ショップのようなオフィスには、「サガプライズ!」の実績がずらり

♪S・A・G・A、サガ〜と、タレントのはなわが自身の出身地を自虐まじりに歌ったのは2003年。あれから13年が経過した今、佐賀県が超人気コンテンツと手を組んだあるプロジェクトが注目を集めている。

そのプロジェクトの名前は「サガプライズ!」。れっきとした自治体・佐賀県が手掛ける、情報発信による地方創生プロジェクトである。正直地味な印象がぬぐえない(失礼!)佐賀県が、どうして「サガプライズ!」のような攻め攻めな姿勢のプロジェクトをスタートしたのか、プロジェクトリーダーの金子暖さんとプロデューサーの岩本麻衣子さんに話を聞いた。

佐賀の魅力を都市部で話題にすることで、地元へフィードバック

アニメやゲームだけではなく、宝島社や森永製菓などともコラボした

金子「佐賀県の魅力ある地域資源を広めるためにどうすればいいか、というところからスタートしました。県内50の団体や事業者からヒアリングし、ディスカッションを重ね、ゆるキャラや動画作成などさまざまな案が挙がった中から、まず都市部への情報発信を積極的に仕掛けていこうとプロジェクトがスタートしました」

岩本「佐賀県はアンテナショップというものを持ってないんです。北海道や沖縄のように有名ではないので、いかに『知られていない』を『知られる』ようにしていくかを考えています」

これまで実現したコラボ先は、爆発的な人気を集めるアニメ「おそ松さん」や世界中で熱狂的ファンを持つ任天堂のゲーム「Splatoon」など、どの自治体や企業も喉から手が出るほどコラボしたいコンテンツばかり。これは代理店や仕掛け人による大掛かりなプロジェクトの臭いがするが......。

金子「いえいえ、すべて私たちプロジェクトチームの4名で毎朝の会議で、今これがおもしろい、これが流行っているなどネタを探し、先方に持ちかけ、どんなことができるかを決めているんですよ。メンバーには、"話題になる企画を!"と千本ノックのようにハッパをかけています」

岩本「企画によって異なりますが、私たちからお話を持ちかける企画が多いですね」

これまで10を超えるコラボ企画を展開してきた「サガプライズ!」だが、大きなターニングポイントになった企画があるという。

金子「2013年に実現した、スクウェア・エニックスと組んだ『Romancing 佐賀』ですね。これはスクエニさんから持ちかけられた企画でしたが、県の職員にとってゲーム会社というものは縁遠い存在ですし、どんなことができるかわからない。実質的な動き出しまで半年くらい準備期間がかかりました。まず第1弾として『サガ』シリーズのイラストレーターである小林智美さんに直接有田の窯元に出向いてもらい絵付けをした直筆の大皿の展示や、キャラクターが描かれた有田焼の販売などのイベントを東京で実施。大盛況を受けて、その後、今度は佐賀で『Romancing 佐賀2』の開催となりました。この夏には『Romancing 佐賀3』として、佐賀県立美術館で展覧会なども行われます。2以降は、私たちの手を離れ、地元の県の観光課が自主的に主導した企画で、サガン鳥栖にJR九州など地元企業も巻き込んで成功できたことも非常に有意義に感じています。いろいろな企業との関わりの中で生まれた人脈を佐賀にフィードバックできた点も企画の意義がありました」

これまで順調に展開してきているように思える「サガプライズ!」だが、中には実現に至らなかった企画もあるという。

金子「コラボ先と対等な関係でプロジェクトを進められるという点と、佐賀となんらかの関わり、ストーリーがあるという点はこのプロジェクトの必須事項。『サガ』繋がりの『Romancing 佐賀』、呼子名物の『イカ』繋がりの『Splatoon』、唐津の『松』繋がりの『おそ松さん』と、中には強引に思われるものもあるかもしれませんが(笑)、佐賀でやる意味があるものをやっていくというルールだけは守っています。後は、とにかく都市部で話題になること。都市部で話題になれば、その話題ぶりは佐賀にも伝わりますし、獲得したファンが佐賀を訪れることで、外貨獲得にも繋がる。そうして、課題や手法を地元にフィードバックしていくサイクルを作っていくのが、私たちのプロジェクトの使命です」

「Splatoon」「おそ松さん」という最先端コンテンツと絶妙なタイミングでコラボ

「Splatoon」とのコラボでは、グッズが即完状態に

「Splatoon」とのコラボは、5月のゲーム発売から加速度的に人気の高まったクリスマスシーズンに実現した。ツボを外さないタイミングでのイベント開催で素晴らしいが......。

金子「『Splatoon』とのコラボ『Sagakeen』は、うちのメンバーが『Splatoon』が面白いとネタ出ししてきて、任天堂に持ちかけた企画です。『Romancing 佐賀』という具体的な成功例を提示できたので、スピーディに実現に至りました。11月に東京でコラボショップを展開、ゲーム内フェスでも『山の幸VS海の幸』としてコラボし、12月には呼子町でのイベントを開催しました。呼子町は電車も通ってない人口4900人ほどの町なのですが、期間中13000人もの来場者数を記録しました。呼子の皆さんもこのイベントをきっかけにゲームを買ってやってみたという人もいて、協力的に企画に参加してくれました」

7月25日〜8月28日に唐津市内で開催される「さが松り〜佐賀も最高!!!!!!〜」は大きな話題を呼ぶこと間違いなし

アニメが終了し、ファンの飢餓感がMAXな時期での「おそ松さん」コラボも絶妙だ。

岩本「『おそ松さん』とのコラボ『さが松り〜佐賀も最高!!!!!!〜』は、まず6月30日から7月4日まで4日間東京で佐賀名物とおそ松さんのコラボメニュー満載の『さが松り居酒屋』を展開。定員の20倍もの応募をいただき大盛況でした。『さが松り』は、7月25日より唐津市で今度は開催されます。唐津くんちや虹の松原など佐賀名物とコラボしたおそ松さんのオリジナルイラストがラッピングされたバスが唐津市内を走り、名所を回るスタンプラリーで非売品ポスターがもらえるなど、ファンならずとも五感で佐賀を満喫できるイベントがいっぱい。コラボメニューやコラボグッズなども期待を裏切らないイベントになると思います」

金子「初めに東京でイベントを開催し、その様子がSNSで拡散。その後、時を置かずして地元・佐賀でイベントを開催するというサイクルを意識して企画しています。最初から佐賀でイベントとなると、たとえファンの方でもハードルが高い。東京で実際に体感した人やSNSでどんなイベントか情報を手に入れた人がいるほうが、佐賀まで足を運んでくれますから」

情報発信スパイラルの完成で目指す次なる動き

「Splatoon」に「おそ松さん」と一番最先端なところと手を組んできているが、お役所的な苦労はないのだろうか...。

金子「『おそ松さんというものがありまして...』という説明から始めまして、通常の稟議と同じルートで承認を取り、山口祥義・佐賀県知事にも、イヤミの"シェー!"のポーズで公式サイトに登場してもらうなど、全面協力を受けてます!(笑)」

岩本「7月22日から青山通りで開催中の佐賀の干潟の潟泥に浸かれる『GATA-BAR』にも、山口知事に浸かっていただきました(笑)。このBARは、"泡パ"を手掛けられた「アフロマンス」とコラボしたもので、有明海の干潟の泥を青山に運び、潟泥のプールに浸かってフードやドリンクを楽しんでもらうという、パリピ注目のイベントです。」

金子「潟泥に浸かって地酒や佐賀名物を楽しむなんて、佐賀でもなかなかできない体験なので、ぜひ皆さんに体験していただきたいです。有明海というと、むつごろうが有名ですが、わらすぼという魚の珍味もオススメ。このわらすぼは、映画『エイリアン』のモデルになったとも言われる、なかなかな見た目の魚なのですが、地元でもなかなか食べられない逸品なんですよ」

岩本「佐賀の日本酒は、お米の甘さを満喫できるものが多いです。地酒や佐賀海苔の販売もあるのでお立ち寄りください」

こうなると今後の展開が気になるが......。

金子「現在計画中のものがいくつかありますが、企業秘密ということで(笑)。年内に2本くらい実現できればと考えています。次々に新しい企画を提供し、話題になっていくよう仕掛けていかなければならないので大変なことも多いです。数多くの都道府県の担当者が視察に来られましたが、皆さん面白いと興味は持ってくれるものの、いざ実現することを思うとう〜んと考え込まれていました(笑)」

岩本「東京での『さが松り居酒屋』に、東京在住の佐賀出身の方がお店の中を一目見たいと来られました。そうした東京在住の佐賀出身者が、東京で佐賀のこんなことが人気だよと、地元の家族やお友達に伝えてくれると、それがまた佐賀でも広まって新しい動きになる。地元企業も東京出張の際にこのオフィスに寄られることが多くなりましたし、うちもこんなことをやりたいと手を挙げる市町もでてきました。そうした反応もうれしいですね」

金子「首都圏など都市部での情報発信が、さまざまな形で地元にフィードバックされ、佐賀での新たな動きに繋がる。そんな情報発信スパイラルをしっかり回すことで、地方創生を推し進めていくことが、『サガプライズ!』の意義ですから」

「サガプライズ!」プロジェクトリーダー・金子暖さん(右)とプロデューサー・岩本麻衣子さん(左)

話を聞いた場所は、東京・南青山にあるサガプライズ!プロデュースオフィス。自治体の東京事務所というと、永田町や丸の内などもっとビジネス街的な場所にありそうなものだが、このオフィスはその立地や、一見雑貨ショップのような雰囲気も含めとても攻めている。いたるところに、これまで展開してきたコラボで生まれたグッズが飾られたオフィスでは物販などは行っていないが、佐賀の情報発信基地としてしっかり機能しているようだった。現に取材中にも、ランドセルを背負った小学生が、そのオープンな雰囲気に誘われたのか、見学したいと入ってきた。佐賀県を知らないという小学生さえ何か気になってしまうようなそんな雰囲気の中で生まれる、"おもしろく""話題になる"プロジェクトは、今後も注目を集め続けそうだ。