『おいしいブラジル』(麻生雅人/スペースシャワーネットワーク)

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 今年の夏の楽しみといえば、なんといってもリオ五輪だ。毎日のようにオリンピック関連の報道がなされているが、それは華やかで楽しげなものだけではない。開催国ブラジルでは国民の半数が開催に反対しているという。オリンピックの開会に向けて準備が大詰めを迎えるなか、経済や政治の混乱に対する不満の声、そして治安の悪さから不安の声が上がっているのもまた事実である。今回はそんな“一筋縄ではいかないブラジル”を様々な角度から眺めることのできる5冊を紹介しよう。

■ブラジルの青空市をバーチャル体験! 最新スーパーフードも見逃すな!

『おいしいブラジル』(麻生雅人/スペースシャワーネットワーク)

 “ブラジル”と聞いてまず何が思い浮かぶだろうか? サッカーやサンバ、あるいはボサノヴァだろうか。アサイーやマテ茶を思い浮かべた方はなかなかのブラジル通だ。そう、ブラジルにはもの、健康にいいものがたくさんあるのだ。

 『おいしいブラジル』では、マテ茶やシュハスコ、そして豊富なフルーツといったブラジルの定番食文化から、健康食やガストロノミアといったリアルタイムのブームまでブラジルのおいしいもの、スーパーフードを余すことなく紹介している。“山のチーズ”や“荒野のキャビア”など、日本ではまだ知られていないブラジルの注目食材も見逃せない。

 眺めているだけでブラジルのスーパーマーケットやフェイラ(青空市)をバーチャル体験できるような同書には、ブラジルの深くて熱い食文化が詰め込まれている。旅行のお供にはもちろん、家でブラジルに思いを馳せる時にもおすすめの一冊となっている。

■狂乱のブラジル夜遊び体験! 美女にナイトクラブ、そしてアンダーグラウンドまで

『ブラジル裏の歩き方』(嵐よういち/彩図社)

 ブラジルが“深い”のは食文化だけではない。実は、ブラジルこそ中南米随一の「夜遊びが楽しい国」なのだ。『ブラジル裏の歩き方』では、そんなブラジルのディープな一面を紹介している。

 訪れる客を虜にするナイトクラブ「ボアッチ」、ブラジル美女が接待してくれる「カラオケ・バー」など、夜遊び情報はもちろん、ディープな観光スポットや犯罪渦巻くアンダーグラウンド情報までが掲載された同書。当然、楽しい夜遊びにはリスクがつきものだ。日本の反対側にあるブラジルでは、治安も全く正反対だと思った方がよいだろう。“運が悪ければ”犯罪に巻き込まれるのではない。“運が良ければ”巻き込まれずに済むのだ。『海外ブラックロード』でおなじみの著者である“ブラジル通”嵐よういちが、ブラジルの歩き方をしっかりレクチャーしてくれる。

■ブラジルの“個人技”はサッカーだけじゃない!

『リオデジャネイロという生き方 不安も悩みも笑顔に変える「幸福の個人技」』(中原仁、ケイタ☆ブラジル/双葉社)

そんな危険で楽しい国、ブラジルで暮らす人々は一体どんな生活を送っているのだろうか。オリンピックの開催地であるリオデジャネイロに住む“カリオカ”たちの生活をつづったのが、『リオデジャネイロという生き方 不安も悩みも笑顔に変える「幸福の個人技」』。

 経済や政治の混乱もなんのその、彼らの生活は笑顔に溢れている。人生を楽しむための文化がこの街には根付いているのだ。リオの人々は、個人の判断を最も大切にして動く。物事を人のせいにはせず、自分が何を考えていて、何を求めているのかを明快に表明する。街角や酒場、スーパーなどで誰もが一期一会の会話を楽しむこの街では、あらゆる「個」が入り乱れ、共存している。周りを気にして、空気を読みがちなわれわれ日本人がよりポジティブに人生を楽しむためのヒントが、同書にはたくさん詰まっているのではないだろうか。また、著者が独自の視点でセレクトするリオデジャネイロのおすすめローカルスポットガイドもついており、こちらも見逃せない。

■ブラジルの空気をたっぷり詰め込んだ物語にどっぷり浸かろう!

『丁子と肉桂のガブリエラ』(ジョルジェ・アマード:著、尾河直哉:訳/彩流社)

 今年のリオ五輪に向けて、ブラジルへの渡航計画を立てている方もいることだろう。ブラジルに行く前にぜひ読んでおいてほしい本がある。ブラジルが世界に誇る国民的作家であるジョルジェ・レアル・アマード・デ・ファーリアの最高傑作『丁子と肉桂のガブリエラ』だ。

 50年前に出版された作品ではあるが、今読んでも全く古臭さを感じることがない。ブラジル・バイーアの田舎町から変動する社会を眺めた、笑いとエロスに満ち溢れた人間賛歌の物語。ブラジルのカーニバル的世界観が凝縮された作品で、帰国後に再び読み返せば、祝祭的な気分の余韻にたっぷりと浸ることができるはずだ。

■地球の裏側のブラジルと、日本の中にあるブラジル

『移民の詩 大泉ブラジルタウン物語』(水野龍哉/CCCメディアハウス)

 最後に、日本の中にあるブラジルを紹介しよう。『移民の詩 大泉ブラジルタウン物語』は、群馬県にある大泉町に住む日系ブラジル人たちの歴史、生活を描いた傑作ノンフィクション。日本から最も遠い国のひとつであるブラジルだが、過去には日本全国に30万人もの日系ブラジル人が住んでいたこともある。実は、ブラジルは日本から“遠くて近い国”であったのだ。

 しかし2008年のリーマンショックのあおりを受け、日系ブラジル人たちの半数近くが失業や帰国の憂き目にあったという。それでもなお、大泉町の日系ブラジル人たちと地域住民は“多文化共生”の道を模索し、歩み続けている。住人の10人に1人が日系ブラジル人というこの町の25年にわたる共生の歴史、そして日系移民たちの逞しい生きざまは“多様性”の大切さを教えてくれる。

 ブラジルは、角度によってさまざまな顔を見せてくれる。リオ五輪に向けてお祭り気分が高まる今だからこそ、あえてちょっと違った目線からブラジルを眺めてみてはいかがだろうか。