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政府が2017年度からの導入を検討している、所得に連動して月々の返済額が決まる奨学金制度について、日弁連は7月14日付で文部科学大臣などに意見書を送付した。返済者の視点に立った議論が不足し、問題点が多い制度だとして、利用者の負担と不安が軽減されるよう検討を求めている。

新制度については今年3月、有識者会議が制度の方向性をまとめ(第一次まとめ)公表した。現行制度では収入にかかわらず返済額は一定だが、新制度では収入が少ない人は返済期間が長くなる代わりに、月々の返済額も少なくなる所得連動型だ。利用者は現行制度と「所得連動」が選べるようになる見込み。日弁連は、制度の導入時期から逆算して「第一次まとめ」を実質的な制度案だと見ている。

所得連動型の返済自体には日弁連も賛成の立場だ。しかし、「第一次まとめ」では、奨学金の回収が重視されるあまり、本来の目的である返済者の負担軽減につながらない可能性があるとしている。

●所得ゼロでも月々2000円の支払いを求める

日弁連が挙げている問題点のひとつが、「最低返還月額」の存在だ。新制度は所得連動とはいうものの、所得がゼロの人など低所得者にも最低月2000円の返済を要求する見込み。

「たかが2000円」と見る向きもあるだろうが、意見書の取りまとめにかかわった岩重佳治弁護士は、「奨学金問題の相談現場では、2000円が数日間の家族の食費という家庭もたくさんあります」と話す。「(第一次まとめには)現場の声がまったく反映されていません。そもそも所得ゼロの人にどうやって返済しろというのか」

現行制度同様、年収が低い人は、返済の猶予を申請できるが、日弁連はこの猶予制度にも「決定的な欠陥」があるとしている。まずは、猶予が認められるのが通算10年までである点だ。10年を超えれば、どれだけ年収が低くても返済を始めなくてはならない。さらに、申請をしていないと猶予は認められず、一度延滞が発生すれば、延滞を解消しない限り、猶予申請ができない。返せないから延滞が発生するのに、救済されずに社会問題になっている。そもそも、猶予が認められるかどうかは、日本学生支援機構の裁量だという。

日弁連は、返済困難者に対する議論が十分ではないとして、猶予年限の廃止や返済者目線に立った柔軟な制度設計を求めている。

●海外では一定の赤字を許容しているが…

海外の「所得連動」型では、返済期間の期限を設けていることが多く、たとえばイギリスでは30年間または65歳までの返済となっている。当然、完済できない人もおり、一定の赤字が許容されている。

有識者会議でも期限を設けることが検討されたが、回収額が多くなることや、期限を設けるには法改正が必要なことから、障害などの例外を除いて死ぬまで返済する案が採用された。第一次まとめには、このほかにも結婚して主婦や主夫になった場合は、被扶養者の収入から返済することなど、回収額を増やすための規定がもうけられている。

奨学金をめぐっては、先の参院選で返済を伴わない「給付型」の導入が争点のひとつになった。医療費などが増える中、限られた財源をいかに奨学金に割り振るか、政治の判断に多くの国民が注目している。岩重弁護士は「赤字をなるべく出さない制度設計の中で(現在の)問題が起きている。奨学金は赤字を出さない制度ではないはず」と奨学金の拡充を訴えている。

(弁護士ドットコムニュース)