就労状況にある女性の57%が非正規雇用という現代。非正規雇用のなかで多くの割合を占める派遣社員という働き方。自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

☆☆☆

今回は、都内で派遣社員をしている杉浦美紀さん(仮名・30歳)にお話を伺いました。実は、杉浦さんはデスクワークではなく、販売員として派遣社員という雇用形態で働いています。実年齢より若く見える童顔で、メッシュの入ったボブヘアーにワンピース姿は地下アイドルのグループにいそうなルックスといえそう。そんな彼女に、どうして派遣で働いているのかを聞いてみました。

美紀さんはトリマーの専門学校を卒業後、当時つきあっていた彼氏についていく形で上京します。

「とにかく地元が嫌で。バンドをやっていた彼氏が活動拠点を都内に移すタイミングで、私も上京しました」

美紀さんは、ペットショップの店員として就職しました。

「百貨店の中に入っているペットショップで、トリマーとして働いていたのですが、犬の毛とかほこりがすごくて。アレルギー鼻炎から咳が止まらなくなったのを、放っておいたら、喘息の手前みたいのになってしまって」

念願だったペットトリマーの仕事を退職し、バイトとしてアクセサリー売り場で働きます。

「駅ビルの中に入っている、ヘアゴムとかピアスとか安いアクセサリーを扱っていた店なのですが、とにかく万引きとかも酷くて。ガムとか飲食しながら店内に入ってくる客もいて。彼氏と同棲していたので安い時給でもよかったのですが、割に合わないので辞めました」

そこで、美紀さんは「派遣」という働き方に出会います。

「同じ駅ビルの中で働いていた女性が、派遣会社から来ていた販売員さんだったんですね。ブランドの店とかみんな大学出た正社員と思っていたから、これはありだなと思って」

美紀さんに教えてもらった販売を専門としている派遣会社のサイトを見てみると、海外のハイブランドから、国内の有名セレクトショップなどファッション雑誌で見かけるようなブランド名の求人も掲載されています。

「主要ターミナル駅ではない地域の駅ビルの客より、百貨店の客層の方がマナーがいいんですよね」

派遣社員として、接客業を始めた美紀さん。しかし、思ってもいない事態が起こります。

「事務とかの派遣と違って、販売だと個人売りが設定されているんですよ。売上目標に行かなくても、給料下がるとかはないけど。最初に派遣された売り場は、目標がきつくて辞めました」

最近は、販売業の求人数が多いため、ノルマがあるところか少ないと言います。

「最初は、あまり派遣の仕組みとか知らなくて。好きなブランドの服が社販(注:店頭の価格よりも3割や4割程度の価格で購入できる制度)で買えるのが嬉しくて散財しちゃったり」

しかし、派遣先のノルマが美紀さんの生活を圧迫します。

「結局、若い頃は社販で服が購入できる派遣先ばかり選んでいたので、お金が全然なくて。派遣先で着る服を買うためにキャッシングしていました。後で知ったのですが、社販で勧められるのは、在庫が多かったりメーカーが売りたい服だったりするので、好きなものを買えるわけではないんですよね」

美紀さんの現在の派遣先は、6売り場目だと言います。

「だいたい3か月ごと更新で。コーディネーターの人と仲良くなれば、何社か選べるというか。今の売り場に飽きたから、更新しないで変えて貰ったり」

今では、制服対応の店か、自社の服を借りられるのか事前に確認しているという。

「制服対応の店でも働いたのですが、百貨店の場合だとそこの店員だと勘違いされるんですよね。最近は、海外からの爆買い目当ての観光客も多くて。わからない言葉で話しかけられることも多くて、海外ブランドの派遣先は更新しないで辞めました」

犬好きだという美紀さん。今はペット不可のアパートに住んでいるため、飼うことはできないが、たまにペットショップに癒されに行くとか。

彼氏と一緒に上京! トリマーをアレルギーで退職。
未経験から始めた販売業で経験した壮絶ないじめとは? その2に続きます。