『ファインディング・ドリー』 さかなクンが思わず「ギョギョッ」と唸ったシーンは?
日本でも大ヒットした『ファインディング・ニモ』のスタッフが再結集し、製作された待望の続編『ファインディング・ドリー』。
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7月16日(土)より公開されたこの話題の感動ファンタジーで、海洋生物監修を担当したさかなクンにインタビューしました。
『ファインディング・ドリー』の主人公は、前作でカクレクマノミの子供のニモのピンチを救ったナンヨウハギのドリー。
何でもすぐに忘れてしまう彼女が、マーリンとニモの父子やカメのクラッシュ、新しい仲間の7本足でミズダコのハンク、ジンベエザメのデスティニーらの協力を得ながら、“家族”を探して大冒険を繰り広げる姿が描かれます。
そんな超話題作の日本語海洋生物の監修をしたのは、大の魚好きとして知られ、国立大学法人 東京海洋大学名誉博士/客員准教授のさかなクン。
そんなさかなクンに、映画を観た感想はもちろん、大好きな魚や好きな魚の食べ方からお気に入りの水族館まで、魚に関することをまとめて全部聞いちゃいました!
ギョッ、これはひょっとして…『ドリー』を観ていちばん唸ったシーン
Q1:海洋生物に詳しいさかなクンが、『ファインディング・ドリー』を観ていちばん唸ったシーンはどこですか?
A1:全部すギョいというところではあるんですけど、ドリーちゃんのお父さんとお母さんがあることをしているシーンです。
あのシーンを観たときに、ギョッ、これはひょっとして…ってピンとくることがあったんです。
奄美大島に「アマミホシゾラフグ」という体長10センチぐらいの可愛いフグがいて、そのフグちゃんが産卵期になりますと、何もない海底の砂地に綺麗な幾何学的な絵を描くんです。
いままでは「ミステリーサークル」と呼ばれて、いったい何でこんなすギョい絵が毎年ある時期になると海底にできるんだろう?って思われていたんですけど、それがそのフグのオスがメスを招くために描く絵であることが最近になって分かったんですね。
あのシーンでは、「アマミホシゾラフグ」ちゃんの「ミステリーサークル」の絵にすギョく似ているなと思って感動しました。
ハラっと泣きそうになったシーンはいっぱい
Q2:いちばん笑ったシーンはどこですか?
A2:最後のシーンでとても笑えるところがあるんです。
ネタバレになるので詳しいことは言えないですけど、あそこは音楽もいいですね。
Q3:それでは逆に、いちばん泣きそうになったシーンは?
A3:ハラっと泣きそうになったシーンはいっぱいありました。
前作の『ファインディング・ニモ』のときは、みんなが力を合わせる網のシーンがすごく泣けたんですけど、今回はラストとドリーが家族を思い出す回想シーンにグッときました。
お魚の話なんですけど、自分の小さいときのことを思い出したりして、回想シーンはよかったですね。
映画に登場するキャラクターでいちばん好きなのはどの子?
Q4:本作の海洋生物はそれぞれの習性をちゃんと取り入れて描かれていますが、さかなクンがその習性をいちばんうまく利用しているなと思われた海洋生物はどれですか?
A4:タコのハンクさんですね。
最初、猫に擬態していたハンクが元の姿に戻ったときは斬新だなって思ったんですけど、鉢植えやいろいろな物に化けて、「海の忍者」と言われているタコちゃんの特徴を非常に巧みに表現されていたのでビックリしました。
海の中では驚くほどのカモフラージュ術を持っていますし、ハンクさんほどではないですが、実際のタコも海洋生物の中では地上で意外に長時間元気でいられる特徴があるんですよ。
Q5:ジンベエザメの女の子、デスティニーちゃんは泳ぐのが下手ですけど、泳ぐのが下手な魚なんているんですか?
A5:はい。お魚も人と同じです。
人は「個人差」、魚の場合は「個体差」と言いますが、すごくしなやかに泳ぐお魚ちゃんもいれば、ドンくさいな〜って思っちゃうぐらいヘナヘナ〜とした泳ぎをする魚もいますし、食べ過ぎて戻しちゃう魚もけっこういます。
ジンベエザメちゃんも、個体差として身体の水玉の模様が一匹一匹違うことで知られています。
ですので、研究者の先生方がシンベエザメちゃんを見分けるときには、模様の配列とか大きさを見るんですけど、しなやかに泳ぐジンベエザメちゃんもいれば、穏やか〜な子もいるし、かなり俊敏な動きをするジンベエザメちゃんもいます。
それこそ通常はプランクトンを食べている大人しいお魚とされていますが、テレビのドキュメンタリーで大きなお魚から身を守るためにジンベエザメちゃんのそばに集まってきたイワシちゃんの大群を、ジンベエザメちゃんが振り向きざまに大きな口を開けてガバッと全部食べちゃう映像を観たことがあって。
そのときはイワシちゃんは何を信じて生きていけばいいの? ジンベエザメちゃんにも裏切られて、可哀想って思いましたけど、そんな驚くべき俊敏さも持っているんです。
Q6:映画に登場するキャラクターでいちばん好きなのはどの子ですか?
A6:タコ好きですので、やっぱりハンクさんです。
彼が活躍するシーンでは「タコ、来た〜! やった〜!」と思って、嬉しかったですね(笑)。
7本足という設定のハンクさんは、ヤンチャな人間のお子さんにたぶん足を引きちぎられちゃったんだと思うんですけど、「子供はイヤだ〜!」という彼の存在は、人間界と自然界との関わり合い方も象徴しています。
でも、人間が悪者扱いされているかと言うと、実はそうでもなくて。
水族館や海洋生物研究所の人間がケガをした海洋生物を保護したり、治療して海に戻すことなどもきちんと描かれているのがいいですね。
Q7:さかなクンがいちばん最初に好きになった海洋生物は?
A7:いまお話したタコです!
小学2年のときに、日直の仕事を終えて自分の席に戻ったら、隣の席の友だちがノートから飛び出すぐらいの勢いの、迫力いっぱいのタコを描いていたんです。
しかも、当時の自分はタコという生き物をしっかりと認識していなかったので、こんなに目が鋭くて、足がいっぱいあって、煙のような真っ黒な墨をモクモク吹き出す生き物は一体何なんだ?ってすごい衝撃を受けまして。
それで、いても立ってもいられなかったので、放課後に学校の図書室でいろいろ調べて、ようやくそれがタコということが分かったんです。
と同時に、面白い! 本物を見たい! どこに行けば会えるんだろう? あっ、海にいるんだ、じゃあ、魚屋さんに行こう! と頭の中で次々に考えて、魚屋さんにランドセルを背負ったまま直行したんですね。
そしたら、タコが2000円ぐらいしていたから、タコってこんなに値段がタコいんだ、いや、高いんだ(笑)、さかなクンの貯金を全部はたいても買えないなと思って。
でも、お母さんに「タコを食べたい」って言ったら買ってくれるかもしれないと思って頼んだら、「たまにはタコもいいね」と言ってスーパーマーケットに連れて行ってくれたんです。
それで、お家に帰ってからそのイイダコをいろいろな角度から見て、吸盤の数を数えて、絵を描いて。
その日から、おでんにしてもらったり、バター焼きにしてもらったり、タコぶつにしてもらったり、1ヶ月ぐらいタコ生活が続きました(笑)。
さかなクンの初恋の魚は…
Q8:いまも、タコがいちばん好きですか?
A8:いまは、タコからだんだんお魚好きに広がっていきました。
タコももちろん継続して大好きなんですけど、初恋の魚はウマヅラハギです。あの顔の長さに惹かれました。その次がハコフグちゃんですね。
魚屋さんの水槽の中で、ブリや鯛にボーンとぶつかっても、へこたれずに泳いでいるハコフグちゃんの健気で強い姿を見て、自分もボーンとぶつかっても頑張らなきゃいけないなという勇気をいただいたので、それで頭にはハコフグと決めました。海洋生物にはいっぱい感動をいただいていますね。
いちばん好きな日本の水族館は…
Q9:食べる魚でいちばん好きなのは? いちばん好きな調理法は?
A9:お刺身かお寿司がやっぱり好きですね。
お刺身はそのお魚の持ち味や本当の美味しさ、栄養をストレートにいただくのにはいちばん適していますから。
もちろん塩焼きも美味しいですし、好きですけど、塩焼きですと、せっかくの栄養や脂がポタポタとけっこう落っこちちゃうんです。
ですので、お刺身じゃなければ、煮つけにして栄養が余すところなく溶け込んだ煮汁をご飯にかけて全部いただくか、あるいは栄養と旨味を衣で閉じ込めて油で揚げるのがいいですね。
だから、煮てよし、揚げてよし、干物にしても何にしても美味しいわけです。
Q10:いちばん好きな日本の水族館はどこですか?
A10:若いころに静岡県の三保にある「東海大学海洋科学博物館」で実習していたんですけど、ここはいまでも「汽車窓式」の展示をしていて、好きですね。
いまの水族館は水槽が巨大化していて、壁に小さい水槽が汽車の窓のように規則正しく埋め込まれた従来の展示スタイルはだんだん見られなくなりましたが、自分が幼いときに通っていたような歴史を保っている水族館が大好きです。
『ファインディング・ドリー』を観る子供たちにメッセージ
Q11:最後に、これから『ファインディング・ドリー』を観る子供たちにメッセージをお願いします。
A11:前作の『ファインディング・ニモ』では「弱肉強食」の海の厳しい現実が描かれていましたし、今回のダイオウイカが襲いかかってくるシーンなどを見ても分かるように、海は油断すると食べられちゃうとても危険な世界です。
『ファインディング・ドリー』でもお魚がそんな試練を乗り越えながら逞しく成長していく姿が描かれているわけですが、私たち人間も自然界の一員として、そのお魚ちゃんたちの尊い命をいただいているわけですよね。
この映画を観て、そのことに気づけると、感動がより深まると思います。
さすが、さかなクン! 豊富な知識と魚好きならではの愛で映画の見どころをハイテンション&ハイスピード、時には立ち上がって身振り手振りで語ってくれたけれど、さかなクンの言葉を思い出しながら『ファインディング・ドリー』を観ると、映画の面白さや感動も倍増。魚や海洋生物のことがもっともっと好きになるに違いない。
『ファインディング・ドリー』 7月16日(土) 全国ロードショー
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