南シナ海をめぐり常設仲裁裁判所で「全面敗訴」した中国が、しきりに日本をやり玉に挙げている。日本政府は中国が国内引き締めのため、東シナ海で緊張を高める恐れがあると警戒している。資料写真。

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2016年7月22日、「江戸の敵(かたき)を長崎で討つ」。意外な場所や筋違いなことで、以前受けた恨みの仕返しをすることを例えたことわざだ。南シナ海をめぐり常設仲裁裁判所(PCA)で管轄権を否定され、「全面敗訴」した中国。日本政府は中国が国内引き締めのため、日本をやり玉に東シナ海で緊張を高める恐れがあるとして警戒を強めている。

中国メディアによると、中国外務省の劉振民次官は判決翌日の13日の記者会見で、「判決は紙くず」「無効で拘束力もない」などと猛反発。PCA仲裁人(判事に相当)5人のうちの4人が当時、PCA所長だった柳井俊二・元駐米大使によって任命されたことにわざわざ言及し、「今回の仲裁裁判は完全に柳井氏が操っており、仲裁裁判の過程においても影響を与えた」と、日本に批判の矛先を向けた。

中国国営中央テレビ(CCTV)は判決後、柳井氏と安倍晋三首相との関わりを報道。柳井氏が座長を務めた有識者懇談会が首相に集団的自衛権の行使を容認すべきだとする報告書を提出した経緯に触れ、「PCAは日本の右翼が独断で組織し、公平性に大きな欠陥がある」と非難した。

さらに、CCTVは親中派とされるカンボジアのフン・セン首相の発言を紹介。「この茶番劇の裏には終始、日本の影があった。首相は駐カンボジア日本大使がなぜ事前に結果を知っているのか疑問を抱いた」などと伝えた。一連の報道について、日本メディアは「裁判所の判断には日本の意向が反映されたと不当性を強調し、国内の不満が習近平指導部に向かうのをそらす狙いとみられる」とも解説している。

判決後の対応について、中国軍の孫建国・中央軍事委連合参謀部副参謀長は「やむを得ない状況下で国家主権と権益を守るための最後の決定的な役割を発揮しなければならない」と言明。南シナ海の権益確保のために軍事力を使った強硬手段を取る構えを示した。中国海軍の呉勝利司令官も中国を訪れている米海軍制服組トップとの会談で、「中国海軍はいかなる軍事挑発も恐れない」と述べ、軍事的衝突も辞さない姿勢を見せた。

しかし、判決を無視して南シナ海で新たな行動を起こした場合、国際社会から「無法者」のレッテルを貼られかねない。その意味でも、国内対策を含め、東シナ海は力を誇示する格好の舞台になる。

東シナ海では判決を控え、6月9日には沖縄県・尖閣(中国名・釣魚島)諸島の接続水域を中国軍艦が初めて航行。同15日には鹿児島県・口永良部島近くで中国軍艦が領海侵入するなど、中国の活動が相次いだ。今月に入ってからも、5日、18日の2回にわたり中国海警局の公船が尖閣諸島の領海に侵入。侵入は今年19回を数える。

日本政府は、中国による南シナ海での軍事拠点構築と尖閣諸島の領有権主張は密接に関連していると判断。判決を不服とする中国が尖閣諸島周辺の東シナ海でも活動を今後、活発化させるとみて警戒を強め、米国と共同歩調を取る一方、フィリピンなど南シナ海周辺国との連携も強化し、中国の強引な海洋進出を抑止する方針だ。(編集/日向)