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●Pepperの技術を自動車に
本田技研工業(以下、ホンダ)は21日、ソフトバンクとAI分野で共同研究を開始すると発表した。ホンダ子会社の本田技術研究所がソフトバンク傘下のcocoro SB開発のAI技術「感情エンジン」を用いてAIアシスタントの研究開発を進める。自動運転技術と合わせれば、米国のドラマ「ナイトライダー」で描かれた世界が実現するかもしれない。

○共同研究で目指す姿

両社の共同研究では、人間味溢れる感情を持ったAIアシスタントの開発を目指す。AIがドライバーとの音声対話や、モビリティ搭載の各種センサー、カメラなどを通じて取得した情報をもとに、ドライバーの感情を推定し、感情を持った対話を行う。

これによって、ドライバーはAIを友人や相棒のように接する対象として捉え、モビリティへの愛着を感じてもらえるようになることを目指していくという。

ベースとなるAI技術はcocoro SBの「感情エンジン」。この感情エンジンは、人型ロボットのPepperに活用されているAI技術となる。Pepperはカメラや搭載センサを活用して、状況を把握し、過去の経験を踏まえながら、現在の状況をドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの内分泌に便宜的に変換、それを人間の感情に置き換えることで、喜怒哀楽などの感情を表現して、人と接することができるというものだ。

●何が可能となるのか
○人の心を理解する相棒

では、研究開発が進んだ場合に、どのようなやり取りが可能となるのか。その姿は、ホンダが21日に公表したイメージビデオに詳しい。

イメージビデオにはナディアと呼ばれる女性、そしてAIのベンジャミンが登場する。ナディアが車に乗り込み、「ベンジャミン」と呼びかけると、ベンジャミンは「こんにちわ。ナディア」と返す。ナディアは「こんな晴れた日にふさわしいごきげんなBGMをよろしく」とベンジャミンにお願いをする。ベンジャミンが流した曲はヴィヴァルディの「春」。ナディアはなんだかしっくりこない様子を見せると、ベンジャミンは「お気に召しませんか?」と返す。

最初はナディアの趣味嗜好を判断できず、ベンジャミンは少し不器用な存在として描かれる。しかし、過ごした時間とともにベンジャミンは変わっていく。

ナディアは自立心が強い人だとベンジャミンは理解しており、彼女から求められるまでは助言や忠告は控えめにしたほうがいいと認識するのだ。車庫入れにナディアが苦心していても、やんわりとしかアドバイスをしない。そのほうがナディアの機嫌を損ねないことを理解しているからだ。

後日、ナディアはある男性とのデートに向かう。おしゃれをしたナディアはベンジャミンに「似合うかしら」と問う。すると、ベンジャミンと「とってもお似合いですが、本日は夕方から冷え込むので、もう少し暖かいお召し物の方が……」とアドバイスをする。ナディアは「ベンジャミン、おしゃれは"我慢から"なのよ」と反論する。

このイメージビデオからわかるのは、AIがドライバーのことを理解し、どのようなアドバイスが効果的かをAIが判断していることだ。そして、車載センサーやカメラをもとに、車庫入れの状況も把握する。さらに、インターネットから、天気や気温などの情報を取り入れる。一方で、ナディアはベンジャミンのアドバイスに反論し、自分の価値観を教え込む。ベンジャミンを単なるAIではなく、人間に近い存在だと捉えるような雰囲気で描かれている。

こうしたシーンを見ていくと、米国のドラマ「ナイトライダー」で描かれたドリームカー「ナイト2000」を想像するかもしれない。イメージとしてはそれに近いものと考えてよさそうだ。自動運転モードを利用しながら、AIが人と対話し、ドライバーが暇そうにしていたら、ポーカーゲームだってやってくれる。相棒、友人、そのような存在なのだ。

●「ナイト2000」はいつ実現するか
○いつ実現?

では、今回の共同研究で、ナイト2000のようなドリームカーがいつ実現できるのか。対話型AIと自動運転技術に絞って見ていこう。

まず対話型のAIについては、人型ロボットのPepperの現状を知るだけでも、それがまだ程遠いことがわかる。Pepperを人間に照らしあわせれば、心の発達は幼児程度とされる。Pepperはまだまだ未成熟であり、目の前の相手が信頼できる人か否か、といったざっくりとした判断はできても、社会的秩序は理解できない。イメージビデオにあるような、相手がどういった状況で、どんな立場にいるのか、そうしたことを踏まえた自然なコミュニケーションはこれから先のことになりそうだ。

自動運転技術についても、ホンダは2020年をメドに高速道路における自動運転の実用化を目指すとしているが、より複雑な状況が想定される市街地での走行はそこから先の話となる。国内メーカーの自動運転技術の実現に向けた取組みを総括的に見ると、高速道路での半自動運転の見通しが示されたばかりといった状況で、システムにすべてを委ねる完全自動運転に向けては、自動運転技術に加え、それを支える道路インフラの整備、法制面の整備も必要になる。このため、実現は2030年以降になるとも言われ、少し先のことになりそうだ。

ナイト2000のようなドリームカーの実現に向けてざっくりと2つの側面から見てきたが、現状は解決すべき課題が多い。しかしながら、自動運転と、Pepperそれぞれが行き着く先にたどり着けば、ドリームカーの実現は夢ではなくなるだろう。今回の共同研究は技術に明るくなくともナイト2000の実現が近づいていることを感じさせる。そうした点で大きな意味を持っているといえるのではないだろうか。

(大澤昌弘)