『日本の色 売れる色には法則があった!』(桜井輝子/朝日新聞出版)

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 料理を盛りつけるとき、「赤・黄・緑」の3色が入ると美味しそうに見えます。栄養学では「食の三原色」と呼ばれ、色彩豊かな食事は栄養面でもバランスがよいとされています。古来、日本人は色を巧みに用いて生活に取り入れ、独自の感性を磨いてきました。

『日本の色 売れる色には法則があった!』(桜井輝子/朝日新聞出版)は、誰もが知る大ヒット商品を取り上げ、パッケージやデザインに隠された色の法則をひもときながら、身近なものを魅力的に見せるカラーコーディネートを紹介しています。消費者に愛されロングセラーとなっている商品には、企業のたゆまぬ努力と色によるイメージ戦略があったのです。

 ではいったいどんな秘密があるのでしょうか。みなさんも一度は食べたことがある有名商品をいくつか取り上げてみましょう。

 世界初のインスタントラーメンである日清食品の「チキンラーメン」のパッケージは、開発者で創業者の安藤百福氏が1958年に発売して以来、オレンジを貫いています。オレンジは食欲をそそる色の代表、そして小麦の麺をイメージした白線のストライプ柄が手軽さをアピールしています。ロゴのこげ茶色は安心感を高める効果もあるといいます。正面の写真がシズル感をかきたて、店頭で食べてみたいと思わせるデザインになっているのです。

 ロッテの「クールミントガム」も、1957年の発売からデザインを幾度かリニューアルしていますが、ベースカラーは変わらず、南極の空気と氷山の冷たさを清涼感のある青と白で表現しています。ベースカラーと対照的な色相である黄色の三日月でアクセントを加えているのがポイント。マスコットキャラクターのペンギンは、ロッテが1956年に第1次南極観測隊のためにガムを製造、贈呈したことがきっかけといわれています。

 キユーピーの「キユーピーマヨネーズ」で特徴的なのが赤色の網目模様。1958年、ポリボトル容器に詰めて発売された当時に流行っていた銀座の洋食レストランのテーブルクロスを参考にしたといわれています。清潔感のある白に温かい雰囲気の食卓や力強い愛情を感じさせる赤が印象的です。赤はマヨネーズ自体の色に映える色でもあり、滑らかでやさしい口当たりを想像させるのも、マヨネーズをこよなく愛するマヨラーのみなさんを虜にする理由なのかもしれません。

 ネスレ日本の「キットカット抹茶」は、全体の抹茶色が落ち着きと安らぎを与え、濃淡でお茶の深みを表現しています。海外でお茶といえば一般的には紅茶をさし、抹茶味は日本限定販売ということもあり、「緑茶=日本らしさ」を感じさせるのです。ロゴの朱色も抹茶色を引き立て、より日本を感じさせています。空港の土産物店などで訪日外国人がまとめ買いしていくというのも納得できます。

 永谷園の「お茶づけ海苔」は、1952年の発売当初から変わらず、歌舞伎の定式幕をアレンジした柄になっています。「黄・黒・緑」という個性の強い色の組み合わせにセパレーションカラーとして赤色をいれることで、すっきりとした印象に見せています。また「赤・黄・緑」という「食の三原色」が揃い食欲をわかせています。定式幕の定式とは「常に使われるもの」という意味。そのカラーの通り、いまやお茶づけは、小腹が空いたときや夜食の定番といっても過言ではありません。

 本書で紹介している色の使い方は、ファッションや部屋の模様替えなど、日常の様々な場面で活かすことができます。

 たとえば食卓のテーブルにオレンジの食器や小物があると食事が華やかになりますし、寝室には緑色のクッションなどを置くとリラックスできます。夏向けのファッションなら青や白をベースカラーにすると清涼感や清潔感を感じさせます。個性的な強い色のシャツやズボンの組み合わせも、ネクタイやベルト、スカーフなどでセパレーションカラーを取り入れると印象が小粋に見えます。

 普段の身の回りで使う日用品や洋服、家具など、いつも買い物選びで悩んでしまうという方は、この本のカラーコーディネートを参考にしてみてはいかがでしょうか。

文=愛咲優詩