音楽は昔から我々の心身を癒やしてきた。近年は手術前後の痛みを大幅に緩和することが示され、オペ室に音楽が響き渡る病院もある。

 先日、ドイツ医師会誌に「循環器領域では、どんなジャンルの音楽が効くか?」という研究報告が掲載された。

 研究者は、心血管系疾患の既往がない120人(男性60人、女性60人)の参加者を、音楽を聴く群(音楽群)と、静けさのなかで横たわる群(安静群)に分けた。

 音楽群はさらに、モーツァルト、ヨハン・シュトラウス2世(美しき青きドナウの作曲者)、そして北欧のポップグループABBAの音楽を聴く3群に分かれ、それぞれ25分間、音楽に耳を傾けた。

 全参加者は、音楽と静けさを味わう前後で血圧と心拍数、そしてストレス・ホルモンのコルチゾールの血中濃度を測っている。

 その結果、モーツァルト群は音楽を聴いた後、上の血圧が平均4.7mmHg低下。シュトラウス群は3.7mmHgの低下を示した。一方、ABBA群は1.7mmHgの低下で、安静群の2.1mmHg低下に及ばなかった。

 また、心拍数はモーツァルト群、シュトラウス群、そして安静群で有意に低下。しかし、ABBA群は効果が認められなかった。

 とはいえ、ストレスホルモンの血中濃度は安静群よりも三つの音楽群で著しい低下が認められている。また、この効果は女性よりも男性で顕著であった。

 研究者は「ABBAの音楽の何が違ったか?」を考察。ネガティブな歌詞の影響を指摘している。歌詞のない「インストゥルメンタル」に歌詞が加わると、脳の活動領域が変化して歌詞がない場合とは異なる感覚や感情が湧き上がり、心身が反応するというのだ。

 また、循環器領域の疾患リスクを抑制する音楽の条件は、(1)周期的なリズム、(2)印象的なメロディライン、(3)歌詞がないこと、(4)ボリュームやリズムの大きな変化が少ない、などを挙げている。

 案外、日本の雅楽はこの条件に当てはまりそうだ。おまけに睡眠導入効果(?)も期待できそうであるし。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)