お笑いコンビ、ウッチャンナンチャンの内村光良氏

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 お笑いコンビ、ウッチャンナンチャンの内村光良氏が、7月5日(火)、新宿文化センターにて、小説『金メダル男』(中公文庫)の刊行記念トークイベントを実施した。

 書籍購入者180名ほどのファンが見守るなか、内村氏は、クリエイティブディレクターの嶋浩一郎氏と共に晴れやかな笑顔で登場。

デビュー以来、日本のバラエティ界を牽引し、常に第一線で活躍してきた内村氏が、自身3作目となる作品として書き下ろしたのは、常に全力で1等賞を目指し続ける男の物語だ。

「最初は、いろんな災難に遭う男の物語にしようと思ったんです。車に水溜りの水を引っ掛けられたり、川に流されたり、車に轢かれたり……(笑)。でも、ポジティブな話にしたかったので、主人公自ら挑戦して失敗を繰り返す話に変えました」

 物語の主人公は、1964年、東京オリンピックの年に生まれた秋田泉一(あきたせんいち)。小学生の時、運動会の徒競走で1等になったのをきっかけに、「1番になること」を人生の指針とし、挫折を繰り返しながら、どんなに傷ついても「1等賞」を目指して這い上がる、純粋でピュア、そして少しだけおバカな主人公だ。

 嶋氏から「1等賞を取った経験は?」と尋ねられると、内村氏は、「すごい1等賞を取った記憶はないけれど、小学校のときになんかあったな……、なんだったけ?」としばし考え、「油絵…?それもクラス単位の小規模で!」と会場の笑いを誘った。

 この物語の魅力は、なんといっても人間味溢れる主人公・泉一と笑いあり、涙ありのストーリー展開にある。

 主人公の泉一は、幼少の頃には、人より頭一つ秀でた才能を発揮するものの、中学を過ぎた頃からその才能は影を潜め、それでも泉一は過去の栄光を引きずるかのように手当たり次第いろんなジャンルに手を出し、失敗する。

 しかし、その挫折する様子がなんともおかしく、泉一の一喜一憂する姿を想像するだけで、クスッと笑ってしまう。そして、またも懲りずに新たに挑戦するジャンルがこれまた突拍子もない。

 内村氏も主人公と重なる部分があるのかという嶋氏の問いには「舞台や映画はステージこそ違うが、『お笑い』という点では一貫している。むしろ、泉一は、いろんな分野で一等を目指すので、自分のやりたかったことをしていてうらやましい」と発言。

 内村氏が、やりたかったことの一つとして「旅」をあげると、嶋氏が「泉一は、ピューリッツァー賞を取りに、中東まで行っちゃいますもんね」とすかさずツッコミを入れ、会場を大いに沸かせた。

 小説の中で、幾度となく挑戦し、挫折を味わう泉一。壮年期に入っても「1等賞」の栄光が忘れられず、将来の計画のないまま、バイトや派遣社員で食いつなぐ日々。

それだけ聞くと、なんだか哀愁が漂いそうだが、自分の気持ちに正直でまっすぐな男には、心の痛みのわかる優しい女性との出会いが待っていた。

 最終的に泉一は、人生最大の金メダルを手にすることになるが、果たしてそれは――。

「小説家としては、ド新人」と内村氏は語るが、『金メダル男』を読み進めていくと、幾度となく心を引き付けられ、不覚にも目を潤ませてしまう場面がある。

 浮き沈みの激しい芸能界で、いつも大勢の人に慕われ、愛され続けた内村光良だからこそ描けた「秋田泉一」というキャラクターは、やはりとても魅力的だ。

 きっと今まで頑張ってきた人ほど、この『金メダル男』は、心に響くに違いない。

文=金本真季