ほめ過ぎると疑心暗鬼に

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欧米で生まれ、‘90年以降は日本にも導入。育児の流行として君臨して久しい「ほめる子育て」。叱らずにほめて育てるのが情操教育にも良い、穏やかな子になる、自己肯定感(自分の存在や能力を認める)が育まれるので、大人になって成功する…などと囁かれ、近年は虐待やしつけの線引きも難しくなっているため、ますます「叱らずにほめる子育て」がよしとされる傾向にあるが、その一方で、「ほめてばかりいると、根性や忍耐がない子どもに育つ」と考える教育評論家も多く存在する。それでは「ほめる子育て」は本当に間違っているのだろうか? 正しいほめ方とは? 子育てカウンセラーとして高い人気を誇り、「心がラクになる子育て」(PHP文庫)を出版した保育士おとーちゃん・須賀義一氏を直撃した。

●間違った“ほめ方”とは? “誘導のほめ”とは何か?

「非行が社会問題化した’80年代。親から過剰に抑圧されたり、逆に見放されて放置された子どもたちが非行に走り、大きなムーブメントになりました。これではいけないというところから、“叱るばかりじゃなく、ほめることが大事”という子育て論が導入されたという背景があり、それはいまだに語り継がれ、ほめる子育て自体は間違っていないと考えます。それまで威圧的だった親が子への関わり方を変え、肯定的な方法で子どもを伸ばしていこうというアプローチにシフトチェンジしたわけですね。ですが“ほめる”ということは必ずしも万能ではなく、やり方を間違えると、かえって育児を難しくしてしまう可能性があります」(須賀氏 以下同)

それでは、親がやってはいけないほめ方とは?

「私は“誘導のほめ”と呼んでいますが、大人が意図的に“理想の子ども”に近づけようとして、作為的にほめるのはあまり良くないと考えます。例えば、よく使いがちな“勉強して偉いね”という言葉。これはたいていのお母さんたちが、“こうなればいいのに”という姿を想像しながら、作為的に使うほめ言葉ですよね。この親の作為(=操縦)を、子どもはちゃんと感じるんですね。大人が心から感じた素直なほめ言葉と、子どもを”こうしよう”と思って使うほめ言葉の些細な違いを、子どもはちゃんと読み取るんです。ほめておだてれば、子どもはきっとやるだろう…ある意味では子どもをみくびって軽視していることにもなりえます。でも子どもはちゃんとわかっています。作為的なほめを浴びせていると、やがて子どもは“大人の言っていることは胡散くさい”“本当に自分には能力があるのだろうか?”と不信感を持つようになり、大人の“こうしてほしいんだよ”というアプローチが通じにくくなってしまう可能性があります。疑心暗鬼にかられてしまうのです」

さらに子どもたちの根深い問題につながる、親のほめ方があるという。

「過程を見ず、結果だけをほめる。さらに“100点を取った時しかほめない”など、ほめるレベルを最大限に引き上げてしまうことは大変危険です。テストの点数が100点でなければほめもしないし、ニコリともしない…子どもは大好きな親にほめられたいから、100点を取るために精一杯頑張るわけです。でも、子どもが頑張るエネルギーには限界があります。今は、勉強や習い事、いろんな早期教育がブームになっているので、親は良かれと思って様々なことを子どもに体験させますよね。子どもにいろんなスキルを身につけさせる過程の中で、親はほめ言葉を最大限に利用して使うわけです。ほめ言葉が悪いとは言いませんが、ほめるのであれば、結果はどうあれ、その過程に着眼点を置いて声をかけてあげてください。ありのままのお子さんを認めてあげる。親の間違えたほめ言葉は、かえって子どもの心の問題を作ることにもなりかねないのです」

親が良かれと思い、ほめのレベルを引き上げると、子どもは頑張る能力をすり減らし、やがて鬱やチック、キレるなど、様々な症状が出てしまうことも。心のエネルギーをためる幼少期こそ、間違ったほめる育児には気を付けたいものだ。

(取材・文/吉富慶子)