バイオプラ原料の増産に成功。ラン藻の遺伝子改変で有機酸生産量が最大で13倍に

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科学技術振興機構(JST)、明治大学、神戸大学、理化学研究所は、細菌の一種であるラン藻が光合成によって生産するバイオプラスチック原料の増産に成功したと発表しました。

化石資源に代わる資源確保の観点から、バイオプラスチック原料となる有機酸(コハク酸や乳酸など)を生産する研究の中で得られた成果のひとつ。ラン藻(シアノバクテリア)の遺伝子を改変して水素生産能力を低減した変異株を特定条件下で培養した結果、野生株と比べてコハク酸が約5倍、乳酸が約13倍に生産量が増加しました。本研究は、明治大学農学部 飯嶋寛子氏、理化学研究所 平井優美チームリーダー、同 近藤昭彦チームリーダー、同 白井智量副チームリーダー、神戸大学 蓮沼誠久教授、ポルト大学 タマニーニ教授らからなる共同研究グループによるもの。

本研究では、シネコシスティスと呼ばれるラン藻が持っているヒドロゲナーゼという酵素のたんぱく質を破壊することで、ラン藻が有している水素生産能力を低減した変異株を作り出しています。

シネコシスティスは元々、嫌気・暗条件(酸素濃度が低く光がない培養条件)において水素と有機酸の両方を生産することが知られていますが、変異株では嫌気・暗条件で水素の生産能力を減らした結果、有機酸の生産量が増加することがわかったという点に新規性があります。

ラン藻を用いた有機酸生産の利点は、生産された有機酸がラン藻細胞外に放出されることから細胞自体を破壊する必要がなく、また細菌であるために比較的増殖が速く、二酸化炭素を排出しない点です。

ラン藻は光合成も行うので、吸収した光エネルギーを使って取り込んだ二酸化炭素から有機酸を合成でき、さらに温室効果ガスの低減に寄与できる可能性もはらんでいます。

生物由来で有機酸を生産する手段としては、糖(炭水化物やセルロース)を発酵させる方法も知られていますが、糖はトウモロコシやサトウキビなどの可食部を原料とすることも多く、食料と競合する問題も抱えていました。

いいことづくめのようにも思えますが、今後の課題としては、二酸化炭素から有機酸への変換効率および生産物純度の向上と、ラン藻培養の効率化、生産に伴う消費エネルギーの低減、生産物の効率的な回収・精製方法の開発などが挙げられており、改善の余地も多岐にわたっていることから、産業の一翼を担う形での供給はまだ難しい状況といえそうです。

とはいえ今回発表された研究成果は、光合成による有機酸生産としては世界最高レベルとも謳っており、もしも安定してバイオプラスチック原料を増産できれば、バイオプラスチックの低価格化や化石資源消費の削減にも寄与するため、今後の研究開発の進歩に期待がかかっています。