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熊本地震が発生した直後に、「動物園のライオンが逃げた」などとウソの内容をツイッターに投稿し、動物園の業務を妨害したとして、神奈川県に住む20歳の男性が7月20日、偽計業務妨害の疑いで逮捕された。

報道によると、男性は4月14日の熊本地震の発生直後に、「地震のせいで、うちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが」などとウソの内容をツイッターに投稿し、熊本市動植物園の業務を妨害した疑いがもたれている。

投稿のあと、熊本市動植物園には問い合わせなどの電話が100件を超え、獣舎などの点検がスムーズに行えなかったほか、警察にも「ライオンが逃げているので避難できない」といった相談が相次いだ。警察はサーバーを解析するなどして捜査を進めた。男性は警察の調べに対し「悪ふざけでやってしまった」と供述し、容疑を認めているという。

災害時にデマを流し、偽計業務妨害をしたとして逮捕されるのは全国で初めてだと報じられているが、なぜ今回は逮捕までにいたったのか。インターネットの問題に詳しい清水陽平弁護士に聞いた。

●「正常な業務に支障を来す状況になった」

「デマを発信すること自体、全てが違法かというと必ずしもそうではありません。誰にも迷惑をかけない類いのものであれば、また、デマであったとしても誰にも見向きもされないものであれば、問題にはされません」

清水弁護士はこのように述べる。今回のケースは、なぜ問題とされたのか。

「デマを発信することにより他人に迷惑を与える行為は、業務妨害罪が成立する可能性があります。

具体的には、デマを流すことにより本来不要であった業務を発生させたり、正常な業務に支障を来すような状況になった場合です。

本件では、100件を超える電話の対応のほか、獣舎などの点検がスムーズに行えなかったといった正常な業務への支障が生じているため、業務妨害罪が成立するといえるでしょう」

●逮捕まで必要な事件だったのか

逮捕されたケースは全国で初めてということだが、なぜ、逮捕にまでいたったのか。

「逮捕をすることができる場合は、罪証隠滅のおそれや、逃亡のおそれがある場合などと限定されているので、形式的にはこれに当たると判断したからといえるでしょう

もっとも、本件では、すでにサーバーを解析するなどして証拠は押さえており、本人も容疑を認めているようです。さらに、業務妨害罪自体が3年以下の懲役ということで、そこまで重罪というわけではありません。

罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれは基本的にないといえる場合といえそうです。そのため、同じような事件を抑止するための『見せしめ』的な要素があるように感じざるを得ません」

逮捕は、やりすぎだったということだろうか。

「そうではありません。本人は面白半分でやったことであろうと思いますが、被災地が混乱している中で、さらに混乱させるようなデマを流すことは、当然許されるべきことではありません。その責任が追及されることは当然と思います。その意味で、このようなものを摘発することは、よいことと思います。

ただ、他の、今回のケースより悪質な事件においても、逮捕がなかなかされないものも多い中、事件類型として逮捕が必要な事件とは必ずしも思えません。

また、本件は実名報道がされているようですが、果たして実名報道まで必要なものなのかという考えもあります(そもそも実名報道否定派ですが)。

摘発すること自体についてはよいと思うものの、このような恣意的とも思える運用には、少々疑問があります」

清水弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2015年6月10日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル(弘文堂)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp