[特別対談]世界に挑む者へ…中田浩二×植田直通「すべてをぶつけて帰ってくる」

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 鹿島アントラーズでチームメイトとしてプレーした中田浩二氏とDF植田直通。ルーキーイヤーから成長する後輩の姿を見てきた先輩は、手倉森ジャパンの守備の要に大きな期待を寄せ、先輩の姿を見て成長してきた後輩は、自らの力を世界に証明しようと燃えている。世界大会を経験した者から、この夏の世界大会に挑む者へ言葉を届ける――。

真面目だし吸収していた(中田)

試合に出続けて成長(植田)

――13年に植田選手が鹿島に加入してチームメイトとなりましたが、最初に出会ったときの印象を教えて下さい。

中田「このまんまでしたね(笑)。本当に大人しい感じでしたし、真っ直ぐな好青年という印象です。ナオ(植田)が在学していた大津高の監督が、帝京高の先輩ということもあって、ナオのことを頼まれていた部分もありました。だから、普通に話しかけていたし、世話を見るような形でしたよ。プレーヤーとしては、粗削りと言えばまだまだ粗削りでしたが、スピードもあって、ヘディングや1対1も強く、本当に能力が高いなというのは見てすぐに分かりました」

植田「僕も監督から『鹿島に入ったら浩二さんが面倒を見てくれるから、そんなに緊張することなく行ってこい』と言われていました。ピッチ外の部分だけでなく、プレー中も浩二さんがよく話しかけてくれたので、チームにもすんなり溶け込めたと思います。浩二さんの存在は大きかったですね」

――植田選手の目にプレーヤーとしての中田さんはどのように映っていましたか。

植田「どのポジションでもできるという印象が強かったです。僕なんかは高校のときに身体能力だけでプレーしてきていて、やっぱり浩二さんはすごい考えながらプレーしていたので、それは見ていて、すごく勉強になりました」

中田「真面目だし、いろんなものをすぐに吸収しようとしていたよね。あれから3年経ったけど、ナオの成長は本当に見て取れるよ。最初の頃は自分でも言っていたように身体能力が高いから、FWがいればそこに対して行くという感じで、ポジショニングとかはあまり気にしていなかったと思う。でも、試合を重ねて経験を積んでいき、自分の中でいろいろ考えることでポジショニングも向上していった。あとは、見てのとおりの口下手だけど(笑)、コミュニケーションの大事さを含めて、指示を出すようになってきたから、今まで以上にすごく頼もしく感じています。今年は先発で試合に出続けているし、手応えもあるんじゃない?」

植田「やっぱり、試合に出続けないと自分自身の課題も見えてきません。課題も見つかっているので、試合に出続ける大事さを感じているし、試合に出続けているからこそ自分が成長できていると思います」

中田「試合に出ていないときも学べることはあるけど、やっぱり試合に出続けることが一番大事だと思う。試合でできたことには自信を持てて、逆にできなかったプレーは自分の中で覚えようとするし、練習で修正していけるから。去年ナオはなかなか試合に出られずに、メンタル的に少しへこんでいたよね。だから、ピッチ上でもちょっと弱気なプレーがあったし、ナオらしさもあまり出せていなかった。でも、最終予選を経て、今年はすごい自信を持ってやれている分、良いプレーが増えてきていると思う」

――厳しい最終予選を経験したことで、植田選手自身も成長を感じられますか。

植田「最終予選では、プレッシャーが懸かる中でプレーしましたが出場権を取れたし、優勝もできました。タイトルを取れたことがすごく自信になっているし、あのときのメンバーは、どこと対戦しても自信を持ってやれていると思う。僕自身も今はJリーグでプレーしている中でも、すごく自信を持ってやれているので、あの大会は自分自身にとっても、すごく大きなものだったと感じます」

中田「厳しい状況の中で勝ち取ったというのは本当に大きかったと思うし、一つ上のステップに行けたんじゃないかな。ナオたちの世代はなかなか世界大会を経験できていなかったから、自分たちがどこまでできるか分からない中でスタートしたと思うし、周りも「何大会連続出場」と本当にかわいそうなくらいプレッシャーを掛けていたでしょ(笑)。でも、勝利を重ねるごとに自信をつけていったのは、試合を見ていた人たちは本当に感じたと思う。あそこまで劇的に変わるチーム、成長したというのを見れるチームもないんじゃないかな」

植田「大会前はすごく厳しい声を聞いていたし、連続出場のプレッシャーや負けたらチームが解散というプレッシャーもあって、初戦前には皆にも緊張があったと思いますが、一戦一戦勝つたびに自信がすごくついてきました。勝利する中でも、その試合で出た課題を修正しながらの連戦だったので、チームが成長しながら結果を出せたと思います」

中田「初戦の北朝鮮戦はナオが先制点を取ったけど、終始相手に支配されていた試合だったと思う。それが決勝戦になったら、韓国相手に0-2から逆転勝ちできるまでたくましくなっていたということは、相当成長したと思うよ」

日本にはあまりいないCB(中田)

強さでは誰にも負けない(植田)

――4年に一度の世界大会をサッカー選手として、どういう位置付けとして捉えていましたか。

中田「もちろんチームが勝つことが大事ですが、個人的には世界を相手に、どれだけ自分ができるか試せるのをすごく楽しみにしていました。僕らの年代にはすでに有名な選手がいたから、そういう世界的な選手を相手に何が通用して何が通用しないのか、実際に世界は今どうなっていて、どれくらいの選手がどういうプレーをするのかを肌で感じられることを楽しみにしていました。ナオはどう考えているの?」

植田「僕も、今できることを海外の選手にぶつけてみて、どういうことが通用するのかを確かめたい大会でもあると思っています。チームとしても、前回大会のベスト4を越えなければいけないと皆が思っているので、チームとして結果を出しつつ、自分も成長する大会にしたい。最終予選で皆も自信をつけたと思うのでやれないことはないと思っているし、僕自身がステップアップするためにも、すごく大事な大会になると思います」

――世界を相手にしたとき、予想以上のスピードやパワーを持った選手と対峙することもあると思います。どのように対応してきましたか。

中田「僕はどちらかというと能力が高い選手ではなかったから、例えばデカい相手に対しては一歩引いてトラップしたところを狙おう、体をわざと先にぶつけてバランスを崩させて周りにボールを拾ってもらおうとか、足の速い選手に対しては間合いを考えながらプレーしていました。でも、ナオに関して言えば別にそういうプレーをしなくても、正面でガンと当たっても十分に勝てる選手だと思う」

植田「僕は強さというところでは誰にも負けない自信があります。だから、そういう戦い方に引きずり込んでいけば勝てるという自信があるし、そういったところで世界と勝負してみたいですね」

中田「思った以上に強かったり、速かったりする選手もいると思うけど、意識の中である程度、強さや速さを想定しておけば十分にやれるはず。ナオはそれだけの能力を持っているし、日本にはなかなかいないディフェンダーだと思うから、世界大会で自分らしさをアピールしてほしいな」

――日本人チーム、日本人選手の良さを改めてどういう部分だと感じていますか。

中田「皆でまとまり、規律を持ち、団結できるのは強みだと思うし、海外で活躍する選手が多くなったように、技術の部分は世界を相手にしても劣っていないと思う。だから、あとはメンタルの部分が重要です。弱気になるのではなく、強気に大会に入っていけるかどうか。そういう意味では、ナオみたいな強いメンタルを持っている選手がいるのは大きいと思うし、周りを引っ張っていってほしい」

植田「僕はあまり口で言うタイプではないので、プレーで引っ張っていきたいと思っています。僕が相手FWとガンガン競り合って、はね返す姿を見せられれば、皆も乗ってくると思うし、あいつが戦っているなら俺らも戦わないと、という思いにさせるくらいのプレーを僕がしなければいけない。相手が世界だろうが、僕は今持っているものをすべてぶつけたいです」

――世界を相手に戦うときにスパイクに求めるものを教えて下さい。

中田「プレーのしやすさ。そういうのが一番いいと思う。スパイクは体の一部だし、自分のパフォーマンスを上げてくれるものだと思うので、当たり前かもしれないけど、気にならないのが一番だから、ずっと履いているスパイクなら問題ないと思う」

植田「頑丈で履き心地のいいものが良いですね。僕は、いつも踵らへんを気にするので、そこのフィット感も大事にしています。今履いているスパイクは、本当にしっくりきているので満足しています。世界大会仕様の真っ赤なスパイクですが、すごく気持ちが入ると思うし、僕も熱い気持ちを持って戦えるはずです」

中田「格好いいじゃん、シンプルで」

――最後に中田さんから五輪を戦う植田選手にエールをお願いします。

中田「ナオには本当に期待しているし、ナオのポテンシャルを世界大会の舞台で出してほしい。やっぱり日本のディフェンダーは、世界ではそこまで評価されていないと思うし、個で止めるというよりもチームで止めることが多いと思う。だけど、ナオは本当に一人で止められるし、日本にもこういうディフェンダーがいるんだっていうのを見せ付けてほしいですね」

植田「世界を相手にしても強さという部分にはこだわっていきたいし、世界と戦っても完璧に相手をつぶせる選手になりたいと思っています。日本人のCBが世界で活躍するというのはすごく難しいことだと思いますが、そこで活躍できるくらい成長をしたい。世界のすごく有名なチームで活躍している選手と対戦してみて自分がどこまでやれるかを試したいし、本当に今持っているものをすべてぶつけて、相手に何もやらせず、しっかりと良い結果を出して日本に帰ってきたいです」

中田「世界大会に出たら自分が知らなかった世界を肌で感じられるので、本当に良い経験ができると思う。ただ、この年代はその先も見据えてほしいと思っているので、今回経験することを後の日本代表、より大きな世界大会へとつなげていってほしいです。僕自身もナオが、五輪に出てくるFWに対して正面から止めにいく、つぶしにいくプレーを楽しみしているよ。日本のファンやサポーターもナオにはそういうプレーを求めていると思うから、熱いプレーで活躍することを期待しています」

(取材・文 折戸岳彦)