訴訟で、最高裁は7月8日、二審判決を破棄して、労災と認める判決を言い渡した。

判決文などによると、死亡した男性は2010年12月、会社の歓送迎会に誘われ、残業を中断して会に参加した。男性は飲酒せず、他の社員を社用車で送り届けたあと、残業のため会社に戻る途中に事故で亡くなった。

一審と二審は「私的な会合で、業務とは認められない」として、妻の請求を退けた。最高裁では、歓送迎会は上司が企画したことや、同僚の送迎は本来上司が行う予定だったことなどから、「会社の支配下にあったというべき」として、一審と二審の判決を破棄して、労災と認めた。

最高裁が労災と認めたポイントは何だったのか。労働問題に詳しい白川秀之弁護士に聞いた。

●「労働者の実態を踏まえた妥当な判決」

「労災と認定されるためには、従業員が受けた被害が業務に起因するものであった(被災者は会社の支配下にあった)ことが必要です。今回の最高裁判決では、次のような事実を重視して、被災者は会社の支配下にあったと評価したようです。

・社長代行の権限を有する部長によって、期限の迫っている仕事をいったん中断し、終了後部長と共に仕事に復帰する形で参加を要請された

・従業員のほぼ全員が参加し、費用が会社の経費から支払われていた

・上司に代わって社用車で他の社員を送った、

・その際の経路も工場への経路から外れていなかった」

白川弁護士はこのように述べたうえで、背景には日本の会社特有の事情があると指摘する。

「日本の会社の特殊性として、職場の同僚等との酒食を共にする会合が非常に多い点が挙げられます。

これまでも、飲酒を伴う会合へ参加後、帰宅途中の事故の通勤災害が争われた事件はありました。

業務上の会合に接合しての懇親会であれば、業務性が認められるとした裁判例もあるようですが、否定的に考える事例が多いようです。

一審判決を見たところ、歓送迎会の不参加によって、労働者に何らかの不利益が生じるものでなく、任意参加の会合であったことを重視しているようです。

ただ、事実上のものであったとしても、上司から参加を要請されれば、断りづらく、出世に響くのではないか、と考えるのが実情だと思います。

今回は、飲み会に参加したいきさつなどを細かく評価をして、労災と認めました。労働者の実態を踏まえた妥当なものだと思います」

白川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年、弁護士登録。労働事件が専門だが、一般民事事件も幅広く扱っている。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会委員。
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/