旬をおいしくいただくならば vol.001

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美しい四季に彩られたニッポン。“旬”がココロとカラダへ染み渡る。フードユニットつむぎやが、季節のお料理や食材をおいしくいただけるお店をご紹介

◆今回訪れたお店 なると屋+典座

鎌倉の野菜が生み出す調和した時間

突然だけど、理想的な毎日の状態ってなんだろう。仕事もプライベートも、忙しすぎず、休みすぎでもなく、滞っていない。つまりきちんと調和して、前に進んでいる状態なのかなって思う。これはある意味ごく“普通”の状態なのかもしれない。でも人それぞれ、仕事やら、愛だの恋だの、いろいろとみなさん忙しいわけで、調和した“普通”の状態って、じつはなかなかに難しい。

食事もそう。旬の食材を毎日いただくことって、本来は当たり前のことだったはずだけど、今はそれが“特別”なことになってしまっている。そんな食における、“理想の普通”ってなんだろう。まっさきに思い浮かぶのは鎌倉の「なると屋+典座」だ。「鎌倉の野菜を鎌倉でいただくこと」をコンセプトに、店主のイチカワヨウスケさんが店を構えて13年目。すっかり鎌倉の顔として、おなじみのお店でございます。





自分がいつもオーダーするのは月替わりの定食。先日いただいた「6月のごはん」は、黒米といんげんの混ぜごはんとかぼちゃのお味噌汁、定番の胡麻豆腐。冬瓜の炊いたものには揚げた新ごぼうをあわせて、トマトときゅうりの小鉢、こんな構成。イチカワさんの料理は、いつもものすごく美しいバランスだなぁと、しみじみ。

蒸し暑いこの時期だからこそ、冬瓜はゴマと小葱がたっぷりかかったキリリと冷やしたお出汁に浸っている。ひらひらとした新ごぼうの揚げものが乗って食感のアクセントに。お出汁に浸っていくにしたがって食感が変化していくのもおいしい。

湯むきしたトマトときゅうりの小鉢は、間に細かく刻んで酢醤油で味付けしたビーツが隠れている。このビーツが調味料的な役割をこなしつつ、色味や食感のポイントにもなっている。味噌汁は、まだ出始めの時期のかぼちゃということで、大きめに切って弱火でじっくり素揚げすることで、甘味を引き出している。季節に合わせた細やかな心遣いを、ひとつひとつのお料理から感じるのだ。



「何事にも“やりすぎない”ようにしています」と、イチカワさんが言う。なると屋さんの料理は、手の込んだものと、潔い料理とのバランスがお見事。コース料理と違って、お膳の上でいろいろな料理を行ったり来たりしながら食べ進めるものだから、全体のバランスにはとても気を配っているとのこと。

お店の佇まいも、流れる空気も、とても静かで凛としている。イチカワさん自身が、ひとりで食事をするときは静かに食べたい派ということを聞いて、とっても納得したのでありました。

食べ終わったあと、カラダの軸が整って、澄んだ心持ちになる。とても満ち足りていて、でも満たされすぎない、そんな絶妙なバランス感。常に明日への余白があるような状態なのでございます。

鎌倉に住んでいなくとも毎月訪れたくなるお店。繰り返す季節を愛おしく想う。美しく調和した時間が其処にはありました。







なると屋+典座
TEL:0467-23-7666
神奈川県鎌倉市小町1丁目6?12
営業時間:11:30〜15:00(L.O. 14:30)/18:00〜21:00(L.O. 20:30)
※食材がなくなり次第終了
定休日:火曜休、第2・4水曜休
席数:30
アクセス:鎌倉駅より徒歩2分
カード:不可
予約:有
平均予算:1000〜2000円
喫煙種別:禁煙



物書き料理家。金子健一とともにフードユニット「つむぎや」として活動。雑誌、書籍、イベントなどで、和食ベースのオリジナル料理を提案。個人としてはライター業も。新刊「和食つまみ100」(主婦と生活社)が発売されたばかり