「幸せになりたい」とは誰もが願うこと。では、どうしたら幸せになれるのでしょうか?

厚生労働省が行った「全国家庭児童調査結果(平成21年度)」によると、「今幸せだと思うか」という質問に対して、「とても幸せだと思う」と回答したのは、小学校5〜6年生で55.7%、中学生が41.3%、高校生等で38.7%。

年齢が上がるにつれ幸せを感じている人が減少しているのが気になるところです。

誰もが抱く「幸せになりたい」という根本的な疑問を解明しようと、ハーバード大学が長期にわたる調査を続けています。

その結果、70年以上にわたる追跡調査で「幸せだと感じるために必要なたったひとつの要素」が浮かび上がっているそうです。

■724人に行われた「史上最も長い追跡調査」

調査を行っているのは、ハーバード大学の「グラントスタディ」と名づけられた研究プロジェクトで、1938年にスタートしました。

70年以上にわたって継続されているこの調査は、史上最も長い追跡調査とされています。現在は、精神科医及び精神分析医で禅僧でもあるロバート・ウォールディンガー博士が4代目のリーダーとしてこのプロジェクトを指揮しています。

1938年当時、ハーバード大学の2年生男子と、ボストンの貧困環境で育った10代の男性の2つのグループに分け、合計724人に対して研究がスタート。

2年ごとに聞き取り調査を行う形で調査が進められました。現在も存命なのはそのうち60人。すべての人が研究への協力を継続しています。

通常こうした長期間にわたる研究は難しいとされていますが、被験者の協力や、研究者が代替わりをしても熱意をもって研究に取り組んでいることなどから、幸運にも調査を続けることができたということです。

■人を幸せにするのは「よい人間関係」だと判明

この研究では面談調査以外にも、血液検査や脳スキャンを含めたあらゆる健康診断をしたり、家族との面談も行ったりと、被験者について様々な角度から調査が行われました。

研究開始当時10代だった男性たちはその後、様々な職業につきました。

工場で働く人もいれば、弁護士や医師になった人やアメリカ大統領になった人もいました。

そのように長きにわたって同じ人物をあらゆる角度から追い続け、人生に於いてなにが起こっているのかを調査した結果、「最終的に人が幸せになるにはなにが重要なのか」が浮かび上がってきたそうです。

それは、「よい人間関係は人を健康にし、幸福にもする」ということでした。

■調査でわかった「よい人間関係」の3つの教訓

調査のリーダーであるウォールディンガー博士は、さまざまな専門分野を持つ人物がプレゼンテーションを行うTEDカンファレンス及びその後のインタビューで、「よい人間関係」について、この調査から3つの教訓が得られたと話しています。

1つ目は「社会的なつながりが重要で、孤独は人を殺す」ということ。人とのつながりが少ない人よりも、家族や友人など人とのつながりが多い人のほうが幸福を感じやすく、健康的で長生きしたそうです。

また、自ら望んではいないのに孤独な状態にある人は、幸せを感じにくいばかりか、健康面においても問題を抱えやすく、脳の機能も低下しやすい傾向があることがわかりました。

2つ目は「大事なのはつながりの“数”ではなく“質”である」ということ。どれだけ多くの友だちがいると自慢していても、それぞれのつながりが希薄な場合は、人生の満足度が低いと感じる人が多かったのだとか。

80代を過ぎて肉体的に不便を感じるようになっても、よい人間関係を築けている人はより多くの幸せを感じたそうです。一方、築けていない人は肉体的な痛みをより多く感じる結果になったといいます。

ウォールディンガー博士がさらにつけ加えたのは、「よい人間関係を築ける人に共通するのは、柔軟性があること」という点です。

自分の思うように他人を動かそうとする人は、人間関係でトラブルを抱えることが多く、柔軟性があって他人の考えを尊重できる人は、人間関係をうまく維持したり、困難を乗り越えたりできると語っています。

じつは日本でも、ソニー生命が50歳〜79歳の男女に対し「シニアの生活意識調査」を行っています。

ここでも「生きがい・やる気の源」について尋ねられたときの回答は、複数回答で「パートナー(妻・夫・恋人)」が43.9%、「子ども・孫」が43.3%、「友人」が22.6%など、関係性についての項目が高い割合で目立っています。

日本においても、やはり「よい人間関係」が、幸せを感じるために需要な要素であることは変わらないようですね。

(文/宮本ゆみ子)

 

【参考】

※What makes a good life?

※平成21年度 全国家庭児童調査結果-厚生労働省

※シニアの生活意識調査(平成25年)-ソニー生命保険株式会社