たっぷりの氷となじませたサングリア。一口飲んで驚くのは、味のクリアさ、複雑さ。フルーツやスパイス、リキュールの芳香、自然な甘味。ついつい飲みすぎてしまう美味しさだ。

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赤ワインにフルーツをたっぷり。甘くてアルコールも低そうだし、コドモの飲み物だよね、なんて思っていませんか、サングリア。本場より美味しいかもしれない自家製、本格サングリアは男もすなる、艶っぽい酒です。

■大人のサングリアは、クリアで香り高い

長いことサングリアは「問題な酒」であった。「やたら甘いわりに薄い、フルーツパンチ的な酒」という先入観があって黙殺し続けていた。だが、中目黒にある老舗酒場「ベネンシア」の自家製サングリアを飲(や)ったら愕然とした。店主の内藤武城(たけしろ)さんは言った。

「スペインでも、市販の甘いだけのサングリアを供する店も少なくないですが、バルでちゃんとした自家製を飲めばわかります。旨いんです」

そんな内藤流サングリアは、複雑にして清冽である。果物の芳香、スパイスのかすかな刺激、そこにアニスのアクセントが加わる。訳ありの2人にも似合う艶っぽい“複雑系”サングリアは、そのクセがクセになり、ぐいぐい進む。凡百の薄くて甘いだけのものを一蹴するサングリアは、一体どうつくられているのだろうか――。

最初に内藤さんが用意したのは果物である。清潔な瓶に投入するわけだが、「果物は丸一日漬けたらすべて容器から出して捨てます。漬けすぎると酸化する上に、見た目を濁らせますから」。

一度漬けた果物に情けは無用。そこからして男の酒らしさがあふれている。入れる果物は、オレンジ、りんご、レモン、バナナが基本。ほかに旬の果物などを追加するが、ライムは「香りが強すぎてライム酒になる」ので禁物。複雑系はバランスが肝心なのである。

続いてシナモンなどのスパイスを投じたら、まずはジンやウオッカなどのベースの酒である。これが大人のサングリアの「すいすい飲んでストン」という強度を与える。意中の人もストン、とさせる強さである。内藤流サングリアの場合、さらにアニスリキュールも加える。内藤さんはサングリアの究極はベルモットに近いと語るが、確かにベルモットもサングリアも、フレーバードワインの仲間。納得である。

「甘めのシェリーも加えます。最も基本的なサングリアは砂糖で甘くしますが、僕は、甘さは酒などで間接的に与えるほうが、味わい深くなると思う」

そしてついに赤ワインの登場だ。

「量が量だけに、安価な箱ワインを使います。ただ、味は良いほうに引っ張られるので、飲み残しの良いワインも入れます。美味しい白ワインを混ぜてもOKです。濁らず、深い赤色になるようなら大丈夫。見た目の透明感に比例して、味もスッキリ仕上がります」

あとは冷暗所に1日置くだけ。内藤流サングリアはこうして出来上がる。

「たとえば夏の午後に似合う、氷を入れても薄くならないのが美味しいサングリア。果物や入れる酒の組み合わせで無限に広がる、面白い酒です」

なるほど奥深い。しかし夏の午後、意中の相手と杯を重ねているうちに前後不覚、気づけば独りぼっち……などということにならぬよう、その美味さにはゆめゆめご留意されたし。

■サングリアのつくりかた

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【材料】果実酒用4リットル瓶1本分、仕上がりはワインボトル約4本分

◆果物
オレンジ……2個、レモン……1個、りんご……1個、バナナ……2本、季節の果物※1……適宜

◆スパイス
シナモンスティック……2本

◆ベースの酒
ジン……150ml、アニスリキュール※2

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(文・加藤ジャンプ 撮影・飯貝拓司 教える人:内藤武城(「べネンシア」店主))