世界を震撼させた黒装束のテロリスト「ジハーディ・ジョン」はどのように誕生したのか。彼と唯一接触したジャーナリストが迫った Photo:REX FEATURES/AFLO

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理性的で、勤勉な
クウェート難民の息子

 鋭利な刃物を手にした黒装束の男と、オレンジ色のジャンプスーツで手を縛られた人質。ネットを通して瞬く間に拡散した、あまりにも残忍な光景を多くの人は忘れることなどできないだろう。

 その後、凄惨な行為はフランスを始めとする世界各地へと飛び火し、さらに多くの犠牲者を出すことにもなった。まさにテロの連鎖というべき状況を断ち切っていくためには、我々は何をするべきなのか? そして何をすべきではないのか?

 むろん、事件の加害者に気持ちを寄り添わせることなど、到底出来はしない。だが犠牲者だけではなく、その事件が起きた社会的な背景にも気持ちを寄り添わせなければ、負の連鎖を断ち切ることは難しい。ただ加害者のパーソナリティに憎悪の気持ちを向けるだけでは、新たなテロリストを生み出してしまうだけなのかもしれない。

 本書は、後に黒覆面の処刑人として世界を震撼させることになる、「ジハーディ・ジョン」ことモハメド・エムワジの評伝であり、そして彼と唯一接触したジャーナリストとしての著者自身の物語でもある。一人の男の半生を通して見えてくるのは、一つのテロがまた次のテロを生み出すまでの典型的な構図である。テロリスト誕生までの節目となるプロセスがまるで双六のように描かれ、サイコロを振る度にエムワジは先鋭化していく。

 多くの犯罪者がそうであるように、幼少の頃のエムワジにも殺人鬼の片鱗は見られない。クウェート難民の息子として西ロンドンで生まれた彼は物静かなティーンエイジャー時代を過ごし、理性的で、勤勉であったという。10歳の頃の将来の夢は、大好きなチーム・マンチェスター・ユナイテッドの選手になっていて、ゴールを決めること。ごくごくありふれた少年であった。

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