中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が本格的に動き出した。日米等はその運営内容等の不明さに若干の政治的思惑もあってか、中国側の熱望にも拘らず目下参加を見合わせ注視といった状況である。資料写真。

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中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が本格的に動き出した。AIIBには目下60カ国近くが参加、更に20カ国以上が参加に興味を示し、日米主導のアジア開発銀行(ADB)の参加国・地域を上回る勢いであるという。一方、日米等はその運営内容等の不明さに若干の政治的思惑もあってか、中国側の熱望にもかかわらず目下参加を見合わせ注視といった状況である。

中国としては将来万事において世界をリードするという「中国の夢」実現の為には現在の日米に主導権を取られたアジア開発銀行(ADB)では自己の意見が通りにくく、主導権を取れぬとみて、“手続きも煩わしく、使い勝手が悪い…”等を理由にADB業務を補完或いは改善するということでAIIB設立の音頭を取ったというわけである。とは言え、新規開店のAIIBとしても各国からそのスタッフの質量、審査、運営方法、採算面等々につき疑問視され、又資金、信用力の面からも日米には是非参加して欲しいのが本音であろう。

1980年代の中国において、改革開放政策の深化により、外資も中国企業との合弁を条件にリース業が認められた。金融業界として初の試みであった。しかし、これら合弁リース会社は軒並み苦戦を強いられた。人間関係、情実を殊更重んずる故、“コネ社会”或いは“関係(クワンシー)社会”と言われ、時には「法治」より「人治」が優先する社会と揶揄されるお国柄の中国である。中国側パートナー紹介のリース案件には少なからず“関係(クワンシー)案件”が含まれており、外資側の審査基準が無視されることが続出したのである。“関係”や“政治的思惑”が優先されると審査がゆがみ、経営が正常化しなくなるのは必然である。

“関係社会”の中国が主導するAIIBでは、世界を相手といっても、“関係”が“政治的思惑”に変わるのみで同じ様なことになるのでは…。以前の中国合弁リース案件等で苦労した企業人が懸念するのも無理はなかろう。ADB等に比し“使い勝手が良い…”ということの中に審査基準が甘いといった別の意味はないだろうか。純粋に発展途上国向けの支援金融機関である、と国際社会が認める様な組織になるのであろうか。AIIB融資により、融資先国から感謝され中国の評価は高まるかもしれないが、AIIBといえども採算性には十分配慮せねばなるまい。

当面は、国際金融機関としての審査等を含む運営ノウハウの欠如や少ないスタッフ等数多くの案件を熟す力量不足から中国独自の国益や世界戦略、政治色等を控えおとなしく他の国際金融機関との協調融資、共同作業という形をとるとみられるが、いずれ種々運営ノウハウを学び取った暁には、“中国色”を更に前面に出したAIIBとなる可能性も十分考えられるであろう。

日本企業のプロジェクト参加の機会が増えるということから、日本の経済・財界の一部からも日本のAIIB加盟への要望があるが、加盟国企業が必ずプロジェクトに参加できるという保証はない。そこには当然競争入札がベースとなるであろうし、又そうでなければならない。その意味では機会はあっても受注まではなかなか大変であることには変わりはない。それならば、日本企業の立場から言えば、むしろ国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(JETRO)、貿易保険制度等を更に強化し、円借款等日本独自の経済支援を充実増強させ、時にタイドローン等で日本企業の確実受注の方策を練る方がよい、との意見も出てきて当然であろう。

将来何らかの情勢の変化で日本が加盟することになったとして、人事問題をはじめ、中国の強引な政治的思惑案件や業者選定等に嫌気がさした欧州主要各国が逃げ出し、或いはAIIBが自分の思惑通りにならなくなったとして言い出しっぺの中国が手を抜き、気が付いたら資金回収や不良債権処理等経営立て直しに汗水垂らし必死に頑張っているのは“クソ真面目な”日本のみであった、といった日本にとっての“悪夢”とはならないだろうか。AIIBの5年先、10年先を見てみたいが、老婆心のみが先走る。

■筆者プロフィール:岡田郁富
長年日本の大手総合商社にて中国ビジネスに携わり、機械、プラント類の輸出をはじめ中国現法の責任者として数多くの対中投資案件を手掛け、商社退職後は主として中小企業向けに中国ビジネスアドバイザーを務める。ビジネスでの往来や長期滞在等を含め50年程に渡り中国関連に係り、豊富な経験を持つ