認知行動療法から見た「不眠に陥りがちな人、再発しやすい人、治りにくい人」の特徴は?

写真拡大

不眠症で悩んだ経験がある人は、不眠が改善した後でも再発の可能性に不安を覚える人が多いといいます。「その不安によって再び不眠に陥ることもあるんです」と話してくれたのは、臨床心理士で早稲田大学人間科学学術院助教の岡島義先生。睡眠薬に頼らず、再発の可能性も低いとされる認知行動療法に詳しい岡島先生に、「不眠症になりやすい、再発しやすい、治りにくい人の特徴」について話を聞きました。

不眠症の原因は性格にある!? 多くの患者さんに共通する特徴とは

まず、不眠症になる人とならない人で、違いや傾向はあるのでしょうか。以前の記事で紹介したように、ホルモンバランスの関係から女性のほうが不眠に陥りやすいといわれており、また、悪い生活習慣もひとつの原因とされています。
 
しかし、最も大きな要因は「性格」にあると岡島先生。「完璧主義者や心配性の人は不眠に陥りやすいですね。そういう人は“眠れない”ということを必要以上に意識してしまいがちです。“今日は眠れるかな”と毎晩不安に感じたり、眠れないときに時計を細かくチェックしてしまったり…。また、日々の疲労感が必ずしも不眠と関連しているわけではないのですが、心配性な人は日中に感じた小さな支障もすべて不眠に結びつけて考えてしまいます。すると、余計に“眠れない”ということを意識してしまい、悪循環が生まれてしまうんです」(岡島先生)
 
多くの人は、少し眠れない程度では気にすることもなく、眠れていないことにすら気づかないこともありますが、不眠症に陥りやすい人は過度に気にしてしまいがちとのこと。
 
「また、子どもの時に遠足の前日など、イベントの前夜に眠れなかったという経験がある人は多いはずです。しかし、大人になってもそれが続いている場合、不眠になりやすい傾向がありますね」(岡島先生)
 
これは、良くも悪くもストレスを感じているため。多くの場合は成長するに従い解消されていきますが、中には大人になってもストレスの感じやすさを引きずってしまい、ちょっとしたストレスで眠れなくなるという人も。もちろん、こうした特徴を持つ人すべてが必ず不眠症になるわけではないので、心配し過ぎる必要はないそうです。

治療が終わったのに…再発しやすい人はどんなタイプ?

次に、不眠が再発してしまう人の特徴について聞きました。岡島先生によれば、睡眠薬だけで治療をしている人は、再発の可能性が高いそう。また、すでに2〜3種類以上の薬を服用している人は、認知行動療法の実践自体も難しくなるようです。
 
「薬をたくさん飲んでいる人は、薬の“持ち越し効果(前の日に飲んだ薬の効果を翌朝まで引きずってしまうこと)”によって、朝起きてもしばらく眠気がとれないことがあります。すると、睡眠スケジュール法の重要なポイントである“決まった時間に起きる(布団から出る)、 “朝、日の光を目からしっかり取り入れる”ということができません。そのため、睡眠覚醒リズムが安定せず、夜に眠くなりにくく、眠るためにまた薬が必要になるというスパイラルを繰り返してしまい、なかなか薬を減らすことができないんです」(岡島先生)
 
薬物治療の場合、薬が効かなくなれば病院で別の薬が処方されるため、数種類の薬を同時に服用している人も珍しくありません。しかし、多くの人は薬を減らしたい、飲みたくないと思っています。そのため、薬のおかげで眠れるようになってきたのに、不眠が改善したと考え、独断で薬を減らしたり、やめてしまったりすることがあるのです。すると、大きな反動がきて、不眠症が再燃・再発したり、薬以外の対処方法を知らないために睡眠薬を常用してしまいます。
 
認知行動療法は薬を使用しない不眠改善方法のため、再発の危険性は低いものの、それでも再びカウンセリングを受けに来る人がいるそうです。
 
「一度治療が終わったはずなのに、すぐにまた来院される患者さんもいます。治っているのに『また眠れなくなってしまうかもしれない』という恐怖が消えないんですね。そういう患者さんは、感情に飲まれやすいタイプの人が多い傾向にあると言えます」(岡島先生)
 
こうした場合、不眠症自体が再発しているのではなく、本人が感じる不安に原因があります。そんな場合は、前回紹介したように独り立ちを後押しするカウンセリングを行っていくそう。

不眠のスパイラルを止めるには?

また、再発ではなく、不眠症が治りにくい人にも3つの特徴があるといいます。それが、寝る前にお酒を飲む、寝床でテレビを見る、起きるたびに時計をチェックしてしまうなどの「行動的特徴」、眠るときに不安を感じやすい、余計なことを考えてしまいやすいなどの「認知的特徴」、身体に力が入りやすい、緊張状態になりやすいなどの「身体的特徴」です。この3つの特徴が連動して不眠状態が続いてしまいますが、その根幹には先ほどの心配性や完璧主義といった性格が関係しているのだとか。
 
「認知行動療法は基本的には習慣に働きかけるものなので、悪い習慣を止めることで眠れるようになっていく人がほとんどです。ただ、心配性の人の中には、例えば眠れるかどうかの不安が強すぎて、夜が怖い、布団を見るのも嫌、という感覚を持ってしまう人がいます。眠れないまま朝を迎えて仕事へ行く、そして眠れなかった記憶からまた夜が怖くなる…という悪循環に陥っているような場合は、精神的な部分にアプローチしていく必要があります。そのため、治療の初期段階で患者さんを取り巻く問題がどのようにつながっているかを探る“ケースフォーミュレーション”を行い、アプローチの方針を決めていきます」(岡島先生)
 
比較的軽い不眠症であれば、生活習慣の改善で治ることが多いそうですが、それだけで治らない人は重めの症状の可能性があり、精神面の改善も必要となります。そのため、認知行動療法では、患者さんの考え方自体を変えていくようなカウンセリングも行います。
 
正しい睡眠習慣を心がけているはずなのに、一向に眠れない…そんなあなたは、不眠を維持するスパイラルに陥っているのかも? 認知行動療法による治療を検討してみるとよいかもしれません。
 
監修:岡島義(早稲田大学人間科学学術院助教)
 
【認知行動療法については、下記の記事もご覧ください】
・不眠症ってどんな症状?セルフチェックの判断基準
・「不眠症かも」と不安に感じたら? 自宅で試せる睡眠チェック方法
・睡眠薬に頼らないで不眠症を改善する「認知行動療法」とは?
・不眠改善への第一歩!正しい睡眠習慣と間違いやすいNG習慣
 

photo:Thinkstock / Getty Images