動物は食われるかスタンド使いか二択の荒木ワールド


このヒロヒコ、動物に容赦せん!と荒木先生が言ったかどうか定かじゃないが、ジョジョシリーズに出る動物の扱いはかなりひどい。


第一部でジョナサンの愛犬ダニーも初登場した直後、ディオに思いっきり顎を蹴り上げられ、飼い主の「何をするだァーッ!!」という名セリフを引き出した(単行本では修正)。さらにジョナサンとの殴り合いでボロ負けしたディオの腹いせで、針金で口を縛られて箱に入れられ、そのまま焼却炉に……!

第三部でジョセフにからかわれただけで済んだ上品ネコは、運が良かった。第三部にてジョセフを追ってきたDIO様は、レストラン前で時を止めたついでにネコをふっ飛ばし、頭が乗った猫バーガーや前足が入った猫ジュース、胴体が盛りつけられた猫ステーキをお客達に振る舞ったんだから。

ほか第三部のイエローテンパランスに貪り食われた私のポッキー(犬)がぁぁぁ!や、第四部で飼い主のしつけが悪かったばかりにアンジェロに噛み殺された犬とか、荒木先生の中では人に飼われるペット=食料という認識らしい。

しかし、動物もやられっぱなしじゃない。「動物のスタンド使いは強い」という鉄則があり、第三部で巨大な船ごと偽装された「ストレングス」の本体はオランウータン。砂のスタンドを操る犬のイギーは味方だったが、それをパワーで圧倒した鳥のペットショップが放つ「氷のミサイル」はおっかなかった。

そして今回の敵スタンド使い(ラット)、本体はドブネズミ。第三部ではほとんど苦戦知らずだった承太郎を、とことんまで追い詰める。承太郎に完敗したDIOの立場がない!

第16話は、こんなお話


いきなり承太郎からハンティングに誘われる仗助。音石明に「弓と矢」で射られ、スタンド能力を身につけた「ネズミ」を狩りに行こうと言うのだ。ネズミが射られたという用水路を訪れてみると、そこには異常にハエがたかっている箇所が……。何十匹ものネズミが内部から溶かされ、煮凝りのように固められた死体が! ネズミがいると思しき排水路のその先は、住人が生きている気配がない農家につながっていた……。 

最強主役コンビVSドブネズミ


承太郎さんお久しぶり! 今回は仗助と二人で、元主役・現主役の最強コンビ回。つまり、敵スタンド使いもそれだけ手強い。

その本体はドブネズミ。 「鼠狩り」というおぞましさと気高さのギャップ、全編で繰り広げられる野生のカンと人間の知恵との攻防が、原作でも屈指の人気を誇っているエピソードだ。全編にわたって原作ばりに“濃い”作画なのは、作画監督の関川成人さんがたった一人で原画を手がけているから。

ハンティングと聞いた仗助が「ナイスバディのお姉ちゃん」を連想してるのは、「ガールハント」が死語じゃなかった連載当時と現代との時差ってやつ。ちなみに承太郎も第六部に登場する娘・徐倫の年齢から逆算すると、第四部では既婚で子持ち。ナンパ経験あるジョースター一族はジョセフぐらい?

ネズミのスタンド使いが生まれた元凶は音石明。面白半分に小さなマトに当てるんじゃないよ!  人間が招いた自然破壊って感じなのだ。

毒針スタンドを追う承太郎デカ


主役コンビのスタンドはどちらも近距離パワー型で、射程もせいぜい2m。そこでペアリングを「弾丸」代わりにスタンドの力で飛ばし、20mに伸びた射程を空き缶を試射して実演する承太郎。

「射程内で見つけて外したら鼠は二度と射程内に入ってこないからな」

別にプレッシャーかけるわけじゃないが……いや仗助にプレッシャーかけまくり!

「ドブネズミはよく泳ぎ、どこにでも住み、何でも食う。大きい物で体長20ないしは30cm。体重は1kgにも達する物もいる。ジャンプ力は2m」

やたらとドブネズミに詳しくなれるアニメ、それがジョジョ!

承太郎の本職は海洋学者であり、動物の追跡にかけてはプロ中のプロ。鋭い観察は研究者というより名探偵で、さながらベテラン刑事。新米のクレイジー刑事と組んだバディものである。

「それ撮ったらその場で見れるビデオっすね」

承太郎がネズミの通り道に設置したビデオカメラに対する仗助のコメントが、微妙に懐かしい。この当時は、モニターを内蔵してるビデオカメラがまだ珍しかったんですね。

そこで見つけたネズミ達の煮こごりを、木の枝でつんつん突く承太郎。その様子に、仗助の「アラレちゃんのよーに」という原作のツッコミがカットされてるのがチト惜しい。ジャンプ原作にジャンプ原作で返すなぁーっ!ということ?

ここからは完全にホラーパート。隠れる場所だらけの農家の屋内で、ネズミの息づかいを探る二人。そして冷蔵庫のドアが開いていると気づいた仗助は、ネズミと目と目が合ってしまう。冷蔵庫の中で「保存食」にされていた老夫婦の姿は、ムゴすぎて放送規制のために黒塗り。怖いのは「死んでる」よりも「生きながら喰われている」ことだ。

一発で当てないと射程がバレる、でも椅子とテーブルが邪魔。この位置から叩き込むしかねえ! ネズミのスタンドが何かを飛ばしてきた、でも気持ち悪いから素手で弾くのはやめとこう……とフライパンで防いだ姿は情けないが、実はこれで正解。

二発目で仕留めてドヤ顔の仗助に呼ばれて出てきた承太郎、その手は無残に溶かされていた。実はもう一匹いたネズミの攻撃を受けていたのだ。生き物もスタンドも溶かしてしまう毒針を冷静につかみ取った承太郎、キモくて触れなかった仗助。二人に優劣をつけず「性格の差」とした流れがウマい。

田園で繰り広げられるガチのスナイパー戦


「音石明は2匹を射ていた」との連絡が入り(クスリで自白させた下りはカット)、日没までのハンティングを急ぐ仗助たち。「自分の縄張りにいるものは仲間だろうが人間だろうが皆殺し。てめーさえよけりゃいいという。最早この地球上に生きていていい生物じゃないぜ」承太郎の怒りも最大級だ。

目の前に無情に広がる青々とした田園地帯。こんなに広い場所、探すのは無理じゃないっすか?とあきらめムードの仗助に対して、承太郎が学者らしく本の言葉を引用。

「シートン動物記の著者、E・T・シートンは追跡不可能な動物はいないと言った」

子供も読む「シートン動物記」を狩りに持ち出すエンタメはジョジョだけ!

ビデオに残っていた映像から、耳が欠けたネズミを「虫食い」と命名。さっきと違って20mなんて近さには寄せ付けないと予想して、空気抵抗を受けにくいライフルの実弾を4発取り出す承太郎。その計画性、分けてもらいたい……。

「それもスタンドの手で発射させるんすか? 俺とても自信ねぇっすよ……」
「だろうな。俺がやるしかねぇな」

カチーンと来た仗助に「そうだな。じゃあ2発持て」とライフル弾を渡す承太郎、煽って手のひらで転がすの上手い! 今週の仗助はプレッシャーに焦ったり、ミスタージュンコの靴下(一足2000円以上)を水に落としたり、感情の動きが豊かで実に可愛い。

が、いきなり消えるネズミの足跡。これはバックトラックだ!

「バックトラックとは、進んできた足跡をそのまま戻って敵から居場所を隠す野生動物の特殊技能である。日本ではヒグマやイタチ、ウサギなどがやるという。鼠がバックトラックしたという記録は、ないッ!」

原作では淡々と解説されていたところ、ナレーションの大川透さんが「ないっ!」と自信たっぷりに叫ぶのが面白すぎる。

「つまりこういうことっすか。俺達は鼠に一杯食わされた!」
「どうやらやばい雰囲気だな…この地形、狩られてるのは俺達の方かもしれん」

狩る側から、狩られる側に。さっき仕掛けた罠を逆用され、不意をつかれた仗助の首にスタンドの毒針が刺さる。

「スタープラチナ・ザ・ワールド!」

承太郎が時を止めるときに発するこの言葉、実は今回が初使用。全盛期から何年も使わなかったために1秒しか止められないが、劇中でも短時間でトゲを肉ごと弾き飛ばしていて芸が細かい。

「どっちもすげぇ……ネズミの野郎も承太郎さんも!」

ネズミと承太郎を同列に扱うリーゼント!

おかげで分かった距離は60メートル。ライフル弾を4発とも仗助に託し、自ら針を撃ち込ませるために近づき囮になる承太郎。自分はクレイジーダイヤモンドに治してもらえる、しかし仗助は自らを治せないのだから的確な判断だが、躊躇いなく進むのカッコよすぎ。

ネズミが撃つ瞬間を見極めて、「時止め」で避け続ける承太郎。しかし撃った直後に虫食いは場所を移動してしまう。スナイパーの鉄則を守るげっ歯類……!

虫食いはそれ以上の存在だった。承太郎がかわすのを計算して、岩で針を反射させてきた! 「時止め」をも計算に入れて跳弾で攻略するドブネズミ、頭のキレは歴代ジョジョキャラの中でトップクラスかも。

ますますグロくなった承太郎の姿に、唇をかみかける(恐怖のサイン!)仗助。しかし、急に闘志が湧いてきて流れが変わる。弾は4発あるがチャンスはもうない。岩陰にいる虫食いを……外した!くるっとスタンドの砲身を仗助に向ける虫食い、その照準の中には、双眼鏡を縦持ちして狙いを定める仗助の姿があった。

「やはり見たな。外すと必ず見ると思ったよ。体をこっちへ向けて」

最後はマヌケじゃあなかった、プレッシャーを跳ね返す男・東方仗助でした。

今回は億泰も康一くんも出なかったため、エンディングの声優クレジットも(被害者の老夫婦を除いて)仗助=小野友樹さんと承太郎=小野大輔さんの二人きり。ダブル小野!