離婚後は子どもの環境を最優先、画期的な「フレンドリーペアレントルール」

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■「連れ去り勝ち」が子の養育環境を壊す

離婚に至る事情は様々だが、ある日突然、母親が子どもを連れ去って家を出て、別居が始まるケースは少なくない。子どもを連れ去られた父親は、子のために懸命に親権や面会を求めるが、実は、この時点ですでに父親は圧倒的に不利な立場に立たされている。

離婚後に共同親権が認められている欧米と違い、日本は父親か母親、どちらか片方だけに親権が認められる単独親権。どちらが親権を得るかは、様々な要素から判断されるが、なかでも「監護継続性の原則」が問題を複雑にしている。

監護継続性の原則とは、子どもの現状を尊重し、離婚後もできるだけ環境が変わらないほうに親権を認める考え方。母親が子どもを連れて別居した状況で調停や裁判に入れば、子どもはそのまま母親に養育されたほうがいいという判断に傾きがちだ。一方母親は、家に戻ると、監護継続性を理由に親権を得る戦略が取りづらくなる。そのため子どもを連れて出ていった母親は元の家に戻らず、父親に子どもを会わせようとしなくなる。古賀礼子弁護士はこう語る。

「監護継続性の原則は明文化されていませんが、調停や判決で重視される空気があるのはたしかです。監護継続性という要素が母親による子どもの連れ去りを助長している面は否めません。皮肉なことに、『別居後の子供の現状を尊重する』という姿勢が、本来の『現状』(同居時の養育環境)の破壊を容認しているのです」

■離婚相手に優しい親が親権を得やすくなる

たとえ親権を得られなくても、子どもと定期的に会えるならいいという父親もいるだろう。しかし、親権のない側が子どもと会えるのはせいぜい月1〜2回が相場だ。子どもを連れ去られると、残された側は親権を失い子どもにもなかなか会えない――。

じつは今年3月、そうした現状に一石を投じる判決が千葉家裁松戸支部で出た。子どもを連れ去られた夫が妻と親権を争っていた離婚訴訟で、面会交流を積極的に認めた夫に親権が認められたのだ。妻が夫に提案した面会交流は「月1回」。一方、夫は「自分が親権を取れば子を妻に年間100日程度会わせる」と主張。裁判所は夫の提案を採用したほうが、子どもは両親の愛情を受けて健全に成長すると判断したわけだ。

この判決は相手に寛容性を示した側が有利になる“フレンドリーペアレントルール”に基づいている。このルールを適用すると、親権が欲しければ相手との面会交流を増やす必要があるので、子どもは離婚後も両方の親と会える理想的な状況に近づいていく。

「調停や和解に至ったケースでは、これまでも、離婚後の両親から自然で十分な養育を受けることに重点が置かれたこともありました。フレンドリーペアレントルールという枠組み以前に、子の利益のための当たり前の価値観だからでしょう。この価値観が、今回、判決となって明らかになったのは画期的です」

(文=ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士 古賀礼子 図版作成=大橋昭一)