先月の遠征で戦ったアメリカとの2連戦に引き続き、世界ランク6位のスウェーデンとの戦いに臨んだ、新生なでしこジャパン(世界ランク7位)。試合内容はアメリカ戦同様に、多くの課題が噴出した90分となった。

 スウェーデンを率いるのは、ドイツワールドカップ(W杯)、ロンドンオリンピック(五輪)でなでしこジャパンと激闘を演じたアメリカの指揮官だった、ピア・スンドハーゲ監督。日本のサッカーを熟知していることは言うまでもない。

 高身長が揃っているだけでなく、組織力を誇るスウェーデンはリオデジャネイロ五輪を目前に控え、右肩上がりに調子を上げてきている。そんなスウェーデンを相手に、スタートを切ったばかりの日本は新たなシステムで真っ向勝負を挑んだ。

 アメリカ戦で試した4−2−3−1ではなく、高倉麻子監督がスウェーデン戦に向けて準備したのは4−1−4−1。現地入りしてから取り組んだこの形でキーになるのは、最終ラインの前に入る熊谷紗希(リヨン)だ。これまで代表では長らくセンターバックを担ってきた熊谷のポジションをひとつ上げた。過去にも何度か代表で試されることはあっても、なかなか浸透してこなかったこのシステム。今回も、決して練習段階でぴたりとハマるという状態ではなかった。

 立ち上がりから相手の先制攻撃もあり、なかなかポジションが定まらない。しかし、最初の20分を耐えたあたりから動きが出始めた。右サイドから展開し、増矢理花(INAC神戸)から最後は永里優季(フランクフルト)がシュートを放つ。その2分後には、右サイドハーフに入った佐々木繭(仙台L)のパスを受けた熊谷がドリブルから強烈なシュート。その後も前線へスルーパスを配給するなど、攻撃力の高さを証明した熊谷。チーム随一のボランチ経験を持つ阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)が絶妙なバランサーとなり、熊谷を効果的に機能させる場面もあった。

「自分が大きく振れるというのは長所。作りながらサイド空けてサイドチェンジっていうやり方は今後作っていきたい。守備のときに自分が余ってしまう"もったいない"状況にならないことだけはすごく意識しました」という熊谷。修正すべき点は山積しているにせよ、手応えもあった。

 このシステムの旨味は攻撃面でも現れた。この試合では左サイドハーフに入った永里がタメを作ることで、先発に抜擢された中里優(日テレ・ベレーザ)が中央で小気味いい動きを繰り返すことができた。さらにスペースが生まれた逆サイドを右サイドバックの有吉佐織(日テレ・ベレーザ)が戸惑うことなく活用し、右サイドハーフの佐々木は最前線まで飛び出す思い切りの良い攻撃を展開した。

 アメリカ戦ではサイドバックに入った佐々木だったが、スピード勝負で歯が立たず、相当悔しい思いをした。

「アメリカ戦の印象があったので、相手との間合いと最初のポジショニングは気を付けていました」(佐々木)。

 このスウェーデン戦ではポジションを上げたことで、本来の攻撃力を見せることができた。押し込まれながらもゲーム中盤に訪れた日本の流れの中で、ゴールを奪えなかったことが悔やまれる。

 0−0のまま後半に入ると、開始11分で永里を下げて、有町紗央里(仙台L)を入れ、システムを4−4−2に変更。阪口と熊谷のダブルボランチへと舵を切った。システムの切り替え自体は混乱することなくスムーズではあったが、日本の足が止まりかけると一気に形勢はスウェーデンに傾く。

 76分には左サイドからマイナスへ切り返され、最後はロッタ・シェリンに決められて先制を許すと、87分には真ん中を縦パス1本で割られての失点。守備の崩れを止めることができず、終了間際には同様の形から3失点目。終わってみれば0−3の完敗だった。

 4−1−4−1は攻守においてスペースが生まれやすい分、日本のパスサッカーにおいては、ハイリスク、ハイリターンとなる。特に練習時から懸念されていたのがアンカーとなる熊谷の両脇に生じるリスク=スペースへの対応とポジショニングだった。誰がどこまでカバーするのか、完全にフィットしていない中でも明確にできる役割はあったはず。

 また攻撃面では形はできても最終的に"リターン"が生まれなかった。攻撃面でも、守備面でも、噛み合わせていくには時間が必要だが、修正すべき点を考慮しても、可能性を感じる布陣であったことは間違いない。

 4−4−2になってからの動きに関してはもう一度練り直しが必要だ。といっても、こちらはほとんど手つかずの状況のため、それぞれの局面にゆだねられた感があった。どのみち個の対応は避けては通れない。ここでしっかり洗礼を浴びておくのも悪くはない。

「チャレンジで選手を変えたりしているので、自分が思っているようなゲームの流れにはならなかった」と高倉監督は苦渋の弁。マイボールになったときの質、ボールの失い方、ポジショニング、フィジカル面など、多くの課題を挙げた。

 いずれも明確な課題ではあるが、やはり気になるのは失点の多さ。現段階で勝率を問題にする必要はないが、チャレンジを継続させるモチベーションのひとつとして"結果"は必要だ。攻撃ならゴール、守備なら無失点――非常にわかりやすい。まだまだ下を向く時期ではないが、疑問を抱くことなく、自らのチャレンジを推し進めるメンタルを保持することこそ、今のなでしこに必要なことなのかもしれない。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko