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多くの“女性のココロ”を掴むために『iQON』がしていること

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- データサイエンティストという職業の方は徐々に増えつつあるのかなと感じますが、比較的新しい職業という見方が世の中、大半だと思います。後藤さんがデータサイエンティストを目指そうとされた経緯と、現在取り組まれていることについて教えてください。

後藤氏:これまで天文学を専攻し、遠方銀河の進化について研究をしてきました。地上望遠鏡で撮られたデータを分析することで、広大な宇宙の仕組みを理解することができるというのが、とても面白い分野でした。ただ、アメリカの「Kaggle」や株式会社オプトの「DeepAnalytics」などのデータ分析コンペティションに参加していく中で、宇宙のデータだけでなくより日常に近いデータを分析することで人の生活に役立てて行きたいと考えるようになりました。そんな中で、自分にとって全く未知の領域であるファッション分野で、膨大なデータを蓄えているVASILYを知り、入社を決めました。

今の業務は、大きく分けて2つあります。1つは、『iQON』が蓄えているデータの「分析・可視化」です。施策の効果測定や、サービスの利用状況の把握などの依頼を各部署から引き受け、意思決定や異常検知を支援しています。もう1つは、データを活用した新サービスの開発です。

現在は、主に「類似画像検索システム」とレコメンドエンジン『for You』という2つのサービスを開発しています。「類似画像検索システム」は、機械学習の一種であるディープラーニングを活用して、今見ているアイテムと形や色が似たアイテムを提案します。レコメンドエンジン『for You』は、ユーザのLike履歴や閲覧履歴のデータを元に協調フィルタリングのアルゴリズムを使ってアイテムを推薦しています。いずれもアルゴリズムの部分からDBまでほとんどを内製でやっているので、日々細かな改善を加えることができるようになっています。

手前みそではありますが、このレコメンドエンジンはなかなか精度が高いと自負しています。社内の女性の方で、なんていうか、フワフワした、ほんわかした女性が居まして(笑)。いつもかわいいワンピースやアクセサリーを身に付けているのですが、エンジンがその人に推薦した内容が見事にその特徴を捉えていたので、自分でも驚いています。

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- 『iQON』のターゲットである女性により使ってもらうため、さまざまな改善や開発をされていると思いますが、何か気を付けていることなどはありますか?

今村氏:サービス改善のために、社内では常に数百という施策が走っています。そのすべての施策が上手くいっているかどうかを確認するのがとても大変です。それを全部可視化してちゃんと判断できるように、『Tableau』というBIツールを導入しました。Tableauを導入している企業は、最近少しずつ増えていると思いますが、使いこなしている会社はそう多く無いのかなと思っています。

今1番追いかけているKPIは、アイテムの閲覧された回数です。『iQON』は、いつでもどこでも欲しいモノが見つかるようなサービスを目指しています。「ユーザが欲しいモノをちゃんと見つけられたかどうか」を測るためには、アイテム詳細のPVの数や、そこの購入ボタンが押された数を見る必要があります。より多く見つけてもらえたら、当然そこのPVは増えるはずなので、アイテムの閲覧された回数は重視していますね。

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- 重視している指標である「閲覧数」を増やすために取り組まれていることについて教えてください。

後藤氏:類似画像検索システムの話になりますが、たとえば、赤いスカートの詳細ページに、“似ているアイテム”として、アルゴリズムが選んだアイテムを表示させています。「このアイテムを気に入ったのだけど、値段が少し高いな」と感じた時に、同じ形や色でもう少し安いアイテムをすぐに探せるようになったんです。その結果、アイテムがタップされる割合が3倍以上に増えました。

今村氏:似ている、かつ、違うブランドのモノを、1つの発見から次の発見へと繋げて“発見の創出をより促進してあげる”ことは重要だと思います。この類似画像検索の機能もそうですし、先ほどもお話した『for You』のようなレコメンドエンジンも発見を創出するための機能づくりの一環です。これは、最近もっとも力を入れている分野であり、データサイエンスが活きている部分でもあります。

後藤氏:『iQON』の1番の良さは、“中立性”と“情報量”だと思っています。通常のファッションECサイトだと、そこと契約しているブランドだけとか、得られる情報は限られてしまっていることが多いですが、『iQON』では400以上のECサイトを全て横串にしています。1つのところに大量のデータが集まってくるので、ユーザのニーズを万遍なく満たせる可能性が大きいサービスだと思っています。ファッションに関する膨大なデータを個人ごとに最適化し、ユーザに届ける仕組みを実装しているし、また継続的に磨き続けている。そこが1番の強みだと思います。
 
今村氏:弊社のような領域は、“データサイエンティスト”という職種が活きる場所だと思っていて。弊社に在籍している2名のデータサイエンティストは、バックエンドエンジニアチームという8人ほどの組織に所属しています。バックエンドエンジニアチームには、データサイエンスやAPI、検索エンジンのエンジニアが在籍しています。データサイエンスだけだと、実際につくったモデルを表に出すことは出来ません。同じチームにすることで、バックエンドエンジニアと一緒になって開発することをベースにやっています。

エンジニア特化の評価制度が「トップデベロッパー」を生み出す秘訣

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- 『iQON』はとても評価されていますよね。そんなアプリを開発できる理由、強みと言える部分などを教えてください。

今村氏:ありがとうございます(笑)。Androidだと、googleのベストアプリに2014,2015年と2年連続で選ばれていて、トップデベロッパーの認定もされました。女性向けファッションアプリで「トップデベロッパー」というバッジを貰った企業は、世界でも我々だけです。iOSでも「Essentials」という、世界でも数十個のアプリにしか付けられない称号を貰いました。それだけ高い技術力や大規模なデータベースを支えてくれる優秀なエンジニアが揃っていると思います。また、そういう人たちとデータサイエンティストとが上手く組み合わさっていることは弊社の強みだと思っています。

- 良いプロダクト作りのために体制構築やマネジメントで意識されていることはありますか?

今村氏:技術もそうですが、それ以上にスタンス面を重視したマネジメントを意識しています。”技術でユーザの課題を解決する”とか、”技術的チャレンジをし続ける”という、エンジニアとして大事にしないといけない項目を設定し、それがどれくらい出来たかっていうのを振り返って評価しています。そこで、自分の実力を絶対に伸ばさないといけない、とか、本質的に技術でユーザの課題を解決することを常に意識する、ということを日頃からちゃんと伝えています。弊社のエンジニアはベースがとても優秀だと思っているので、あとは正しい方向に向かわせてあげるだけなのかなと思います。

- どこの企業も何かしらそういうことをされているのかなと思う一方、開発者に対してスタンス面を重視したマネジメントを重視しています、という企業って実は少ないのかなと感じています。

今村氏:評価制度は各企業あると思うのですが、それをエンジニアに特化して作り、しっかりと運用している企業は、僕が知る限りでは少ないと思います。あっても形骸化していることも多いですし、一応あるけど給料には反映されない、みたいな。僕たちはモロに反映させていますし、かなり時間をかけてレビューし、フィードバックしたりしているので、そこはかなり1つ大きな違いかなと思います。

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- 『iQON』というサービスをどう進化させるか、展望についてお伺いしたいです。

今村氏:「for You」のレコメンド技術は、開発者としては自信を持って出しているつもりですが、女性陣に見せてみたらそんなにささってない・・・ということも正直あります。そのギャップを埋めて行くために、さまざまな意見を聞いてアルゴリズムを改善し続けていくような所は永遠の課題なのかなと思います。

後藤氏:同じアイテムをタップした複数の人に、同じレコメンドを出していても、人によって意見が違ったりしますしね。

今村氏:ファッションという分野は、あまりにも個人ごとの好みが分かれるので。だからこそ面白いとも思っていますが、実際は苦労する部分も多いですね。各個人にとって欲しいモノが見つかる仕組み作りを磨き続けていきたいです。これまでも注力してきましたが、人工知能などを利用して、より自分の好みを正確に理解し、本当に自分が欲しいと思ったモノを自動的に出してくれるような機能や、そういう発見や出会いの創出ができるようにしていければと思います。

- ありがとうございました。

『iQON』の1番の良さは、“中立性”と“情報量”。その良さを担保するデータの量と質は、常に“技術でユーザの課題を解決する”ことを意識するエンジニアたちに支えられている。その開発スタンスは、“技術的チャレンジを続ける”彼らを後押しするエンジニアに特化した評価制度から生まれたものだろう。「ファッションのレコメンドは難しい、だからこそ面白い」と言うエンジニアたちがつくる『iQON』の今後に期待したい。

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今回取材した方

株式会社VASILY 取締役 CTO
今村 雅幸(いまむら・まさゆき)氏

1983年生まれ奈良県出身。同志社大学経済学部卒業。宮崎ゼミ所属。
大学時代は学生向けポータルサイトの開発やソーシャルネットワークについての研究を行う。2006年にYahoo! JAPANに新卒エンジニアとして入社。『Yahoo!FASHION』や『X BRAND』などのさまざまなサービスの開発やリコメンデーションの特許等を取得後、2009年に独立、VASILYを創業、取締役CTOに就任。

株式会社VASILY データサイエンティスト
後藤 亮介(ごとう・りょうすけ)氏

1988年生まれ大分県出身。東北大学理学部宇宙地球物理学科を卒業後、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻に進学。修士課程修了。博士課程中退。専門は観測的宇宙論・銀河形成論。同大学で開講されたディープラーニング基礎講座を修了し、ディープラーニングの技術を使ったVASILYの新サービス開発に挑戦中。

ReadWrite[日本版] 編集部
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