愛一筋の真面目犬ミルキー

パピー時代

今から14年前、私の弟の家に1頭のⅯダックスがやって来ました。
ドッグショーでアメリカチャンピオンに輝いた祖父を持つこのダックスは、幼犬にも関わらず良い体格をしておりました。
毛色はピュアクリーム、男の子ですが名前は【ミルキー】と姪二人が命名し、女の子の様に可愛がられていました。
性格は賢くて大人しく、あまり悪戯もせず、まるで真面目が毛を生やしている様な子でした。
主に義理の妹と姪二人が面倒を見ていて、弟も仕事の休日を利用して世話に参加していたという、何処にでもある家庭の中で暮らしていました。

幼犬時代

それから4ヶ月経過し、ミルキーはすくすく成長して生後6ヶ月になっていました。
当時、私達家族と弟の家族は2世帯型の住宅に住んでおり、一階の間仕切り部分の1ヶ所に、行き来できるドアを着けてコミュニケーションを取れる様にしてありました。
弟夫婦は共稼ぎであり、姪達は二人は小学校に行っておりましたので、ミルキーは朝から夕方までお留守番の毎日でした。
そんなある日の事です。

ドアの向こうから寂しそうな小さな声で

1階階廊下のドアの向こうから、寂しそうな小さな声で『ワンワン』と吠える声が聞こえて来るではありませんか!
いわゆる寂しさからの【分離不安症】になっていたものと考えられます。
私は『きっと寂しいのだろうな、可哀想だなぁ、でも甘やかせたらいけないなぁ』と思い、しばらくの間見守っていました。

そんな事が数日続くと私の気持ちも限界に達して、犬の好きな私はとうとうドアを開放してしまいました。
解放されたドアの向こうから走って来るミルキーの目が輝いていたのを憶えています。

きっと安心したのでしょうね、そのまま我が家で寝てしまいました。
寝たり起きたり、自分の家に戻ったり我が家に来たりの繰り返しで家族の帰りを待ったものです。

若かりし成犬時代

生涯の伴侶犬ココとの出会い

それから2年が過ぎ、ミルキーは2歳の逞しい成犬に成長していました。
もともと多頭飼いの構想があった弟家族は、2頭目の同種犬の女の子を迎える事にしたのです。
名前は【ココ】。チョコレート・タンのMダックスでした。
身体が小さくて目がクリクリしている可愛い子犬が、突然ミルキーの前に現れたのです。

見知らぬ子犬を見たミルキーは、驚きのあまり興奮して涎をダラダラ垂らしていました。
これがミルキーの生涯の伴侶犬ココとの最初の出会いです。

初めてココと対面したミルキーはココをよそ者と判断し、声が枯れるくらい吠えました。
この先どうなるのだろうと心配していたのですが、そんな心配は無用でした。

ココが来た次の日から、後をストーカーの様に追いかけるミルキーの姿がありました。
どうやらミルキーはココの美貌にメロメロになった様です。
それからは何処に行くのも2ワンは一緒。

散歩に行ったら他の女の子のワンコに出会っても見向きもせず、ただひたすらココと並んで歩いたと姪から聞かされた記憶があります。
よほどココが好きだったのでしょうね。

この仲良し夫婦は、ミルキーが完全に尻に敷かれる状態で、逆にココがミルキーにマウンティングする事もありました。
ココは先住犬のミルキーよりも立場が上だと思っていたのでしょう。
もしかしたらミルキーとココの2世誕生があるかと思い、産まれたら1頭譲ってもらおうなどと淡い期待をしていたのですが、繁殖させないと言う事で2ワンは避妊手術を受けたのでした。
どんな子供が生まれるのか見たかったので少し残念な気がしました。
産まれたらきっと可愛い子だったろう思います。

おしどり夫婦の間に黒い外敵が現れる

それから瞬く間に2年の月日が流れました。
弟の家族は子供が大きくなった事で、新築して隣町に引っ越して行きました。
ミルキーも4歳の円熟期を迎え、2歳のココと4人の家族と共に幸せに暮らしていました。
その頃ですが、ミルキーとココの存在が切っ掛けとなり我が家でも犬を迎える事になったのです。
通称【黒い悪魔】と呼ばれている黒いハイパー犬、スキッパーキのベジータです。

ベジータは子供の頃から悪戯好きで、私を毎日の様に困らせたものでした。
生後5か月になりましたので、ミルキーとココに会わせるため弟の家に遊びに連れて行った時の事です。
結果は案の定、ベジータはミルキーには目もくれずココをしつこく追いかけ回したのです。
あまりにもしつこいので、とうとう嫌われてしまいココは姪の膝に避難てしまいました。
ココが姪の膝から降りて遊ぼうとすると、またあの黒い奴がココのお尻の匂いを嗅ごうとして追いかけ回しました。

それをじっと見ていたミルキーは、ココのピンチと思ったのでしょう、突然ベジータの前に出て、牙をむき出して唸ったのでした。
あの大人しいミルキーが!
あんな顔を!!

初めて見たミルキーの怒りの顔は迫力があり、さすがのベジータも引いてしまいココを追うのを止めてしまったと言う思い出があります。
愛がミルキーの心を鬼にしたのです。
自分のパートナーを必死に守ろうとしたミルキーの態度は、それは立派なまものでした。
ココに対する強い愛情がそうさせたのでしょう。
そんな事があって、ミルキー&ココとベジータは最期まで相容れる事はありませんでした。

シニアになって

1年も会っていないのに忘れない

2ワンは家族の深い愛情によって育てられ、ミルキーが10歳、ココが8歳となっていました。
ミルキーとココにしばらく会っていなかったので、1年ぶりに犬好きだった生前時の父と一緒に会いに行きました。
ベジータは勿論お留守番です。
何と言っても2ワンに嫌われていますからね。
『もう忘れられてしまったかなぁ』と思いつつ訪問したのですが、それは予想に反して大喜びされました。
2ワンとも尻尾をブンブン振りながら父と私に嬉しさを爆発させてくれました。
1年も会っていないのに忘れていないのですね!

そしてミルキーは父の横に寄り添って動こうとしません。

ココは私のお腹によじ登り、私の顔が【ガビガビ】になるまで舐めました。
きっと心行くまで舐めたのでしょう。

病魔が襲う

ここからは弟から聞いた話になりますが、10歳を過ぎたミルキーはついに病魔に襲われる事になります。
それはダックスやコーギーがかかる【椎間板ヘルニア】です。
それからの2年間は治っては再発の繰り返しだったそうです。
痛くて、さぞや辛かったろうと思うと、胸が締め付けらる思いに駆られたものでした。
それからというもの、食欲も徐々になくなってガリガリの状態になったそうです。

この頃の私は仕事が忙しく、ミルキーやココに会っていませんでしたので、2ワンがどの様になっているのかまったく知りませんでした。

ついにその時が

病魔に襲われて2年、ミルキーは12歳になっていました。
その頃は食事も殆ど取れず、ほぼ寝たきりの状態になっていたそうです。

その日も姪がいつもの様に就寝時に、ミルキーを自分の寝室に抱いて運び、就寝したそうです。
そして翌朝、姪が目を覚ますと・・・

ついにその時が訪れたのです。
それは何の前触れもなく・・・

ミルキーは【夜空のお星さま】になりました。
たぶん夜中に逝ったのでしょう。
その時ミルキーは目を開けて冷たくなっていたそうです。
きっと愛するココや家族の皆にお別れがしたくて目を開けたのではないでしょうか。
それを聞かされた私と父は、止め処もなく溢れだす涙を抑える事が出来ないくらい泣きました。
現在は近隣のペット霊園で静かに眠っています。

最後に

ミルキーは私たち家族にとっても、愛犬ベジータと同じくらい可愛い存在でした。
5年間も同じ屋根の下で暮らしたのですから。
12歳と言う、少し早めの寿命だったかも知れません。
しかし彼は、家族や一途に愛したココと生活できたのですから、きっと幸せだったと思います。

ココも今では12歳となり、大きな病気もなくとても元気で暮らしているそうです。

『ココちゃん、たくさん長生きするんだよ』
『ミルキーが天国でココちゃんを見守ってくれているからね』

そして天国のミルキーへ、『心優しいミルちゃんよ、何も心配しないで安らかに眠っておくれ』
『数えきれない癒しをありがとう』