仕出し弁当の製造・販売を手がける津多屋(東京都練馬区上石神井1−25−1)は1972年創業。一番人気は、創業時からある「のり二段幕の内弁当」(写真)で、2カ月ごとに替わる「季節のメニュー」もある。直売店では、日替わりで4種類購入可

写真拡大

 放送作家でコラムニストの山田美保子氏が今注目するグッズを紹介する新連載「楽屋の流行(はや)りモノ」。今回は、テンション上がる津多屋の「局弁」を紹介する。

*  *  *
 既に説明不要なほど浸透している業界用語だとは思うが念のため。

「ロケ弁」とは、番組のロケで撮影スタッフや出演者のために用意されるお弁当のことだ。早朝からのロケなら朝食用と昼食用をロケバスに積み込んで出かけることもあるし、昼食や軽食は現地の仕出し屋さんで調達することもある。

 最近では、ロケバスの会社が用意してくれるケースもあって、「まい泉」のかつサンドや「地雷也」の天むすなどがポピュラーだ。

 かつてバラエティー番組などで「タレントに人気のロケ弁ベスト5」といった企画がよくあったが、それらは正確には「ロケ弁」ではなく「局弁」。テレビ局内で番組を収録する際、楽屋に置かれるお弁当だ。

 景気が良かった頃は、タレントやマネジャー、スタイリスト、メイクさんらスタッフの人数×2の個数が用意されたり、その日注文した全種類が配られたりしたものである。制作スタッフや技術スタッフにも配られ、お金のないADさんたちは、局弁で食いつないでいると言っても過言ではなかった。

 なのに、経費削減でまず見直されるのは、制作スタッフの局弁。続いて、出演者に配られる局弁の内容(つまり、お値段)が徐々に悪くなっていくのである。

「あぁ、津多屋のお弁当が懐かしい」とは某番組スタッフのボヤキである。

 創業44年で、ザ・ドリフターズの「8時だョ!全員集合」の頃から作り始めていたという津多屋の局弁は、番組スタッフからも出演者からも、もっとも人気の高いお弁当と言っていい。

 定番の幕の内弁当は、仕込みから仕上げまで、一つひとつ手作りされる。素材を吟味した和洋折衷のおかずが数多く入っていて、ご飯は「二色そぼろ」「のり二段」「紀州梅ごま」など5種類ある。

 値段は1個1千〜2500円(税別)。やはりいま、この値段の局弁を大量注文できて、すべてのスタッフに配れる番組というのは、そうはないと思われる。

 だからだろう。タレントロビーに津多屋のロゴ入り段ボール箱が置いてあって、しかもそれが自分の出演する番組のためのものだと知ったタレントたちは「テンション、上がる」と一様に喜ぶのである。

 スタッフらも同様で、番組終了後に「今日、お弁当、余らないかなぁ」と言い、楽屋に手つかずの津多屋のパッケージが残されていると、「ちょっと、うれしい」「迷わず、ADくんにあげる」と、みんな笑顔になる。

 現場の士気を高めるためにやっぱり津多屋は必要なのだ。

週刊朝日 2016年7月22日号