トイレットペーパーに吹き付けて使うタイプもある

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トイレの便座を清潔にする「除菌クリーナー」が多種類市販されており、デパートやオフィスではトイレットペーパーと一緒に便座の脇に設置されているトイレも多い。

この便座除菌クリーナーを巡って、ちょっとした議論がある。クリーナー使用者を「潔癖なだけ」と皮肉る人もいれば、「マイ消毒スプレー使わないと無理」と言うほどの「推進派」も見られる。実際の効き目は、どれほど期待できるのか。

便座を拭いてから座る人45%、拭かない人34%

便座除菌クリーナーは、トイレットペーパーに吹きかけて使用する泡・ジェル・スプレータイプや、シート状でそのままトイレに流せるタイプがある。調査会社クリエイティブサーベイは2016年6月30日、20〜50代の男女300人ずつを対象に実施した「トイレに関する意識調査」の結果を発表した。それによると、「便座を拭いてから座る」人は45%、「拭かずに座る」人は34%、残る21%は「どちらとも言えない」という人だった。

約半数の人が便座を拭いてからトイレを使用しているが、そうでない人も全体の3割以上いる。調査結果を見たインターネットユーザーの間でも、意見は割れた。「拭く派」は、「トイレットペーパーを切って便座に引いてようをたしてるわ キモいし」「自分の使用後でさえ不潔に思えるから公衆便所なんてマイ消毒スプレー使わないと無理」という。

こういった声を揶揄して、「他人の汗がついたものを触るのが嫌っていう潔癖なだけだよ」「まあ気分の問題だな」というのが「拭かない派」だ。「動物を見ればわかるがヒトも基本的にケツ拭かなくていいはずだよな」との意見まで出た。

感染経路は「肌」ではなく「口」

感染制御学が専門で、東京医療保健大学大学院医療保健学研究科教授の菅原えりさ氏は、一般社団法人・日本レストルーム工業会のウェブサイトに掲載されているインタビュー記事の中で、トイレの使用によりノロウイルスをはじめとしたウイルス感染症の可能性があるかについて述べている。排泄(はいせつ)物に含まれるウイルスや細菌による感染症は、口を通して消化器官に入る感染経路をたどった場合に起きるので、尻や脚などの肌に触れただけでは感染しない。便座に座っただけでは感染を心配する必要なし、というわけだ。口に細菌が入る原因で最も多いのは、排泄物がついた手から運ばれるケースなので、「排泄後にきちんと手洗いまたは手指消毒を行うこと」が有効な予防方法になる。

菅原氏は同時に、便座を日常的にクリーナーで拭く必要はないと指摘している。その理由を、便座除菌クリーナーに十分な「殺菌効果」があるかはよく分からないため、消毒になっているかは疑わしいからだとしている。感染症の専門家で米ヴァンダービルト大学教授のウィリアム・シャフナー博士(予防医学)も、2014年6月20日付の「ハフィントン・ポスト(日本語版)」の記事で、便座に座って尻に病原菌が触れても感染症にはかからないとし、効果的な予防方法に手洗いを挙げている。

ただ、シャフナー博士は、便座除菌クリーナーや使い捨て便座シートについて、感染症を予防することよりも、使う人に快適さや安心感を与えるという気持ちの面で役立っている、とも述べ、その点で有用性を認めている。

こういった見解について、メーカーはどう考えているのか。便座除菌クリーナーをはじめ衛生用品を製造するサラヤ(大阪市)広報宣伝部に電話取材すると、「確かに、感染症予防は便座除菌クリーナーのメインの効果ではない」という。その上で

「不特定多数の人が触れる便座には不潔感を抱く人が多く、清潔感をもたらすという意味で果たす役割は大きいです。また、感染症の原因となる菌に効果がないわけではなく、便座についた菌を減少させることはできます。肌に触れる菌を減らすことになり、感染経路をふさぐという意味で一定の感染症予防効果はあります」

と話した。

そもそも「殺菌」と「除菌」では意味が異なる。「殺菌」という用語は、薬事法の対象となる医薬品や医薬部外品にしか使えない。一方「除菌」は菌を減少させる意味合いで、洗剤や石けん製品にも使われる。なお同社では、手指用の消毒剤も製造しており、こちらは感染症予防を主な効果として「殺菌」と表示している。