■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 BMWが東京・お台場にオープンした「BMWグループ東京ベイ」のイベントに行ってきた。オープン初日はプロのドライバーとライダーによるエキジビション走行やファッションショーなども行われ、多くの招待客で賑わっていた。ファッションショーは、いま最も先鋭的で全世界的に評価の高い日本のモードブランド「アンリアレイジ」のデザイナー森永邦彦氏自らが指揮するものだった。

なぜBMWはお台場に巨大な複合型ショールームを作ったのか? なぜBMWはお台場に巨大な複合型ショールームを作ったのか?

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 建物は大きくて立派なので、青海交差点のはるか手前からその姿を認めることができる。敷地面積は2万7000平方メートルもあるという。隣の国際交流館との間には緑の遊歩道もあり、全体的に余裕をもった設計でプレミアム感たっぷりだ。ハイパフォーマンスモデルを専門に製造する「BMW M」社公認のドライビングスペースが後ろに控え、400名収容可能な会議ホールやカフェなども備わった複合型ショールームだ。

なぜBMWはお台場に巨大な複合型ショールームを作ったのか?

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 BMWは「ブランド体験型販売拠点」と称している。ショールームではBMWとMINIのすべてのモデルに触れることができるというのが売り物だ。クルマは約100台、バイクは約50台が用意されている。それらは、Webサイト(BMWグループ東京ベイ)から事前に予約すれば、周囲の公道で試乗できる。さっそく筆者もチェックしてみたが、早くも人気モデルは予約で埋まっていた。

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 と、ここまで聞くと、メルセデス・ベンツがすでに数年前から六本木で展開している「メルセデスベンツ・コネクション」のことを思い浮かべる人が多いだろう。どちらも同じような狙いで運営されている。強いて違いを見出そうとすれば、「メルセデスベンツ・コネクション」が六本木のミッドタウンの斜め向かいに位置し、「BMW東京ベイ」はお台場の青海という立地の違いとそれに伴った規模の違い、レストランの有無だろうか。

 六本木に用はなくても、外苑西通りを通過する際に寄ることができる。しかし、青海を通ってどこかに行くことはなかなかないだろう。フラリと寄れるかどうか。都心にあるということは駐車コストの多寡と関係しても来るから一長一短か。

 BMWに限ったことではないが、特にドイツのプレミアムカーブランドは、近年、ニッチにニッチを割り込ませる形でモデル数を急激に増やしてきた。それゆえに、潜在的な顧客がWebやプリントメディア、広告などで興味を抱き、実物に触れたいと思っても、最寄りのディーラーのショールームにはデモカーや試乗車が配備されておらず、みすみすチャンスを逃してきたという背景がある。

 もちろん、そのディーラーになくても他から手配してもらえば十分に可能なのだが、そこまでできる関係ができているならば双方にとって問題はない。クルマを買おうと考えている状態とは移り気なものだし、まだ買う気になっていない段階で試乗車を取り寄せてもらおうと頼める人は少ないはずだ。

「買わないのに、そんな図々しくは頼めない」

 しなくても構わないのに、遠慮してしまうからだ。ここで、ディーラーのセールスマンとは溝が生まれてしまう。

「すぐに買わなくても、ぜひ、試乗だけでもしてみて下さい」

 乗ってしまうと、セールスマンに「イエス」「ノー」を告げなければならない。自分の意見と意向をハッキリと相手に告げることが苦手な人だと「ノー」と言うのが面倒臭くなって、試乗から足が遠退いてしまう。それどころか、ショールームに足を踏み入れることすら躊躇してしまう。

 昔はカタログを手に入れることもショールームを訪れる強い動機だったが、今はスマホで見ることができるし、サイトにコンフィギュレーション機能を備えているメーカーやインポーターも多いから、ショールーム以上の比較検討だって訪れないでできてしまう。

 そのように背景にいろいろあって、今、クルマのショールームに人が訪れない時代になってしまった。正確には、たくさん集めているところと閑古鳥が鳴いているところとの差がとても大きくなった。筆者は、その原因は前述の通りに構造的なもので、時代の変化によるところが大きいと考えている。

 だから、それに気付いたBMWやメルセデス・ベンツはこのような手を打ってきているし、マツダも新しいスタイルのディーラーを東京・目黒に新設し、現在、その第2弾として東京・西早稲田のショールームを全面的に建て替えている。“ショールームに来てくれないならば、こちらから出向いていこう”と、冬のスキー場にSUVのデモカーを展示し試乗できるようにしているフォルクスワーゲンや、ショッピングモールにクルマを展示しているスバルやダイハツなども見たことがある。

 そうした積極的な姿勢のディーラーがある一方で、薄暗い照明と掃除の行き届いていない、まるでヤル気のうかがえないショールームがあるのも事実だ。同じメーカーのクルマを売っていても、ディーラーは地域によって経営母体が異なっていたりするので一概に評価できないのが難しいところだ。繰り返すが、差が広がっているのである。

「BMW東京ベイ」はBMWジャパン自らが陣頭指揮して造った別格の存在だが、クルマの販売やディーラー経営が、大きな曲がり角に来ているこの時代に於けるひとつの解答と受け取れる。同様の動きが他のメーカーやインポーターからも続くことを期待したい。

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文/金子浩久

モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。

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