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●ミナミに国内最大級の訪日外国人のアニメ拠点
旅行業大手エH.I.S.がアニメの一大拠点を大阪ミナミに作る。「OTA BASE(宅男基地)」と名の付いたこの場所を作る本当の狙いとは。

H.I.S.がオープンさせる場所は、大阪市中央区西心斎橋にある心斎橋オーパ本館8階。およそ300坪の国内最大級の広さで、同社として初めての日本のアニメを中心としたポップカルチャーコンテンツを核に観光情報を提供する「OSAKA TOURIST INFORMATION CENTER OTA BASE(宅男基地)」をオープンさせる。7月23日からだ。

ここでは訪日外国人向けの一般的な観光案内はもちろん、オタク観光スポットやイベント情報も提供する。日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語の5言語での応対ができるように、日本のアニメ好き外国人スタッフを多く配置。SNSを通じたポップカルチャーや観光の情報発信などもおこなう。

そのほか、“オタクの部屋”をコンセプトとした休憩スペースや、オタク系グッズのアイテム展示、ギャラリースペースでは、観光活性化を目指す地域とのタイアップなども予定している。

さらには、アニメイト大阪日本橋の出張所や、ポップカルチャーとコラボしたおしゃれ着物の体験(3990円~)ができる「Kyoto Kimono Salon 京あるき」、アニメとタイアップしたオリジナル商品の販売を予定しているキリン堂などといったテナントが入る。

日本のアニメが好きな訪日外国人がここに来れば、アニメの情報を手に入れることができ、さらに日本のポップカルチャーの雰囲気を体験できるという訳だ。当然旅行業者の同社であるから、アニメの舞台となった場所をめぐるツアーなども今後発売していく予定だという。アニメ目的で日本に来る外国人は、まずここに来てからプランをたてるというのがスタンダードになるかもしれない。

しかしなぜ大阪ミナミなのだろうか。大阪といえば最もインバンドの恩恵を受けてきている場所だ。だからこそ、というのは当然あるが、それだけではない。

●変わる関西のインバウンド
“爆買い”の勢いに陰りが出ていることは、最近のニュースでも明らかだ。7月20日に日本政府観光局が発表した2016年上半期の訪日外客数は前年同期比28.2%増の1171万4000人で、初めて半年で1000万人を超え過去最高となった。その一方で、観光庁が発表した4月〜6月の訪日外国人旅行消費額の1人当たりの旅行支出は15万9930円と前年同期比9.9%減だった。消費額は落ちているが、人数は増加している。リピーターの増加などから、関心は買い物から体験へという流れはすでにできあがっている。

○なぜ心斎橋なのか……

大阪をよく知る人にとってはいうまでもないことだが、心斎橋という場所の近くには、大阪のアニメの聖地「日本橋」があるため、心斎橋エリアにはアニメ好きの訪日外国人が訪れやすい。だがそれだけではない。

三菱総合研究所と鉄道各社など(西日本旅客鉄道、近畿日本鉄道、阪急阪神ホールディングス、南海電気鉄道、京阪ホールディングス、新関西国際空港)が共同で調査をおこなった。

関西国際空港の外国人旅客数は前年度比57%増の1100万人となり、外国人入国者数が初めて成田空港を上回った。インバウンド需要は東ではなく西に多い。しかも特に多いのは京都ではなく大阪。中でも難波、心斎橋エリアへの訪問が最も多く、年間600万人近くが訪れているというのだ。さらに、訪問エリアは、特定の観光地などに集中しており、回遊していない。つまり将来的な広域観光の拡大余地はまだまだあるのだ。

そういった環境化でスタートするアニメを中心とした同社の試み。「日本を代表するポップカルチャーを通じて、日本を知ってもらい、アニメの舞台となった地域などにさらに興味を持ってもらい、次の旅行の需要を生み出したいという狙いがある」(同社広報)という。

オープンは7月23日。当日には、オープニングイベントも行われる。日本が誇るソフトパワーはどれほどの力があるだろうか、その化学反応に期待したい。

(冨岡久美子)