(写真提供=SPORTSKOREA)

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米国のスポーツデータ分析会社『グレイスノート』によると、今度のリオ五輪・男子柔道73kg級のチャンピオンに、韓国のアン・チャンリム(安昌林)が有力らしい。それもそのはず、彼は現在国際柔道連盟(IJF)73kg級世界ランキング1位の選手だ。

1994年3月生まれの22歳。京都出身の在日コリアン3世であるアン・チャンリムは、空手道場を運営する親の元で小学1年生から柔道を始めた。

筑波大学に籍を置いていた2013年には全日本学生選手権大会を制覇する。

アン・チャンリムが帰化を断った理由

当時、恩師や日本代表チームの監督は、揃って日本への帰化を進めたらしい。

彼が韓国籍ゆえに苦労してきたことを誰よりも知っていた父親もまた、帰化を進めた。しかし、「自分は韓国人だから」と断ったアン・チャンリムは、2014年に韓国へ渡った。

「韓国に来た理由はたったひとつ。オリンピック金メダルを取るためです」

その言葉通り、アン・チャンリムは早速国内の選手権で優勝。韓国代表の練習パートナーとしてテルン選手村入りを果たした。

(参考記事:韓国スポーツの強さの源 韓国スポーツスター養成所「テルン選手村」とは?

実は、過去にも彼と似たような道を歩んだ人物がいる。韓国ではもう“サランちゃんのパパ”でお馴染み、秋山成勲だ。

在日韓国人4世として大阪で生まれた秋山は、近畿大学卒業後に韓国代表としてオリンピック出場を果たすべく、単身で韓国に渡り、釜山市庁所属選手として韓国柔道界に飛び込んだ。

ただ、韓国柔道界に馴染めず、さまざまな差別にも耐えられず日本に戻り、2001年に日本に帰化した。秋山は日本代表として出場した2002年釜山アジア大会で金メダルに輝いている。

アン・チャンリムは、韓国での生活をどう感じているのか。

「最初は(韓国社会の)ルールが全然分かりませんでした。でも同僚たちが親切に教えてくれたおかげで、だいぶ慣れました。韓国の厳しい上下関係に対しても、それを学ぶことでもっと礼儀正しい人間になれたので、良かったと思います」

選手村に入村した後も、ランキングポイントを稼ぐために国際大会を転戦した。2014年にはグランプリ・チェジュでシニア国際大会初優勝。2015年アジア選手権優勝、2016年グランドスラム・パリ優勝、など。

そうした努力もあって、今年2月にはついに世界ランキング1位まで上り詰めた。

わずか2年でオリンピック金メダル候補に急浮上したアン・チャンリム。韓国柔道界からは絶大な期待を寄せられているが、乗り越えなければいけない壁もある。

その壁とは、今まで一度も勝てなかった日本の大野将平だ。アン・チャンリムと大野は、リオ五輪でも対戦する可能性が高い。

アン・チャンリムは言う。

「全然勝てなかったからって、悔しいとは思いません。僕の判断ミスで試合がうまくいかなかったし、彼について研究もしていなかった。僕の実力を一段と上げれば、十分勝てる相手だと思います」

7月19日に行われた『2016リオ・オリンピック韓国選手団結団式』では、こんな決意も表した。

「最初は韓国での厳しい練習についていけず、大変でした。韓国の練習は、世界で一番辛い。だからこそ、いつも通りやれば必ず金メダルを取れると思います」

日本で生まれ育ち、韓国でその才能を開花させたアン・チャンリム。様々なものを背負ってリオへ向かう彼を、しっかりと見届けたい。

(文=S-KOREA編集部)