まず、一過性脳虚血発作というのはどんな病気なのか。
 「脳に行く血液の流れが悪くなり(脳虚血)、様々な神経症状が出現します。ただし、大半がすぐに自然とよくなり、症状もなくなる。完全にもとの状態に戻ってしまうということです」(専門医)

 しかし、短時間の障害とはいえ、症状を調べるとその内容はかなりひどい。片側の手足や顔のマヒなどの運動障害、しびれや感じ方が鈍くなるなどの感覚障害、さらに呂律が回らなかったりの言語障害なども起きる。
 「片方の目が見えにくくなる視力障害(一過性黒内障)なども起きることがあります。いずれも脳血管にできた血栓が一時的に詰まって起きる脳梗塞と同じ症状が一時的に表れ、血流の再開とともに、すぐに消えるのが特徴とされます」(同)

 東京都多摩総合医療センター血液内科の担当医はこう説明する。
 「症状が出る時間は、多くは1時間以内で、通常20分程度。数時間続いた場合には、約半数が脳梗塞を起こしています。症状が出ている時間が短いため放置されやすいものの、この時点できちんと治療すれば本格的な脳梗塞を防げるのです」

 前述したような症状が出た後、すぐに治療しない場合は約3分の1が発作を繰り返し、約20%は90日以内に脳梗塞を発症するという。中でも最も危険度が高いのは、発作後48時間以内に発病した時だ。
 「しかし最近では、脳梗塞の発症を臨床的特徴から予測できるようになりました。注目する特徴の5項目の頭文字から名付けた“ABCD2スコア”といものが用いられます」(同)

 A(age)は、年齢が60歳以上…1点、B(blood pressure)は血圧の上が140以上、または下が90以上…1点。C(clinical features)が臨床症状として片側にマヒがある…2点、マヒはなく言語障害…1点。D(duration)は症状の時間が60分以上…2点、10〜59分…1点と、糖尿病(diabetes)…1点。
 これらの合計点数が高いほど、脳梗塞の発症率が上昇する。例えば、7点では2日以内が約8%、30日以内が約17%、90日以内が約23%となる。
 「ただし一過性脳虚血発作には、脳梗塞と同じような緊急を要する治療が必要になる場合があります。そのため、普段から脳梗塞を適切に治療できる病院などの医療機関を調べておく必要がある。受診には神経内科が適していますが、脳梗塞を診ていない病院もあるからです。日本脳卒中学会のホームページには、脳梗塞を専門に診る医師がいる『脳卒中学会認定研修教育病院』の一覧が掲載されています」(前出・専門医)

 一過性脳虚血発作の時の検査については、MRIとMRA(血管撮影)で脳梗塞発症の有無と脳血管の狭窄部分を調べることができる。
 血栓ができる原因部位で最も多い頸動脈(首)は、超音波検査を行う。血栓が心臓から飛び血管が塞がれる疑いがある場合には、心電図で心房細動が起きていないかを確認するという。
 「その際、治療の目的は脳梗塞予防になる。血栓の原因が首や脳にあれば、抗血小板薬、心臓に原因あれば抗凝固薬の服用を始めます。ただし、頸動脈が70%以上狭窄していれば、血管内治療でステント(拡張筒)を留置し、動脈内膜をきれいにする手術を行うことになります」(医療関係者)