「ケチャップを使い切るコーティング」は、あらゆる産業を“滑らか”にする

写真拡大

ケチャップが容器に付着せずに滑り落ちる動画が話題になったコーティング技術は、ケチャップのためだけのものじゃない。海運から医療、石油・ガス業界への応用が始まっている。

ケチャップが容器表面に付着せずに滑り落ちる冒頭の動画は、LiquiGlide社(リクイグライド)が2013年に公開(日本語版記事)し、口コミで広まったものだ。同社や、同様の製品を開発するSLIPS Technologies社(スリップ)は現在、工業用途に手を広げようとしている。

「「ケチャップを使い切るコーティング」は、あらゆる産業を“滑らか”にする」の写真・リンク付きの記事はこちら

この2社が製造するコーティングの基本原理は同じ「liquid-impregnated surface」(液体をしみ込ませた表面)だ。(ケチャップが)滑りやすくするためにできるだけ表面を滑らかにしたい、という発想から生まれた技術である。

「問題は、固体の表面を、分子レヴェルで完全に滑らかにするのは不可能ということです」とスリップのダニエル・ベール最高経営責任者(CEO)は言う。そこで、同社とリクイグライドは、滑らかな液体の薄層で凸凹のある表面をコーティングしている。

両社は、さまざまな用途向けにこうしたコーティングを開発している。液体の配合は、表面から弾こうとしている物体によって異なる(日本語版記事)。違いは、スリップのコーティングのほうがリクイグライドのものよりも表面に液体を多く使用していることくらいだろう(ちなみにスリップはハーヴァード大学の、リクイグライドはMITからのスピンオフ企業)。

RELATED

いまのところ、スリップの最大のプロジェクトのひとつは、船体にはりつくフジツボとイガイといった生き物への対策だ。フジツボとイガイが船体に付着すると(水の)抗力が生まれ、大量の燃料の無駄につながるのだ。

コーティング剤「SLIPS」を開発したハーヴァード大学の研究チームは、米エネルギー省の助成金270万ドルを獲得した。現在は、フジツボが付かない滑りやすい塗料を船舶に1平方メートル単位で塗布して、ニューイングランドや英国、インド洋などの地域でモニタリングを行っている。

同様のコーティングによって、医療用ステントやカテーテル、静脈ラインなどの安全性を高めることも可能だ。こうした器具では、(表面に付着した)細菌が増殖することが多々あり、人体に感染する可能性がある。スリップのヴァイスプレジデント、スコット・ヒーリーは、彼らが医療機器メーカー4社と提携してコーティングのテストを行っていると述べたが、社名や詳細を明らかにはしていない。

リクイグライドのほうは2015年、糊用容器の件でElmer’s社と、食品パッケージでOrkia社と提携(日本語版記事)して注目を集めたが、その前には石油・ガス業界への進出も発表している。

粘りがあるドロドロの原油は、長い距離をパイプラインで運ばれる。リクイグライドによると、パイプと大型タンク用のコーティング実験を行っているところだという。